日本に4年以上も住んでいて、2か月ほど前に母国へ帰ったバングラデシュ人女性が、実家で撮ったこんな写真をネットにアップした。
伝統衣装のサリーを着て窓際に立ち、ニコッとこちらに笑顔を向けている。
そんなキメ顔の彼女が触れている細い鉄の棒が気になって聞いてみると、やっぱりこれは防犯対策で、バングラデシュのほとんどの家ではベランダを開けっ放しにはしないらしい。
「In Bangladesh because of security reasons the veranda is not open in most houses.」
彼女が日本にいたころ、自宅に比べていまのアパートの部屋があまりにせまいと文句を言う。
「ならその分、掃除が簡単になったのでは?」と聞くと、そういうことはメイドがするからと言われて、生きてる世界の違いを思い知った。
そんな家だからこそ強盗や泥棒のターゲットになりやすいから、こうした対策は特に一階の窓には欠かせない。
バングラデシュの窓ってそんな窓。
子どものころから見てきたモノだから、日本から帰ってきてそれを見ても彼女は当然、何とも思わなかった。が、いつも鉄格子が視界に入ってくると、なんだか自分は鳥かごの中にいるような気がしてきた。
5人の友だちがやってくると一杯になった、あの日本のせっまいアパートの部屋とは違って、ここでは何十人の客が来ても対応できるし、広い空間でくつろぐと本当にリラックスするのに、息苦しさを感じてしまう。
思えば4年前、東京の成田空港に降り立って新幹線に乗って浜松市までやってきた時、日本は未来都市だと彼女は思った。
でもアパートへ着いて、これから住む自分の部屋を見た時の感想は「ちょっと大きめの物置かな」というもので心底ガッカリした。
でも、ここには鉄格子が無い。
あるのは網戸だけで、窓の向こうに木や街並みをダイレクトに見ることができるから開放感があるし、女性一人で住んでいるにもかかわらず、窓を「あけっぱ」にできて解放感もある。
日本に2年もいると完全に慣れて、ダレて平和ボケしてしまって、エアコンはあまり好きじゃなかったから、窓を開けたまま寝たこともあった。
バングラデシュでこれをしたら、武装した賊に命ごいをしないといけなくなる。
日本人女性と結婚して、日本に住んでいるバングラデシュ人の男性の家がそんなメにあった。
「あそこの家の息子は日本で働いている」ということは近所のみんなが知っていたから、そのウワサだけでも危険度は高くなる。
それで防犯対策はしていたのに、ある日銃を持った数人の強盗に侵入されて、すぐに父親が命以外はすべてあきらめて抵抗しなかったから、カネになりそうなものを根こそぎ奪われただけで済んだ。
こういう時は警察に相談してムダ。
下手したら、自宅に来た警官が小物を盗んでいくかもしれない。
だから彼がバングラデシュへ戻ると、昼間に妻を実家へ連れていって数時間過ごして、夜はホテルに泊まらせるようにしているという。
母国がどんな国か、知人もよく知っている。
帰国してから鉄格子付きの窓を見て、「その日 私は思い出した。鳥かごの中に囚われていた屈辱を……」と思ったかもしれないが、これが無くなれば屈辱以上の恐怖に耐えないといけないから、鉄格子は絶対にほしい。
この女性にしてみたら、きっと実家はデッカイ鳥かごで、日本にいた時の部屋はすごく自由なウサギ小屋だ。
日本の安全に慣れてしまうと、バングラデシュの生活にフィットするにはまだまだ時間がかかりそう。
では、バングラデシュの治安は客観的にはどんなものなのか?
外務省HPにある日本人向けの注意は、「早朝・夜間の外出、移動はできる限り控え、日中の時間帯に用事を済ませる」という抽象的な情報でよく分からない。
(バングラデシュ安全対策基礎データ)
イギリス政府が自国民に出している注意は具体的で生々しく、現地の様子がよく伝わってくる。
(Foreign travel advice Bangladesh)
「Crime including rape and sexual assaults have been reported on buses, sometimes committed by the vehicle crew. Travelling at night and alone should be avoided at all times.」
(バスでのレイプや性的暴行を含む犯罪が報告されており、乗務員による犯行もあります。夜間や一人での移動はどんな時も避けるべきです。)
これなら鉄格子は必要だ。
首都ダッカの様子
日本人の日本料理店VS韓国人のヘンテコ和食店 in バングラデシュ
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