日本人が「中国人」と聞いて、一般的に思い浮かべるのは漢民族だ。人口の約90%以上を占めていて、割合としては圧倒的だから「中国人≒漢民族」と考えてよし。
でも、世界で三番目に大きい中国には、ほかにも50以上の民族がいて多民族国家を形成している。
その中に中国の最西部に住むウイグル族がいて、彼らは伝統的にイスラム教を信じてきて、独自の文字もあるから、漢民族とは別の文化や伝統を持っている。友人のウイグル人に、漢民族にはないウイグル独自の文化について聞くと、彼はしばらく考えて、ノウルーズを挙げた。
きょう3月20日は、日本では春分の日の祝日だ。
だんだんと暖かくなり、太陽が出ている時間も長くなって、このころになると昼と夜の長さがだいたい同じになる。春が始まる目安になっていて、ピクニックシーズンが始まるころだ。
イランでは春分の日が新年になり、ノウルーズという祭りが行われる。
ペルシア語でノウは「新しい」、ルーズは「日」を意味するから、ノウルーズは直訳すると「新しい日」になる。春の到来を新年(元旦)と考えていて、イランの伝統的な暦は春分の日から始まるのだ。
この行事の起源はおそろしく古い。古代イランのゾロアスター教の祭りとして始まり、3000年以上の歴史があり、2016年には無形文化遺産に登録された。
ノウルーズの伝統は国境を超え、現在ではアフガニスタン、アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルコなどで行われている。
ノールーズの風習には、さまざまな火や水の儀式や祝いの踊り、贈り物の交換、詩の朗読などがあるという。
Customs for the festival include various fire and water rituals, celebratory dances, gift exchanges, and poetry recitations, among others
「火の儀式」の具体例には、助走をつけてたき火の上を飛び越えるものがある。
ただ、ノウルーズは現地化していて、この日の祝い方はそれぞれの地域によって違う。
「ウイグル族と漢民族の文化的な違いは?」と聞かれて、友人の頭の中に真っ先に浮かんだのがノウルーズだった。
*ウイグル語の発音をローマ字にすると「Nowruz」で、彼の発音は「ノヴルス」と聞こえた。
たしかにこれは漢民族の歴史や伝統にはないものだ。
同じウイグル族でも、新疆の南北ではノウルーズの祝い方が違うらしい。彼の知っているノウルーズでは、米、アワ、緑豆、燕麦など7種類の穀物で料理を作って食べる。遠くにいる親戚が家にやって来て、常に30人以上が家の中にいて、お菓子や果物を食べながらいろいろな話をして楽しむ。
彼にとってノウルーズは、おいしいものをたくさん食べて、いろいろな人との交流を楽しむイベントだ。
古代イランで生まれ、中央アジアに共通するノールーズはウイグル族の伝統文化にもなっている。同じ中国人でも、この点では漢民族とは違う。
コメント
コメント一覧 (2件)
> 同じ中国人でも、・・・
と、言い切ってしまっていいのでしょうか? ウィグル族の彼らはその言い方に抵抗感ありませんか? もっとも「漢民族中国人」にとってみれば、それで何ら問題はないのでしょうけど。また台湾人やチベット人の場合はどうする?
それもこれも「中国人」という言葉の意味が、人により解釈が曖昧だから、そんな疑問を感じるのでしょうね。
私だったら、そうだなぁ、「同じ中華人民共和国に属していても・・・」とでも言いますかね。あるいは、特に国名はあげずに、「漢民族とウィグル族では文化が違う」とだけ言うとか。
彼については問題ありません。
中国の東北部の大学で学んでいて、いまも日本でたくさんの漢民族との付き合いがあって、彼にはウイグル族と中国人の2つのアイデンティティがあります。