【ラマダン】イスラム教徒にとって、日本での断食生活はどんな感じ?

少子化が進む日本では、「働いてくれる人がいない!」という労働者不足が発生していて、外国人がそれをカバーしていることはもはや珍しくない。
北海道の江別(えべつ)市もその一つ。
江別市に住む外国人の数は年々増え続け、今年初めて1000人を突破。特に増加しているのがパキスタン人で、その数は237人と(2024年12月1日)、市内で最も多い外国人になっている。
パキスタンでは中古車の売買を仕事にしている人が多く、日本車は中古でも質が高いと人気のため、日本を拠点に中古車ビジネスをしている人は多い。
北海道では農業機械も手に入りやすいことから、江別市のあたりで暮らすパキスタン人が増えているらしい。

以上のソースは、『NHK北海道』の番組「パキスタン人急増の江別市~市民が取り組む交流への第一歩」(2024年12月18日)

パキスタンではイスラム教が国家宗教となっており、イスラム教の影響はとても強く、社会の隅々にまで行き渡っている。イスラム教のタブーは爆発必至の地雷だから、絶対に触れてはいけない。
ではさっそく、日本の大学で学ぶパキスタン人のイスラム教徒(♂)から聞いた話を紹介しよう。

 

ーーもうすぐダンダダンじゃなくて、イスラム教のラマダンが始まる。この神聖な期間中、断食することがムスリム(イスラム教徒)の義務となっている。(ことしは2月28日ころから3月29日ごろまで)
日本で断食をするのはどんな感じ?
ーーもうすぐダンダダンじゃなくて、イスラム教のラマダンが始まる。この神聖な期間中、世界中のムスリム(イスラム教徒)は断食をしないといけない。(今年は2月28日頃から3月29日頃まで)
日本で断食をするっていうのはどんな感じなの?

ここ数年、ラマダン月は冬にきていて、私は日本でそれ以外の季節を体験したことがない。(ラマダン月は毎年ずれるため、夏や秋にくることもある)
パキスタンの夏に比べたら、日本の冬に断食をする方が楽だね。パキスタンの夏はとても厳しい。北部の山岳地域は別として、特に暑い地域だと 50度を超えることがある。

ーーその条件で飲食禁止というのは生命にかかわるんじゃ…。日本だと法律で禁止されそうだけど、パキスタンではイスラム教(シャリーア)が優先されるのか。

もちろん、妊娠中の女性や体調の悪い人、旅行者、乳幼児などは断食をしなくていい。イスラム教はさまざまな立場の人に配慮された宗教なんだ。

ーー2012年にロンドン五輪が開催されたとき、ちょうど時期がラマダンと重なってしまい、イスラム教徒の選手は昼間、一切の飲食ができなくなることが問題になった。
このときは、エジプトの宗教的最高権威のゴマア師が、いまエジプト代表選手はイギリスへ「旅行中」だから、断食をしなくていいという宗教見解(ファトワ)を出した。そんな“裏ワザ”があるんだと感心したよ。

*エジプト出身で、初のムスリム力士として注目を浴びた大砂嵐は、ラマダン月と名古屋場所が重なったとき、断食をしながら相撲をとった。(成績はしらんけど)

 

ーー知り合いのインドネシア人のイスラム教徒も同じように、“柔軟な解釈”でラマダン月を乗り越えたことがある。彼は実習生として日本の工場で働いていて、夏に断食生活をしなければならなくなった。暑さ(エアコンなし)+湿気+工場での労働の三重苦に加え、水も飲めなかったから、本当に苦しくなって、彼は生命の危機を感じた。
イスラム教の指導者に相談したところ、「あなたは日本に“半分旅行”している立場で体調も悪いから、水だけは飲んでいい」と言われ、それで乗り切った。
彼にとっては、それが人生で一番過酷なラマダン月だったらしい。

日本の夏は湿度が高いから、その時期でエアコンなしはきついな。
私の場合、あえて言うなら、ラマダンになるとよくデーツ(乾燥させたナツメヤシの実)を食べていたけど、日本ではそれがあまり売っていないし、値段も高いことが残念だ。

*デーツはギルガメシュ叙事詩やイスラム教の聖典クルアーン(コーラン)にも登場する、イスラム教徒にとっては定番のドライフルーツ。
栄養価が高く、聖書に出てくる「生命の樹」のモデルはナツメヤシとされ、コーランでその実は「神に与えられた食物」とされている。

