外国人の嫌いな国民性 日本人が「ルール厳守」になる理由

 

日本に住んでいる外国人に日本人の良いトコロを聞くと、「みんながマナーを守ること」と答える人が多い。たとえば、電車の中で話し声がなく、静かな空間が広がって光景は「母国じゃあり得ない」と感激する人もいる。
反対に、日本人の悪い(嫌な)トコロを聞くと、「融通が利かない」と返ってくることはもはや鉄板だ。日本人は「ルールはルール」と言って、決まりを厳格に守ろうとするから、外国人からは柔軟性がなく、堅苦しく見えることがある。
これを裏返すと、マナーを守ることにつながるから、この国民性は表裏一体だ。

「日本人の頭の硬さ」については、ブラジル人からこんな文句を聞いたことがある。
あるとき彼が手紙を出すために、封筒と切手を買いにコンビニに行った。レジの店員に「一通の手紙を出すにはいくらの切手が必要ですか?」と聞いたところ、店員は「それは言えません」と答えた。客が指定した金額の切手を売ることはできても、金額を教えることはルールで禁止されていたからだ。それで店員は「自分で調べてください」と言った。
しかし、そのブラジル人はスマホを持ってなかったし、郵便ポストはコンビニの前にある。
彼は書類を見せて、金額がオーバーするのは構わないから、金額を教えてほしいと頼んだが、店員は「言えません。それがルールですから」とキッパリ拒否する。
最終的に、ブラジル人が根負けして、家に戻って料金を調べることになった。

A4サイズの書類一枚を送るには、2025年の今なら、110円の切手を貼ればいいと、日本人なら常識的に知っている。でも、外国人なら彼のように、母国の常識から「きっと店員が教えてくれるだろう」と楽観的に考える人が多い。しかし、日本ではそれが通用しなかった。
「切手を売っていて、店員は金額を知っているけれど、ルールで教えられない」ということに、このブラジル人は怒り心頭だった。アメリカ人とイギリス人の知人にこの話をすると、彼らもブラジル人と同じ意見だった。2人とも日本に住んでいて、同じように「頭が硬すぎる」「融通が利かない…」と思った経験を何度もしたと言う。

 

日本人のボクでも、日本人のルール厳守にはウンザリすることがある。でも、こんな朝日新聞の記事を読むと、それも仕方ないかと思う。(2025年1月27日)

給食の残った食材でまかない作り減給「遅くまで働いている教職員に」

京都のある小学校で、給食で残った食材は廃棄する決まりがあったが、50代と60代の調理員は「もったいない」と思い、遅くまで働く先生たちに唐揚げやおにぎりを作ってあげていた。
しかし、「給食の余り物でまかないを作っている」という匿名通報が教育委員会に寄せられ、規則に従い、調理員2人には減給の懲戒処分が下された。
また、校長も適切に対応しなかったとして処分された。

ネットの反応を見ると、「これはやりすぎ」や「給食のおばさんがかわいそう」といった声が多かった。

・あかんの?(´・ω・`)
・業務上横領になる
・日本では優しさは罪です
・ルールはルールやけど、通報した奴は性格悪そう
・あほくさ
フードロスの答えだろこれ

この調理員は私利私欲ではなく、善意から行動しただけだったので、一般的の常識や感覚からすると、「ルールはルール」として処分されることには違和感を感じる人が圧倒的に多かった。実際、このケースには他に方法があったのではないかと思う。
このニュースを読んで、イタリア人で日本中央競馬会 (JRA)に所属していた騎手ミルコ・デムーロさんを思い出した。

 

2012年の天皇賞で優勝したミルコ騎手は、馬から下りて片膝を地面につけて頭を深く下げ、会場にいた天皇・皇后に最敬礼をした。
しかし、レース後に騎手は馬に乗ったまま検量所に行く決まりがあったため、「あれは違反ではないか?」という指摘があがり、審議されることとなる。
同じ状況で、2005年に優勝した松永幹夫騎手はこのルールを守るため、馬に乗ったまま最敬礼をした。

審議の結果、JRAは「騎手は観覧席の天皇皇后両陛下に対してしかるべき挨拶を実施することという事前通達を実施しただけである」と、ミルコ騎手の行為に問題なしと判断し、処分はしなかった。
厳密には、規則違反だったと思う。「しかるべき挨拶」なら、馬上でもできたはずだ。
しかし、彼は天皇に心からの敬意を表して、陛下を喜ばせ、7万の観衆も彼に大きな拍手を送った。そんな外国人に制裁を与えたら、JRAは日本国民を敵に回してしまうから、それはできなかったのだろう。

現在のJRAのHPを見ると、「笑顔で祝福され、盛んな拍手を送られた」と今ではミルコの行為を好意的にとらえている。(天皇皇后両陛下が東京競馬場へ行幸啓される

 

京都の小学校の話に戻ると、調理員たちには減給する前に、校長が口頭で注意するだけでよかったのではないか。JRAのように柔軟に解釈できたのでは? それでも繰り返し違反したら、処分すればいい。
こういうニュースがあると、善意で何かをしてあげたくても、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれないと考えると、情に流されないで「ルールはルール」と固く拒否したくなる。規則厳守の日本社会では他の国に比べ、柔軟な発想で決まりを破ると、後でペナルティーを科せられる可能性がきっと高い。
給食の残りを使って、遅くまで働く先生に食べ物を作ると、注意をすっ飛ばして厳罰に処される国なんて世界で日本くらいでは?
社会から優しさが消えていって、外国人が「冷たい」「機械的」と感じたとしても、自分を守るためには仕方ない。

 

それにしても、今の日本にはもっと裁かれるべき人間がいるはずだ。法の抜け穴をつかって大金を手に入れる人がいる一方で、庶民は小さいことでも厳しく処罰される。「法律は弱者を守るのではなく、それを知っている人を守る」という言葉を思い出す。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【折れぬ!】日本人の“ルール絶対主義”に、米国人あきれる

ルール厳守に正直さ 中国人が日本人を信頼するポイント

日本人のルール遵守 スリランカ人が銀行で困惑したこと

【50年の日本統治】いまでも台湾人が使う「頭コンクリ」

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。