『ヤフー知恵袋!』にはこんな質問がある。
「天皇のコスプレをしたら捕まりますか?」
まえに、日本に住んでいる外国人から同じような質問をされて、ちょっと戸惑った。
法的な問題はないとしても、日本人なら、常識的にそんなことはしない。
上の質問への回答も似たようなもので、
・確実にトラブルの元にはなると思いますよ。
・ 大丈夫だと思いますよ。
と判断は分かれている。
10日ほど前のハロウィーンの時期に、知人のドイツ人と話をしていて、ドイツでしてはいけないコスプレについて聞いたところ、それは予想通り、ナチスを連想させるものだった。
第二次大戦中、600万人のユダヤ人を虐殺したナチスは、現在のドイツ国民にとっては完全悪。
だから、それに関連するものを身に着けて、街なかを歩くことは許されないという。
そんな話を聞いて、7年前の出来事を思い出した。
ナチスの兵士が、子どもをかばうユダヤ人の母親ごと処刑している。
2016年にアイドルグループの「欅坂46」が横浜アリーナで、ハロウィーンコンサートをおこなってファンを喜ばせた。
それが終わると、とんでもないことが始まった。
欧米のメディアから、メンバーが身に着けていた衣装がナチスの制服に似ているという指摘が上がった。
波紋は広がり、大きな影響力を持つアメリカのユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」がメンバーの服装を確認し、公式に謝罪を求めた。
“ナチスのコスプレ”については、もうどんな言い訳もできない。
所属レコード会社は「今後一切着用いたしません」と声明を出し、プロデューサーの秋元康氏は「ありえない衣装でした」と謝罪した。
秋元氏はこの衣装について事前に知らされてなく、チェックができなかったらしい。
このコスプレが発案され、衣装が製作されて実際におこなわれるまで、かなり多くの人が確認したはずなのに、誰もこの巨大地雷に気が付かなかった。
ナチスに対する日本人と欧米人の意識の違いがよく表れた出来事だ。
ここにその画像を載せると著作権パンチをくらうから、「欅坂46 ナチス」で検索して見てほしい。
ナチスの制服
騒動の話はしないで、ドイツ人に「欅坂46」のハロウィーンコスプレを見せて、どう思うか感想を聞いてみた。
彼は画像を開いた瞬間、「ノォォォ〜、これはヤバいよ、絶対ダメだよ〜」と首を大きく横に振る。
ボクに言われるまでもなく、彼はすぐにナチスを連想した。
彼が一番マズいと思ったのは、コートではなくて帽子だ。
ヨーロッパでは昔から、ワシ(鷲)は勇気や力の象徴として人気があり、ドイツでは「ライヒスアドラー」と呼ばれ、よくそのデザインが使われた。
ライヒスアドラーは現在のドイツの国章にもあるから、それ自体は問題ない。
でも、ナチス政権時のデザインは両方の翼を高く上げ、水平にしたデザインで、それだけは絶対に使ってはいけない。
現在のドイツの国章
これはOK
ナチス・ドイツの国章(1933–1945年)
「欅坂46」のメンバーの帽子は色も形もナチスの軍帽とソックリだから、彼には説明の必要がなかった。
ドイツでは、このコスプレで外を歩くことは違法だから警察に捕まるし、極右の差別主義者とみなされるという。
知らなかったとしても、その無知こそ罪で見逃してくれない。
彼に言わせると、音楽バンドがドイツでこんな格好でコンサートに登場したら、二度と公演を開けなくなる。
欅坂46の騒動から7年が過ぎた。
東京五輪でもナチスをめぐる騒ぎがあって、日本でもナチスについての知識や認識は高まっているけど、あのコスプレの画像を見て、すぐに「これはヤバい!」と気づく人はまだまだ少ないと思う。
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