【改元とカルマ】日本人とミャンマー人の地震に対する発想

 

静岡県民にとって最大レベルの恐怖、それが東海大地震だ。
「来る~きっと来る~」と何十年も言われ続けているけど、幸いなことに、まだそのXデーはやってこない。
東海地震は、静岡県の南にある南海トラフに沿って起こると考えられているマグニチュード8クラスの大地震(南海トラフ地震)のひとつ。
これが発生すると死者数は最大で32万人以上、負傷者数は62万人以上、経済損失は220兆円以上と想定されているから、今年の夏に「南海トラフ地震臨時情報」が発表されると、太平洋側に住む人たちは緊張に包まれた。
前回、その悪夢は1854年のきょう12月23日に発生した。M8を超えるこの安政東海地震によって、今の静岡県を中心に2~3000人が死亡する。
その前年の53年にはペリー率いる黒船艦隊がやってきて日本に衝撃を与え、今度は巨大地震が起きたため、迷信深かった当時の日本人が「一体何が始まるんですか?」と不安になるのも仕方ない。

友人は短期間に交通事故を続けて経験して、神社へ行ってお祓いをしてもらった。
不吉なことが連続して起きた場合、昔の日本人は不安な気持ちになり、「よし! 改元しよう」と元号を変えて、気持ちをリセットしようとすることがあった。黒船来航と安政東海地震が起きた時は、元号が嘉永から安政へ変更された。
地震や洪水などの自然災害、疫病の流行など恐ろしいことが起きると、日本人は“厄払い”のために改元を行うことがあり、それを「災異改元」と言う。
では、ミャンマーの人たちはそんな場合にどんな発想をするのか?

 

地震は世界中で発生するといっても、それは「均等」ではなく、発生する地域としない地域がはっきりと分かれている。地震は地中にあるプレート同士のズレによって起こるから、4つのプレートがぶつかっている日本は世界的な地震大国で、「地球ガチャ」で言えば大ハズレを引いたようなもの。
インド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートがぶつかり合う地域も地震が起きやすい。2004年にはインドネシアのスマトラ島沖で、マグニチュード9を超える巨大地震が起きた時には、20万人以上が死亡するという空前絶後の惨事となった。
この時には大津波が発生し、インドネシアをはじめタイやミャンマーなどの東南アジアから、マダガスカルやソマリアなどの東アフリカにかけて大きな被害が出た。
ちなみに、これがきっかけで誕生したのが YouTubeだ。

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ミャンマーは国民の約90%が仏教徒で、一般的に仏教が深く信仰されている。
クリスマスを祝った一週間後に、自分の好みで仏教のお寺や神道の神社を選んで初詣に行く日本人と違って、ミャンマーの人たちは仏教に対して真面目な“ガチ信者”だ。
蚊に血を吸われると、命を分けてあげた気分になるから「むしろ嬉しい」と言う人もいる。

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以前ミャンマーを旅行していて、最大都市のヤンゴンで日本語ガイドと話をしていると、彼女が「それってダブスタじゃね?」という話をした。
仏教の考え方では生き物の命が尊重されているため、魚を獲って生活する漁業の人たちは毎日のように「罪を犯している」ことになる。でも彼女は、それをおいしく食べる国民に問題はないと言う。
もし漁業が仏教的な法に反する行為になるのなら、それを買う消費者は“犯罪”に加担している共犯者になるのでは?
そうツッコむと、ガイドは「魚を食べることは良いことではありません。でも、一匹の魚を食べることと、大量の魚を獲ることでは罪の大きさがまったく違います!」と否定する。
それを聞いて、ボクが内心で「“目くそ鼻くそを笑う”と同じレベルだろ」とあきれると、ガイドがそれを察して「証拠があります」と言い出す。
「では見せてもらおうか、その証拠とやらを」と思って話を聞くと、彼女は2004年のスマトラ島沖地震を持ち出してこんな話をした。

「あの時に津波が起きて、沿岸部にいた漁民がたくさん亡くなりました。でも、ミャンマーの内陸部にいた人たちにはほとんど被害がありませんでした。なぜだと思いますか? それは、魚を殺して生活していた漁民たちには悪いカルマがたまっていて、それが返ってきたからです。あれは悪行のせいなんです。助かった漁民とそうでない人の差は、自分が犯した罪の重さによります。」

このガイドは、日本で言うなら東京のような大都市で生まれ育ち、ハイレベルな大学で教育を受けて外国人との付き合いもある。それなのに、こんなことを真面目な顔で言う。この説を否定すると、彼女の信仰も否定することになりそうだったから、この時は何も反論しないで話を聞いていた。

 

こんな発想をするのは彼女だけか、それともミャンマーでは一般的なのか。
昨年、日本の大学に留学している3人のミャンマー人に聞くと、彼らはガイドの話を全肯定しないものの、半分以上は理解できるし共感できると言う。
他国の文化や価値観に口を出すつもりはないけれど、個人的にはこの場合、改元して気持ちをリセットする日本の方が好き。もっとも、江戸時代の日本人は「自然災害で死ぬのは過去の悪行のせい」と考えたかもしれないが。
「来る~きっと来る~」と言われ続けていても、いまだに東海大地震が発生しないのは、ガイドのカルマ理論によると静岡県民が善人であることの証拠になる。

 

 

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2 件のコメント

  • > あの時に津波が起きて、沿岸部にいた漁民がたくさん亡くなりました。でも、ミャンマーの内陸部にいた人たちにはほとんど被害がありませんでした。なぜだと思いますか? それは、魚を殺して生活していた漁民たちには悪いカルマがたまっていて、それが返ってきたからです。あれは悪行のせいなんです。助かった漁民とそうでない人の差は、自分が犯した罪の重さによります。

    うーん、その考えは少なくとも外国では口にしない方がいいでしょうね。「災害で人が死ぬのは、その人自身が罪を犯したからだ」つまり因果応報だと。そんな考え方は、ハッキリ言って、その災害で被害を受けた人々に対する侮辱としか思えません。外国人の価値観とはいえ、聞いているだけで腹立たしいです。自然災害の被害者・犠牲者は誰でもそうだと?
    日本人だったらそう思うでしょうけど。ミャンマーの漁民たち自身はどう思っているのかな?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。