【恥を知れ!】4月30日が近づくと、ベトナム人が言い争いを始めるわけ

いま日本にいるベトナム人の数は60万人を超えて、国別では中国人に次いで2番目に多い。これだけいれば、中には犯罪を犯し、ニュースで取り上げられるベトナム人もいる。そんなことがあると、SNS上にある日本人とベトナム人の友好グループの中で、「北の人間のしわざだ。本当に恥ずかしい」と書き込むベトナム人がいれば、「ウソを言うな! 証拠を見せろ!」と怒る人が出てきて、言い争いが始まるのをこれまで何度も見てきた。

その原因は、1975年4月20日に、北ベトナム軍が南ベトナムの首都サイゴンを制圧したことにある。ホーチミン率いる北ベトナムが、アメリカの支援を受けていた南ベトナムを滅ぼし、ベトナム戦争は終結して祖国統一が実現した。サイゴン陥落はどちらにとっても歴史的な日だ。しかし、南ベトナムは「敗戦国」になったため、その受け止め方は勝者と同じではない。
日本の歴史で例えるなら、戊辰戦争で勝った長州・薩摩が北ベトナムで、負けた会津藩が南ベトナムのようなもの。戊辰戦争に対する認識は、福島、特に会津の人と山口の人ではかなり違う。

 

サイゴンが陥落する直前に脱出し、米空母ミッドウェイに到着した南ベトナムの市民たち。ヘリで運ばれた彼らはラッキーで、船で命がけでサイゴンから逃げた人たちは「ボートピープル」と呼ばれた。こうして海外に逃れた南ベトナムの人々は、ゼロから新しい生活を始めることとなる。

 

きょう4月30日、ベトナムでは一般的に「南部解放の日」または「統一の日」と呼ばれ、重要で祝いの日となっている。この日を誇りに思う国民も多く、ある北部出身のベトナム人はSNSに、

「Hoà chung niềm vui của Đất nước」
(機械翻訳:国の喜びを分かち合う)

と嬉しそうに書き込んでいた。北部ハノイ出身のあるベトナム人は、当時、南ベトナムはアメリカの「植民地状態」にあったと主張し、独立国と認めていなかった。だから、抑圧者を打ち破って人々を解放したことは正義になる。

いっぽう、海外にいる多くのベトナム人にとって、4月30日のある週は「黒い4月」と呼ばれ、サイゴンと南ベトナムを失ったことを嘆く時期になっているという。

Among most overseas Vietnamese, the week of 30 April is referred to as “Black April” and it is also commemorated as a time of lamentation for the fall of Saigon and South Vietnam as a whole.

Fall of Saigon 

 

国内や日本にいるベトナム人の中でも、南部には北ベトナムを恨んでいる人がいるから、在日ベトナム人の事件が起こると、「北の人間のしわざです。本当に恥ずかしい」といった書き込みが見られることがある。
「南部解放の日」である4月30日が近づくと、SNSグループではベトナム人どうしで議論が活発になり、罵り合いに発展することも多い。今年もこんなコメントを見た。(原文はベトナム語)

・ベトナム人である私はこの時期、毎日、みなさんのケンカを見て頭がいっぱいになる。
戦争終わって50年が過ぎましたが、まだ完全に終わっていませんね。
・毎年のことですから、私は慣れましたwww 気にしなくて大丈夫ですよ、放っておけばまた静かになるので。
・放っておくのではなく、毎年、この時期にケンカが盛り上がる原因を見つけて解決した方が賢明。そもそも記念式典をやらなければ、ケンカにはならないはずだ。敗者をいじめたり、挑発したりしない方がいい。毎年式典を開くのは、勝ち誇りたいというのが本音ではないだろうか。
・ベトナム人であることを誇りに思います、祖国ベトナムを永遠に愛しています❤️
・本当に誇りがあるなら、外国に支援を求めるな。自分のことくらい自分でやれ。屈辱的だと思わないのか? ホーおじさんの孫たち!
・ボートで海外に逃げて、物乞いになったお前たちこそ恥を知れ!

こうした言い争いはネット空間ではよく見られるが、友人のベトナム人に聞くと、大学や職場などのお互いの顔を見て交流する場では、相手の出身地をあまり意識しないで、自分と性格や価値観が合えば仲良くなるという。日本にもそんなベトナム人がたくさんいる。しかし、毎年、「祖国統一」の4月30日が近づくと、ベトナム戦争はまだ完全には終わっていないことを実感させられる。

 

4月30日、南部解放を祝って打ち上がられる花火

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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