中国人から見た日本:衝撃的な物価・母国より共産主義的な社会

いま日本人と中国人はマイナスの意味で相思相愛だ。
昨年末に公表された世論調査の結果によると、
日本では、89%の人が中国に対して良くない印象を持っていると答え、中国では日本に良くない印象を持っている人が87.7%いて、日中で否定的に見ている人の割合がほぼ一致した。
そんなアウェーな空気の中、昨年の10月に中国から留学生の陳君(仮名)が日本にやってきた。彼と会って、日本での生活について聞いてみた。

 

ーーもう20年以上前の話なんだが、ボクが初めて中国へ行ったとき、「ニーハオトイレ」に衝撃を受けた。それは扉の無いとっても開放的な公衆トイレで、お互いに「行為」が丸見えになっていた。
陳君は日本で生活を始めて、衝撃的だったことはある?

ニーハオトイレって、そんなすごいトイレがあったんですね。
日本で驚いたのは野菜や果物の値段の高さです。中国では1kgのみかんを約100円で買っていたので、日本に来たころはスーパーで果物や野菜の値段を見て、見間違いかと思って凝視してしまいました。生活に必要なものがあんなに高いと困りますね。

ーーそういうのを日本語で「二度見」って言うから、覚えておくように。

慣れるまでは、日本の店では二度見の連続でしたよ。中国では安い値段で、いろいろな種類の果物が売られていて、値段を気にしないで好きなものを買っていました。今から思うと夢のようです。

ーーそういうのを日本語で「何でもないようなことが幸せだったと思う」って言うから、これも覚えておこう。

でも、中国のみかんは水分が多いですし、日本の果物は全体的に質が高い気がします。

ーー日本の果樹栽培は大量生産じゃなくて、「少数精鋭」だからさ。

 

*日本の果物が高いことには、それなりのワケがある。
果物栽培では、機械を使って効率的に作業をすることがむずかしいから、農家では利益率を上げるために量より質にこだわり、見た目が良くて美味しい果物を作る傾向が強い。だから、値段は高めになる。
わが静岡県にある袋井市は、最高レベルに美味しいクラウンメロンを生産している。その秘密は「一木一果」だ。クラウンメロンは通常、1本の木に3つの実ができる。農家さんはその中で最も良さそうな実を1つ選んで、あとの2つは切り取ってしまう。すると、1つの実に栄養が全集中するから、特に美味しいメロンを育てることができるのだ。
日本に比べれば、中国の果樹栽培は「質より量」が主流で、陳君の感想につながったと思われる。

 

10年以上前のセントレア空港

 

ーーそれにしても、日本の物価がそんなに高いと感じるというのはやや意外。
最近は、中国からたくさんの観光客がやってきて、テレビや雑誌で「日本は安くておトク!」と笑顔で話す人を何度も見た。上海に住んでいる日本人は、アパートの家賃が日本より余裕で高くて、生活がとても大変と言っていたのだけど。

上海は反則です。あそこは中国の中で一番物価の高い地域で、地方に行けば物価はその半額か、それ以下になることもあります。中国は金持ちと貧しい人の差が激しいんですよ。

ーーそれは確かに。じつは上海の物価を細かく見ると、おしゃれな店でモノを買ったり、良さげなレストランで食事をしたりすると日本よりも高くつくけど、庶民的な店や食堂を利用すると日本より安い。

上海の中にも社会的な階層があって、住民はそれぞれ収入に応じた世界に住んでいます。それは上海に限らず、中国全体がそんな状態です。国としては発展していますが、それと同時に金持ちと貧しい人の差が拡大していって、深刻な社会問題になっています。

ーーそうか。10年ぐらい前、日本に住んでいた中国人から聞いた話を思い出した。
その時点で中国にはとんでもない経済格差があって、外見から、その人の社会的な立場が分かった。でも、日本では人や家の見た目が平均的に同じで、金持ちや貧しい人が目立たない。中国で発展しているのは限られた都市部だけだけど、日本は全体的に豊かで、田舎の家でも車が2〜3台あるのを見て驚いた。
そんなことから、彼女は人民の平等という点では、日本のほうが共産主義的だと思ったらしい。

今も同じですね。私は庶民的な生活をしていましたから、ブランド品の価格は知りませんけど、それはきっと日本のほうが安いですね。でも、野菜や果物、公共交通機関などは高いです。生活に必要なものが高くて高級品が安いというのは、日本は中国よりも平等な社会を実現しているからでしょうね。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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