アメリカ人の眼 「行動的な韓国人・おとなしい日本人」

 

有名ファストフード店でハンバーガーを食べていたら、韓国人が話す日本語が聞こえてきた。
日本でデビューする韓国の芸能人が宣伝で、店内の客に日本語で話しかけることはいまでは日常風景となっている。
韓国人の日本語は特徴的だ。友人の韓国人女性が「今日は暑いですね」を「あちゅいですね」と言った時はクスッときた。
8月の後半、アメリカ人と話をしていると、日本人と韓国人の価値観や行動の違いが話題に出てきた。それは、「つとちゅ」みたいな表面的なものではなかった。

 

ーー毎日、地獄のように暑い。夏の終わりの前に人生のオワリが来そう。で、最近は何かあった?

問題は暑さより米だ。スーパーやドラッグストアに行っても、米が無くて困っている。あっても、高くて買う気がしない。米が無いなんて、日本は死んだも同じだね。

ーーコメ不足で悩むアメリカ人って、それはもう「精神日本人」と言っていいんじゃないかな。

日本には10年以上住んでいるから、もうお米は必需品だ。
日本人も韓国人みたいに、「政府は米を出せ!」って街に出てデモをするべきだね。

ーー韓国人にはそんなイメージがあるのか。

韓国が「デモ大国」なのはわりと知られている。
日本の社会よりも問題が多いからというより、黙っていられないという国民性が理由なんだろうな。日本人は我慢強くておとなしい。

ーー日本では大正時代に、米不足から暴動(米騒動)が起こって各地で死傷者が出て、寺内内閣が吹っ飛んだ。でも、令和の日本人はネットに不満を書き込むぐらいで、そんなパワーはもうない。
韓国でデモが多いことは友人の韓国人も認めている。彼はそれを、「韓国人は社会の不正を見過ごすことはできなくて、正義を立て直そうとする」とポジティブに考えていたけど。
2016年ごろに市民が「ろうそくデモ」をして、朴槿恵(パク・クネ)大統領を失職に追い込んだことは、彼の中では誇らしい記憶になっている。
でも、アメリカだってデモは多い。

まあな。でも、韓国とはたぶん理由が違う。
正義を実現するというよりは、アメリカでは国民が反対意見を主張する自由や権利が憲法で保証されていて、社会的にすごく尊重されていることが大きな理由になっている。

ーーアメリカはそう考えてイギリスと戦って独立を達成して、それが建国理念になっている。韓国では、1919年の日本に対する独立運動が建国理念の一つになっている。その動機は権利を主張することよりも、「正義を立て直す」という面が大きいと思う。
それと、韓国でデモがよく起こる理由には、「政府に対する国民の信頼が高いから」という見方もあるらしい。

なんだそりゃ?

*OECD(経済協力開発機構)の報告によると、政府への信頼度が「高い」「普通」と答えた人の比率は平均41.14%に対して、韓国は48.8%と高く、日本は24%と低かった。
この結果は、韓国民が政府の問題解決能力を信頼しているから、デモなどの集団的な意思表示をすれば、要求が受け入れられるだろうという期待があることを表しているという。

ソース:朝鮮日報の記事「韓国はデモ共和国? 逆説的に言えば政府への信頼度が高いからです」(2023/10/01)

 

俺は昔、韓国系の女性と付き合っていて、その家族や友人たちとも交流があったから、彼らの考え方や行動は普通のアメリカ人よりはわかっている。
韓国系の人たちは祖国愛や政治意識が強いんだ。アメリカの移民はふつう、出身国の文化的なルーツを引き継ぐけど、政治的な関心は失って、それはアメリカに対して向けられる。でも、韓国系の場合は、2世や3世になっても韓国との政治的なつながりを強く感じていて、韓国の利益を実現しようとする。
そのへんの意識が他の移民とは違うと思う。

ーーなるほど。
彼らがアメリカや世界の各地で、慰安婦像を建てようとする理由が見えてきた。
韓国語には「十回切っても倒れない木はない(열 번 찍어 안 넘어가는 나무 없다)」という言葉があって、韓国の価値観では良くも悪くも粘り強さがとても重視されている。

 

それに韓国ではストライキも多くて、それをリスクと考える海外企業もある。

ーーそれはたしかに。日本でも労働者のストライキはあるけど、韓国は頻度やレベルが違う。
最近もそんなことがあった。
韓国政府が医師不足を解消するために、医学部の入学枠を増やすと発表したら、研修医が激怒してストライキを始めた。1万人ぐらいの研修医が一斉に辞職願を出したから、病院の機能がまひして、治療を受けられなかったり、亡くなったりした患者が出たから、日本のマスコミもあの事態には驚いていた。

*世界的な常識からするとこんなことは異常らしく、朝鮮日報も「海外メディアの目からも理解できない韓国研修医の集団辞職」と嘆いた。(2024/03/09)
内容は違うが、日本でも3月に「日本医労連(日本医療労働組合連合会)」が全国の病院でストライキを行った。でも、患者の待ち時間が長くなったぐらいで、大きな影響は出ていない。ストライキがあったことに気づかなかった国民も多いのでは。

 

その国で行われる教育が国民の価値観に与える影響は絶大だ。
アメリカはイギリスのやり方に抗議して、戦って独立を達成した国で、韓国でも日本に対する独立闘争が社会的にとても重視されていて、その価値観や考え方が学校教育に反映されている。
一方、日本は異民族に支配されたことも、解放を求めて圧制者と戦った歴史もない。日本の教育では、太平洋戦争の影響から、「戦うこと」には否定的で、それを避けるための努力が重視されている。「すべての戦争は悪」という意見は日本では通用しても、海外では「ただし独立戦争はのぞく」となることが一般的だ。
そんな教育の違いがアメリカ人から見て、「韓国人は積極的で行動的で、日本人はおとなしい」ということの原因になっているはず。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。