【歴史問題】日韓の若者の交流、土下座謝罪から相互理解へ?

 

妻:「あなたに、悪い知らせと良い知らせがあるの。まず、私はあなたと離婚することを決めたわ」
夫:「なんだって!? そうか…。で、悪い知らせって何だい?」

アメリカ人はこんな「良いニュース&悪いニュース」のジョークが好きそう。
さて、ここからは冗談ではなくて、日本と韓国のシリアスな歴史の話だ。
まずは悪いニュースから書くとしよう。

 

1999年に韓国の大学生がやってきて、東京で日本の大学生と交流活動を行ったところ、とんでもない結果に終わった。
この時、日本の学生は「21世紀のパートナーシップ」をテーマにして日韓友好について話し合おうと提案する。
一方、韓国の学生たちが選んだのは「従軍慰安婦問題」だった。
日韓の間でこういう微妙な政治問題は「触るなキケン」の地雷なのに、なんで韓国の学生はあえて取り上げたのか?
そう思うかもしれないけど、韓国側としては韓日友好を前進させるためには、この問題にケリをつけないといけないと考える人は多いのだ。
特に20年前はそういう空気が強かっただろう。

結局は韓国側の意見が通り、日韓の学生は慰安婦問題について討論を行った。
当時、大学生としてこの交流イベントに参加し、現場にいた韓国人の記者がその様子を朝鮮日報のコラムに書いている。(2016/01/04)

討論は支離滅裂だった。日本の学生たちの「私たちは責任認定も補償もすべて行った」との言葉に感情が高ぶり、「あなたたちがああいう目に遭ったと考えてみてよ。あれで済んだと思えるの?」と問い掛けた。
すると突然、日本の女子学生の一人が冷たい床で土下座を始めた。「こうすれば気が済むの?」と。

「日本から謝罪を受ける韓国の意志と戦略」

 

1999年の時点で日本が「責任認定も補償もすべて行った」というのは、具体的に何のことを言っているのかイマイチ不明。
おそらく、1965年の日韓請求権協定によって、請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決」され、今後いかなる主張もできないという両政府の確認を指していると思われる。

しかし、慰安婦問題については、日韓の間で知識よりも”熱”が違う。
韓国側では、「日本軍に20万人の朝鮮人女性が強制連行され、性奴隷にされた」という説が歴史的事実として信じられている。
こんな歴史的な「恨」の気持ちがあるため、日本側が法や合意を前面に押し出すと激しく反発するのだ。
韓国の学生らは「もう終わった」という指摘だけは絶対に受け入れられなかった。

その結果、この一言で地雷が爆発し、日本の女子学生が冷たい床で土下座謝罪を始める事態となる。
韓国の学生はこんな展開を期待していなかったし、予想もしていなかったから、「こうすれば気が済むの?」と言われて戸惑ったという。
慰安婦の「強制連行、性奴隷」説については、日本では根拠がないため否定されているが、韓国側では今でも否定できない定説とされている。
だから、どちらかがこれに触れたら、緊張状態は避けられない。

「慰安婦問題について議論する」といっても韓国人の中で答えは決まっているから、実質的には、日本人に自分たちの主張を認めさせる作業になってしまう。
この時は、韓国サイドから感情的に日本の加害責任を追及され、日本人もどうしていいか分からなくなって、その場を収めるために女子大生が土下座で謝罪した。
どっちの学生も後味の悪い思いをして、日韓交流は最悪の結果で終わってしまう。
やっぱり、日本の学生が提案した「21世紀のパートナーシップ」について討論すべきだった。

 

さて、次は心機一転して、グッドニュースの方を書いていくとしよう。

「JB press」のこの記事にそれがある。(2023.7.25)

予想外の展開、日韓の若者たちは歴史問題・原発処理水問題をどう語り合ったか

ことし7月、日韓の若者が参加する「日韓青年パートナーシップ」という交流イベントがソウルで開かれ、
在日コリアン3世ライターの韓光勲氏がその様子を取材して記事を書く。
この2泊3日のイベントの中では、徴用工問題について討論会が行われた。
歴史問題が出てくると、先ほどの修羅場が頭に浮かんでくる。
韓氏も不幸フラグを感じたが、実際には「予想外の展開」になったと驚いたようだ。

