文前政権のころ、日韓関係は「戦後最悪」と言われるほど悪化した。
その暗黒時代と比べれば、今はかなり改善されたが、まだ満足してはいけない。両国関係をもっとアップグレードしなければならないーー。
尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日韓国大使が韓国紙のインタビューに応じ、そんなことを話している。
中央日報の記事(2024.08.05)
「来年は韓日国交正常化60年…両首脳が無縁故遺骨に参拝を」
両国関係をさらに一層前進させたい考えは日本も同じ。しかし、前提となる認識は日韓で大きく違っている。
2015年に安倍元首相が慰安婦問題について、韓国側と「最終的かつ不可逆的な解決」で合意を結んだ後、こう語った。
「私たちの子や孫、その先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかない。今回、その決意を実行に移すための合意でした。この問題を次の世代に決して引き継がせてはならない。」
ユン大使はこの発言が日本の社会に与えた影響を問題視し、こう話した。
「過去に日本政府は韓日関係において謝罪と反省という歴史認識があった。岸田政権も歴代政権の認識を継承すると言いながらも、その部分を引用できない状況は残念だ。日本社会の歴史認識改善を望む」
「日本はこれ以上謝罪しない」という安倍氏の認識に、ほとんどの日本国民が賛成し、今でもその影響が日本社会に強く残っている。それと対照的に、韓国社会では一般的にその状況を「残念」に感じ、日本の歴史認識が「改善」されることを望んでいる。
この認識のギャップは埋まる気配がない。
表現や内容で問題があると削除され、一定の客観性や中立性が保障されている『ヤフコメ』を見ると、上の記事に対し、多くの共感を集めたのはこんな意見だ。
・正常化には程遠いですね。
前大統領が行った反日行為に対し、何の説明もされていません
・今までの様々な問題で韓国側からの謝罪は一切ないのに、日本だけにそれを求めるのはお門違い。
・そもそも日韓の懸案の原因は韓国が起こしたものばかりでしょう?
慰安婦問題も徴用工問題も日本と交わした合意をきちんと履行していれば起きるはずもなかった。
日本では、これまでの合意不履行に対し、「むしろ韓国が日本に謝罪するべきでは?」という声が多い。韓国側は絶対に納得できないだろうけど。
一方、日本では同じ時期に、産経新聞がこんな記事を掲載した。(2024/8/4)
慰安婦問題を巡る日韓合意で「最終的かつ不可逆的な解決」 韓国は履行せず
慰安婦合意にもとづいて、安倍元首相は「心からのお詫び」を表明し、日本は韓国に10億円の支援金を渡し、約束したことをすべて実行した。なので、今度は韓国さんのターン。
しかし、文前大統領は、
「政府間の公の約束であっても、大統領として、この合意で慰安婦問題が解決できないことを改めて明確にする」
とめちゃくちゃなことを言い出し、日本の官民をあ然とさせた。
慰安婦合意の「不可逆的」というのは、合意前の状態に戻ることはできないということを意味する。つまり、もう「この問題はまだ解決していない」と言うことはできないのだ。
文大統領は公式に「約束破り」を表明したようなものだから、日本では政府も国民も激怒した。
*「前大統領が行った反日行為」にはこれが含まれているはず。
それだけではない。
2011年にソウルの日本大使館前に設置した慰安婦像について、日韓合意で韓国政府が「適切に解決されるよう努力する」と約束した。これは像の撤去を意味するが、合意から約10年が過ぎた今でも、像は1ミリも動いていない。韓国側にはその気配すらない。
さらに、文政権は一方的に「和解・癒やし財団」の解散を発表し、慰安婦問題を本当に解決できないものにさせてしまった。
こんな状態になったから、産経新聞は韓国が最も嫌がる指摘をした。
「韓国側は合意を履行しておらず、約束を守って10億円を拠出した日本は、韓国に対して道徳的に優位に立った。」
過去の日韓関係では、日本が韓国に対して謝罪と反省するという認識があり、韓国が道徳的優位に立っていた。
しかし、安倍元首相が15年の日韓合意でそんな関係を終わらせた。そして韓国が合意を履行しないことで、立場が逆転した。
外務大臣として、当時韓国と慰安婦合意を結んだのは岸田首相だから、「これからの日本の子供たちに、謝罪し続ける宿命を背負わせるわけにはいかない。この問題を次の世代に決して引き継がせてはならない。」という安倍氏の意思を受け継いでいるはず。
韓国がその状況を「残念だ」と嘆いても仕方ないし、「日本社会の歴史認識改善を望む」と言っても、それは無理。
日韓が不可逆的な解決に合意したことで、もう日本が韓国に謝罪をくり返す状態に戻ることはない。
日本としては、「謝罪を求める韓国社会の認識改善を望む」と言いたいところだけど、それも無理っぽい。
来年は国交正常化60周年だから、日韓関係をもっとアップグレードしなければならないという認識では両国が一致していても、前提となる考え方はかなり違う。
やはり、韓国側が自分の言葉を守ることで、どちらも道徳的優位に立つことなく、対等な立場で新しい関係をスタートさせることが良い。
> どちらも道徳的優位に立つことなく、対等な立場で新しい関係をスタートさせる
本当にそれができたら2国間の外交的問題はあっという間に解決します。
問題の根本原因は、韓国人が「対等な立場」を理解せず、「どちらが優位か」というものさしでしか外交関係を考えられないことでしょう。韓国がこれまで、「あの国は我が国と対等の関係にある」と認めたことがありますか?
韓国人の人間関係においてもこのことは同じです。2者の優位・劣位の関係や、全体中の序列を異常なほど重んじる考え方、これは儒教思想に根差すものだと思われます。近代的な民主主義・平等思想とは相容れない。
韓国はこれ以上日本に謝罪を要求してはならず、過去と無関係な現在の日本人が韓国に謝罪する必要もありません。日本が過去に行った韓日併合は時代の流れであり、朝鮮は時代遅れのまま自らを発展させることができなかったために起きたことです。日本に謝罪を求めるのではなく、自らの反省が必要です。
韓国人が韓日近代史の真実を正しく知れば、日本に対する反感は消えると思います。
これ以上、日本が謝罪をすることはないと思います。
両国政府が過去の問題を解決し、日本国民はそれを支持していますから。
しかし、韓国側ではそれを求める気持ちが強いのは分かります。
今のところ、この認識の違いはどうしようもありません。