日本は肉食大国だから、インドとは「犬猿の仲」ではないけれど、「水と油」の部分がある。
日本人は肉が大好きで、焼き肉食べ放題の店がそこら中にある一方、インドにはヒンドゥー教の教えから肉を食べることができない人が多い。
知人のインド人はカフェで「野菜サンドイッチ」を見つけて、それを買おうとしたら、中にベーコンが入っているのを見つけ、あわてて手を引っ込めたことがある。
日本で生活しているとそんな“トラップ”がたまにあるから、ヴィーガンの彼にとっては油断できないらしい。
食文化で言うなら、きっと彼には江戸時代までの日本のほうがフィットしていた。
「生き物の命を大切にしようぜ」という仏教の考え方から、日本人は伝統的に肉食をしなかったため、幕末にやってきて、肉や牛乳が手に入らないことに悩む西洋人は多かった。
しかし、やっぱり肉はおいしい。
どうしても肉を食べたい人は江戸時代にもいたから、鹿肉を「もみじ」、馬肉を「さくら」と別の言葉で言い換えて販売する肉を売る店があった。
当時の日本で肉食はタブーだったから、自分の欲望のためにそれを破るミートラバーたちには、今の日本で言う「反社」みたいなダーティーなイメージがあったと思われる。
「どじょう豆腐」はそんな風潮を背景にして生まれた。
韓国には、ドジョウを生きたまま鍋に入れて煮込んで作る「どじょう汁」という伝統料理がある(作り方はほかにもある)。しかし、これは現代の動物愛護の精神には合わないから、「どじょうに大きな苦痛を与える残酷なやり方だ」と批判する人もいる。
日韓の食文化では、生きた食材を「新鮮でおいしい」とする考え方があって、「どじょう豆腐」はドジョウ汁とよく似ている。
「どじょう豆腐」は鍋に大量の水と豆腐、それと生きたままのどじょうを入れ、火で鍋を熱して作る料理。水温が上がってお湯になると、どじょうにとって快適だった環境は熱地獄に変わる。死の熱さから逃れるため、どじょうは比較的冷たい豆腐の中に入り込むが、その豆腐も熱くなるため、どじょうもそこで息絶えることになる。
そんな残酷な作り方から、どじょう豆腐には「どじょう地獄」という別名もある。
なぜご先祖はこんな料理を考案したのか?
昔の日本では肉食が禁止されていたため、周囲の人には「普通の湯豆腐を食べている」と見せかけ、坊さんたちがどじょう鍋を作って肉食を楽しんでいたという。
しかし、どじょう豆腐の話は伝わっているが、実際にそんな食べ物があったかどうかははっきりわかっていない。これは都市伝説のような一品だ。
友人のドイツ人が好きなドイツ料理「マウルタッシェ」が爆誕した理由も、「どじょう地獄」とそっくりだ。
キリスト教(主にカトリック教会)では、復活祭の46日前の水曜日から、復活祭の前日までを「四旬節」と特別視していて、この期間には肉食を控える習慣がある。
しかし、どうしても肉を食べたい人もいる。
彼らは「四旬節」の期間中、パスタ生地の中に肉を入れ、外側から見えないようにして、こっそり肉を楽しんでいたという。
「マウルタッシェ」にはそんな誕生秘話がある。
これは、日本の仏教僧がどじょう豆腐を考案した理由とほとんど同じだ。
商品名と思いっきり矛盾しているけれど、ベーコン入りの「野菜サンドイッチ」ならまだ気づきやすい。
どうしても欲望を抑えることができず、あの手この手を考え出して「禁止」を突破しようとする人間はどこの世界にもいる。それは基本的には“ズル”だけど、時代が変わると文化に昇華することもある。
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