議論の中で、日韓の学生がお互いの立場を知る機会が少ないということが分かり、それぞれの国の立場を説明した。
すると、韓国の学生は1965年の日韓請求権協定によって、日本が経済協力金として韓国に5億ドルを渡した事実を初めて知り、驚いてこんな感想を述べた。

「(韓国政府が)徴用の被害者に向き合ってこなかった責任が大きいと思いました」
「自分こそ何も知らないんじゃないかと思ったんです」

65年の請求権協定は徴用工問題の核心で、この合意がその後の日韓関係の基礎となってきた。
それが2018年に、文政権下の韓国でひっくり返されたから、日韓は暗黒時代に突入した。
韓国メディアはこの背景をあまり報道しないから、日本では当然の、韓国では衝撃の事実を知って、目からウロコが落ちる韓国人が出てくる。
もちろん、日本の学生も韓国側の話を聞いて新しく知ったこともあった。

この韓国の学生は日本のアニメは好きだけど、歴史問題については「日本は敵」という認識しかなかった。
だから、「強制徴用」で日本の学生と議論すると、ケンカになるのではないかと不安に思ったが、結果的には自分の認識が一変し、視界が広がった。

「日本人学生はとても優しくて、喧嘩になんてならなかった。競争心が強いのは自分の方だったと気付きました」

こんな韓国の学生の言葉を聞いて、韓光勲氏は「これほど考え方が変わるのかと驚かされた」と書く。

福島処理水の問題については、ある韓国の学生が国際原子力機関(IAEA)のレポートを信じようとしない韓国の野党を批判し、「野党の国会議員は日本を批判して票を集めたいだけですよ」と見抜いたうえで、「韓国でもちゃんと科学的な理解をする人が増えることを願っています」と語った。
これに対して韓氏は、野党議員よりも「科学的理解力が高い」と学生を称賛し、こうした若者が未来の日韓関係を築いていくと思うと、「一筋の希望を見た気がした」と万感の思いを胸にして記事を終える。

 

個人的な感想を言わせてもらうと、この展開は予想外を超えて、予測のはるか斜め上を行く展開だ。
歴史問題では「日本は敵」としか思っていなかった韓国の大学生が「自分こそ何も知らなかった」と反省し、「韓国政府の責任が大きい」と考えるようになった。
日本の学生にも得るものがあって、最後の日には仲良くお酒を飲んだ…。

なんというステキな相互交流。
理想的すぎて現実感がない。
特に韓国の学生の劇的変化は、”洗脳”を疑うレベルで素直に信じられない。
でも、仮にこの話が盛られていたとしても、韓国の若者から「あれで済んだと思えるの?」と問い詰められ、「こうすれば気が済むの?」と日本の若者が土下座謝罪をするよりは、確実で格段に素晴らしい。
が、こんなハッピーエンドは期待しない方がいい。
日韓の間で歴史問題はいまでも「触れるなキケン」の地雷で、うまく取り扱える人がいないと、その場にいた人がもれなく心にケガを負う可能性が高い。
とはいえ、一方的な謝罪から相互理解へ昇華したという話を知ると、たとえそれが宝くじに当たるような確率でも、日韓関係に光や希望は感じられる。

 

 

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2 件のコメント

  • 現在の状況で韓国と日本の若者が慰安婦問題を討議することは葛藤だけを高めるでしょう。
    なぜなら、韓国の若者たちは反日的思考で記述された教科書でその時代を学んだからです。
    教科書を絶対的真理だと思うので、日本の若者が慰安婦問題について真実を話しても受け入れません。韓国の歴史教科書が反日、民族主義、思想的見解から抜け出し若者たちに「事実」を正しく知らせることがまず解決しなければならない問題です。

  • >現在の状況で韓国と日本の若者が慰安婦問題を討議することは葛藤だけを高めるでしょう。
    やはりそうでしょうね。
    この事例は特別です。
    普通は日韓の人間が歴史問題で話し合っても、うまくいきません。
    ほかのことで討論すべきでしょうね。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。