【韓国人の眼】日本の社会と比べた先進性・後進性

10年ほど前、冬のソウルを旅行中、宿のスタッフに、できるだけ安く楽しめるオススメのスポットを聞いたら、

「なら、クリスマス・イルミネーションですね！　すっごくキレイで無料ですヨ！」

と言われたんで、さっそく見に行った。
タダと聞いて期待値を低く設定していたら、そこは想像以上で、静岡出身のボクとしては「未来ずら〜！」と思わずにはいられないレベル。

いまはもっとバージョンアップしているはず。

韓国の年末の光景といえば、クリスマス・イルミネーションのほかにも、市民にとっては歩道の敷石の交換工事がある。

朝鮮日報（2023/12/24）

韓国の高速道路・鉄道は世界最強なのに…歩道の敷石は世界最悪？【寄稿】

この工事は一般歩道で行うから、「視覚的な変化の効果も大きい」という。
韓国の地方自治体としては年内に予算を使い切りたいし、市民に「仕事やってます感」をアピールできるから、年末になるとこの工事をよくするらしい。
工事自体はいいとして、教授が問題視したのは、韓国の歩道には割れたりゆがんだり、粉々になったりした敷石がたくさんあって、歩行者にとって不便で危だ険という点。
その原因は「手抜き工事の結果にほかならない」と、教授はご立腹の様子。

敷石の仕上げ工事にはとても丁寧な作業が必要なのに、韓国ではそれをかなり雑にやっている。
そんな現状について、教授はこう嘆く。

・韓国人は世界最高水準の高速道路や高速鉄道、国際空港を誇っているのに、じつは歩道の敷石すらまともに敷き詰めることができないでいる。
先進国とは30年以上の技術格差がある。
・役人たちが杖（つえ）をついたり、車いすに乗ったりして歩いてみたとは思えない。
・ことしソウル市は歩行者用の道を大幅に改善すると発表したが、それは外国人が多く利用するエリアだった。市はもっと市民を優先して考えべき。

この教授からすると、韓国は「歩きやすさ」の面では、まだまだ先進国のレベルには達していない。
ただ、韓国では外国人の評価と視覚的な効果が重視されるから、観光地のイルミネーションはすごくキレイ。

約10年前、東京に住んでいた友人の韓国人も同じようなことを感じた。
ソウル出身の彼女が日本に来てビックリしたのは、「なんでWi-Fiがこんなに使えないの！？」ってこと。
ほかにも、韓国では電子化が進んでいて、電車の乗り換えがスムーズにできたのに、日本ではその際、またチケットを買わないといけないことも多かった。
彼女はそれを不便に感じる反面、ソウルのIT化の先進性を改めて確認することができて、自尊心が満たされる思いもあった。

でも、東京に住みはじめて徒歩や自転車で移動するようになると、日本のスゴさに気づきはじめる。
韓国に比べ、道がすっごくしっかり整備されていて、デコボコした箇所がほとんどなかったから、特に自転車での移動がすごくラクだった。
それがきっかけで、サイクリングが彼女の新しい趣味となる。

そして、彼女は飲食店などで働いてみると、日本人はとても細かいところまで配慮し、丁寧に仕事をしていると感じた。
韓国人の自分が「これぐらいやれば十分」と思うレベルは、日本人からすると合格水準の７〜８割でしかない。
コンビニでも、韓国みたいにバイト同士がおしゃべりをして楽しんでいることはなく、店員はみんな熱心に仕事をしていた。その上でお客さんには必ず、「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」とあいさつをするから、日本人のサービスには感心させられた。

ということで、両国に住んでみた彼女の結論。
韓国と日本の社会を総合的に比べると、IT環境では韓国のほうが上でも、安全や安定では日本の方が上に感じることが多かった。
丁寧さでは日本、スピードでは韓国の方が優れている。

ドイツの建築家・ミースは「神は細部に宿る」と言った。
この言葉の起源はドイツのある美術史家とも言われているが、ハッキリしたことは分からない。
この言葉は、細かい部分にまで注意をはらい、手を抜かずにキッチリ仕事をすることで、神のような完璧（に近い）ものが完成するといった意味だろう。
日本人はファックスや印鑑をよく使うから、韓国の人たちからはよく「後進性」をネタにされる。
しかし、道の歩きやすさでは、韓国は「世界最悪」とは思わないが、日本の方が先進的だ。

先ほどソウル大学の教授が、韓国では歩道の敷石が割れたりゆがんだり、粉々になったりしていて危険だと指摘した。
ことし４月に起きたこの落下事故も、それと関係している気がする。

朝鮮日報（2023/04/08）

盆唐の橋崩落事故、近隣の橋も沈下し通行止めに…同じ会社が設計していた

ある橋がとつぜん崩れ落ち、歩行者が落下して１人が死亡し、１人が大けがを負った。
その後、別の橋も途中から沈んで通行止めになった。
どっちも原因は、歩道を支える部分がない形で設計されたというから、「手抜き工事の結果にほかならない」と言っていい。
橋については、日本では考えられないような事故がソウルでも発生した。
これらの橋には神が宿っていなかったらしい。