日本と韓国は地理的にはお隣どうしでも、価値観や考え方は大きく違うから、「近くて遠い国」とよく言われる。
とくに歴史認識では、左右が逆に映る「鏡の国」の関係にある。
1910年からはじまる朝鮮統治を日本は「合法」と考えているが、韓国では「違法」とされていて、見方の違いはまったく埋まらない。
日韓の考え方の違いは、いまの「LINEヤフー問題」にも表れている。
日本の情報を韓国のIT大手ネイバー側が管理していたが、50万件以上の情報を流出させたことが日本で問題視された。
この件についてLINEヤフー側に危機感を感じられないと総務省が怒り、2度の行政指導が出される異例の事態となった。
朝日新聞の記事(2024年5月8日)
「甘く見過ぎ」怒りの総務省 迫られたLINEヤフー、委託ゼロ表明
自民党内には、日本の情報は韓国ではなく国内で管理すべきで、「(ラインを)名実ともに日本のインフラとしなければならない」という意見が上がっている。まぁ、それはそうでしょと。
LINEヤフーと親会社であるソフトバンクは総務省から、ネイバーへの過度な依存体質を指摘され、資本関係を見直すことにし、ネイバー側と株の売買について交渉しているという。
現在、ソフトバンクとネイバーの持ち株比率は「50:50」だから、極端な話、ネイバーが1株でも売ると、ソフトバンクが経営権を握ることができ、ネイバーは存在感を失う。
日本では、日経新聞の記事のように事実を客観的に伝えている。(2024年5月10日)
韓国ネイバー、LINEヤフー問題巡り「株式売却含め協議」
いっぽう、韓国メディアはリベラル/保守の立場の違いを超え、日本の“加害性”と韓国の“被害性”を読者に強調した。
朝鮮日報の記事(2024/05/15)
「韓国のLINEが日本に奪われかねない」 韓国でLINEアプリ新規DL数急増
ハンギョレ新聞の記事(5/13)
「尹政権、日本政府の嘘をそのまま受け入れ」…韓国の通商専門家がLINE問題を分析
日本の全国紙なら、相手政府の主張を「うそ」と決めつけ、一方的に非難することはない。
韓国の報道では感情的に記事を書き、読者の感情をあおることが多い。
韓国メディアの報道であまり目にしないのが、当事者の意見だ。
ネイバーはこの問題についてどう考えているのか?
「日本政府の嘘をそのまま受け入れ」と批判されても、ネイバーは韓国政府に特に何かを要請しているわけでもなく、尹政権としてはネイバーの立場を無視して、企業の問題に直接介入することもできない。
しかし、最近は「日本に奪われかねない」という世論に押され、政府も「不当な措置に断固として強力に対応する」と日本を非難するようになった。本音はいまでも「騒がないでくれ」だろうけど。
ネイバーにとっては、最も良いタイミングで株を売却し、それで得た資金で、新しい技術を開発したり別の事業を発展させることも有益だ。
というか、日本政府を“敵”に回して、日本でビジネスを続けることはかなり困難では?
しかし、現在の韓国社会には、ネイバーが自社の利益を優先して株を売れば、「国益を失わせた!」と国民を怒らせ、“親日企業”のレッテルを貼られそうな空気がある。
「親日」というワードには、売国や裏切りといった超ネガティブなニュアンスがあるから、企業としてはそんなイメージが付くことは全力で避けたい。
ネイバーの「沈黙」の理由は、会社の利益と反日世論を考慮し、身動きが取りにくくなっているからだろう。
この中央日報のコラムから、そんな背景が見えてくる。(2024.05.15)
【コラム】韓国の国益、ネイバーの利益
まず、筆者は1910年に日本に主権を“奪われた”歴史を挙げ、LINEヤフー問題でも「日本にこれ以上奪われてはいけない」という認識が国民が共感する根元になったと指摘する。
その上で、国民に冷静なるよう求め、こんな表現で株の売却を“擁護”している。
・世論が定めた国益でなく、ネイバーが判断した実益に基づいて整理されなければいけない。
・持ち株売却を政府が防げなければこの政府は「売国」となる状況だ。ネイバーの計算とは関係なく、世論の基準が、政治の勘定がそうだ。
・国家の利益と企業の利益が一致しないことが多い。
このコラムは、ネイバーが持ち株をどうするかは、ネイバーの経営戦略や株主の利益に基づき、ネイバー自身が考えて決定すればいいと訴えている。
外野は騒がず、企業が考えて判断すればいい。これはいまの日本人の考え方に近い。
「韓国のLINEが日本に奪われてしまう!」という反日世論がネイバーの判断を困難にさせ、そんな感情が韓国に不利益を与えるかもしれない。
韓国のメディアや政治家が「愛国反日」をあおり、それが沸騰していって、「国益を損ねる可能性がある」というラインを突破すると、火消しに入る現象は“韓国あるある”の一つだ。
きょうの朝鮮日報には「LINEヤフー問題はサッカー韓日戦ではない」という報道もあったし、この問題もそろそろ“鎮火”の段階に入ったように見える。
「だったら、日本みたいに最初から静観していれば…」と思ってしまうけれど、「鏡の国」ではそれがむずかしい。
アメリカもメディアの堕落が深刻な水準です。
多くの新聞が左派になって特定の政党を支持しています。ですが、その反対側の新聞もあって、国民は互いに比較して自分で判断できる環境が整っています。韓国はマスコミの堕落の程度が米国よりはるかにひどいです。問題は左右がないということです。形式上は右派新聞がありますが、彼らは右派というより私益のために動く新聞です。
特に、日本に対する問題ではこれらは「一つ」です。このような環境で韓国人は正しい判断をすることができません。