ーーラマダンの時期、イスラム教徒は日没になって断食タイムが終わと、まず最初にデーツを口に入れることが多い。ムスリムにとってデーツは「ラマダンの友」みたいな。

それな。食事が解禁されて乾いた口にデーツを入れると、私は幸せな気分になれるんだ。パキスタンにいたころは、デーツを好きな時に食べることができたけど、日本では制限しないといけない。

ーーデーツは日本人にはなじみがないから。「新しくオープンしたアメリカ風のカジュアルレストラン」と聞いたら、「へ〜、行ってみよう」と言う人がいると思う。
日本でデーツは一般的じゃないけど、ポカリスウェットならどこにでも売っている。インドネシア人から、ラマダン期間中の水分補給としてポカリスウェットが大人気で、あまりの人気っぷりに“パクリ商品”が出たと聞いた。
「スウェット(汗)って、 なんかキモい」って言う外国人がたまにいるけど、汗は関係ないし、体にも良い。

まぁ、そこは水でいいかな。

ーーここまで宣伝したし、ポカリ飲めや。

 

日本でも見かけるようになったデーツ
デーツの甘さとお好み焼きの相性はすごく良いらしく、オタフクソースはデーツを隠し味的に使っている。
だから、ほとんどの日本人が知らないうちにデーツを口にしていることになる。

 

ドバイの空港で見つけた、アラビア語で書かれたポカリスウェット

 

ーーさっきとは別のインドネシア人のイスラム教徒が、日本で断食することを嫌がっていた。インドネシアではラマダンの時期に入ると、まわりが「断食やるぞー!」と盛り上がるのに、日本ではそれがまったくない。日本人の友だちから食事に誘われても、断らないといけない。自分が「浮いている」という感じがして、断食をやりづらかったらしい。
君はそんなことを感じない?

いや、それはない(断言)。
まわりの人はいつもどおりに食事をしているから、私は逆に、自分がイスラム教徒であることを強く意識させられる。だから、むしろやる気が出てくるね。

ーーあ、うん。とても信仰が強くて真面目なんだね。
そんな君なら、日本で4回めの断食もがんばるほどのこともなく、平常運転で乗り越えられると思う。

おおよ。

 

*個人的に、東南アジアのイスラム教徒はわりと“ゆるめ”で、パキスタンや中東のイスラム教徒は“ガチ勢”だと思う。でも昔、インドネシア人やマレーシア人のイスラム教徒にそんな話をしたら、「基準が違うだけで、信仰の強さは同じですよ!」って怒られた。
違う宗教に対して寛容でいいことだね、というニュアンスで言ったつもりだったのだけど。信仰はやっぱり地雷だ。

 

 

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • > 東南アジアのイスラム教徒はわりと“ゆるめ”で、パキスタンや中東のイスラム教徒は“ガチ勢”だと思う。でも昔、インドネシア人やマレーシア人のイスラム教徒にそんな話をしたら、「基準が違うだけで、信仰の強さは同じですよ!」って怒られた。
    > 違う宗教に対して寛容でいいことだね、というニュアンスで言ったつもりだったのだけど。信仰はやっぱり地雷だ。

    うへぇ~、東南アジアのイスラム教徒に対して、そんなこと言ったのですか!信じがたい。
    そりゃ、言われた方も怒りますよ。寛容とか、地雷とか、そういう問題じゃない。

    あなたが、東南アジアのイスラム教徒を“ゆるめ”と評価するのは、「その宗教が定める『しきたり』にどれだけ忠実に従って行動しているか?」っていう観点からでしょ。率直に言って、そのような評価は「信者がどれほど、その宗教が定める『しきたり』通りに行動できるか、その観点から『原始的な』宗教は信仰心の強さを評価できる」といった「上から目線」の考え方ですよね。
    言う方は気づかないかもしれないが、言われた方はすぐに気づきます。そして彼らの怒りを招くのですよ。日本人に典型的な「鈍感さ」ゆえのトラブルですね。

  • 東南アジアの国で2020年代にこんな事件が起きたという話は聞きません。

    https://www.bbc.com/japanese/59544054

    そんなことから、東南アジアのイスラム教はパキスタンや中東の国よりも厳格ではない、という認識は日本で一般的にあります。

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