“国恥”の21カ条の要求 日本は好きでも軍国主義は嫌いな中国人

日本に住む中国人は増え続け、2024年末の時点で約87万人て、100万人を突破するのは時間の問題とみられている。全体的に日本が「好き」だから、彼らはその決断をしたのだろうけど、嫌いな日本もある。それが今回のテーマだ。

 

遅刻の常習犯が「お前、今度は絶対に時間守れよな!」と言うギャグを、ネットで「おまいう」案件なんて言う。最近、グローバルな規模でそんなことがあった。

中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領がモスクワで会談したあと、共同声明を発表した。その中で日本が出てきて、日本政府に対し、歴史問題で言動を慎み、軍国主義と決別するよう求めたという。とはいえ、これはきっとオマケみたいなもので、あまり深い意味はない。
共同声明では、アメリカと同盟国が北大西洋条約機構(NATO)をアジア太平洋地域に拡大しようとしていると批判したり、トランプ大統領が関税や輸出規制を「乱用」することに断固反対したりしている。中露にとっては、いま直面しているこの軍事的、経済的な脅威のほうが重要な課題のはずで、それに比べれば、日本の歴史認識が両国に与える影響なんてほぼないのだから。

日本政府(林官房長官)は「他国批判に興じるな」とこの声明を一蹴。そもそも軍隊がなく、平和国家として世界的に高く評価されている日本に、現在進行形で侵略戦争をしているロシアと、それを支援している中国がそんなことを言うから、ネットでは「どの口がw」、「今世紀最大のおまいう」、「説教強盗かよ!」と呆れかえる人が続出中だ。

 

この声明そのものは置いとくとして、中国人が日本の「軍国主義」を嫌っていることは事実だ。
大阪に住んでいた中国人(20代・男性)から、こんな話を聞いたことがある。
当時、大学へ通っていた彼は留学生用の寮を出て、アパートへ引っ越すことになった。不動産屋をまわって、いくつか良さげな物件をピックアップし、その中から家賃・大学までの距離・生活の便利さ・部屋の条件でベストな部屋を選んだ。
実際に見て確認することになり、不動産屋の車でそのアパートへ向かっている途中、「あるもの」を見かけたから、その部屋はあきらめることにしたという。
それは、第二次世界大戦で亡くなった日本軍の軍人を追悼する記念碑だった。地元の人にとっては大切なものでも、中国で歴史教育を受けた彼としては、本音ではペンキを塗ってやりたいと思うほど憎たらしい。
自分の理想にいちばん近い部屋でも、近くにそんな屈辱的な記念碑があると思うと、楽しく暮らせるわけがない。それで彼はやや条件の悪い別のアパートに決めた。
日本は自由でプライバシーが尊重されているから、彼は日本が大好きだけど、過去の軍国主義だけは許せない。

 

5月9日は、1915年に中国が「対華21カ条要求」を受け入れた日。それには以下のような内容があり、中国にとってはかなり屈辱的だ。

・ドイツが山東省に持っていた権益を日本に譲り渡すこと。
・中国政府の政治顧問、経済顧問、軍事顧問に日本人を用いること。
・旅順や大連の租借期限、満鉄・安奉鉄道の権益期限をさらに99年延長すること。
(つまり、旅順と大連は1997年まで、満鉄・安奉鉄道は2002年まで日本の「もの」として認めろ、という内容だ。)

日本は中国に対し、こんな21カ条の要求を突きつけ、5月9日を期限とし、もし受け入れなかったら軍事行動に出ると伝えた。というか、脅した。
この時はヨーロッパで第一次世界大戦が行われていて、日本はその混乱にまぎれて「火事場泥棒」みたいなことをしたから、この内容を知った欧米が反発し、要求内容はいくつか削られた。それでも中国にとっては、屈辱的な内容を受け入れたことに変わらない。

戦前の中国の教科書にはこんな記述がある。
*「亡国の条約」は21カ条要求のこと。「五月七日」は、日本がその最後通牒を中国側に手渡した日。

「我が国勢が動揺し  ヨーロッパ大戦が終わらないのに乗じて  亡国の条約を提出した  公理を破り人道に反して  よき山河が奪われようとしている  ああ悲し 四年五月七日の凶報よ  奴隷となり僕婢となる日が目前に迫った  この国恥が消えるのはいつの日のことか」

ソース:東亜経済調査局. 戦前中国の排日教科書 歴史編: 満州事変以前の反日感情 忘れられた日中関係史 . Kindle 版.

 

もちろん、政治的な目的で歴史を利用することは認められないし、戦後に生まれた日本人に戦前・戦中の責任はない。ただ、21世紀になっても、中国人の心の中では、まだ「国恥」は消えていない。日本にいる約90万人の中国人もそうにちがいない。彼らは現代の日本は好きでも、軍国主義を憎んでいることは知っておいていい。

 

 

日本 「目次

中国 「目次」

【日本人の失敗】中国人を怒らせる近代史という地雷原

【日本と中国】歴史の法則や皇帝(天皇)の権威の違い

【謝謝中国】二度のアヘン戦争の敗北で日本が目覚める

【日本の恩返し】漢字を伝えた中国人が和製漢字を使ういま

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