「近くて遠い」と言われるのが日本と韓国の関係。
10年ほど前、「アジア版オリンピック」と言われるアジア競技大会が韓国のインチョンで開催されたとき、実感させられる出来事があった。
開会式で日本選手団が入場すると、韓国のテレビ局SBSは画面にこんなテロップを入れたのだ。(2014年アジア競技大会)
「周辺国と深刻な問題がある国」
たまたま韓国でその中継を見ていた日本人が、気分が悪くなったという話を聞いたことがある。
日本のテレビ局が韓国選手団の入場でこんな紹介の仕方をしたら、大騒ぎになる。
歴史ドキュメンタリーならともかく、普通の日本人なら、国際的なスポーツの祭典でそんな放送がされるなんて想像できないから、ビックリするのも当然。
しかし、この程度なら韓国では常識の範囲内にある。
テレビ局で、事前に複数の人間がチェックしてからテロップを入れたはずで、韓国の一般の視聴者が見ても、とくに違和感を感じなかったと思う。
「隣国に対する外交非礼だ!」という批判があがったり、テレビ局が謝罪したという話は聞いたことがない。
こんな認識や感覚の違いに接すると、やっぱり日韓は「近くて遠い国」の関係なんだなと実感する。
2025年の現在では、多くの国民が互いの国を行き来するようになったし、韓国側も日本に配慮して、国際的なイベントでこんな失礼なテロップを出すことはないだろう。
しかし、韓国メディアの報道を見ていると、悪意はないのだろうけど、ちょくちょく「日サゲ」を入れてくる。
先日、韓国最大の全国紙・朝鮮日報に、経済学者が書いたこんな寄稿文が掲載されていた。(2025/05/04)
元千葉ロッテの金泰均が語る「野球の技術と人生の技術」
この経済学者は、日韓のプロ野球でプレーをした金泰均(キム・テギュン)氏が書いた本『打撃に関する私の考え』を解説している。
金氏は選手時代、スピードと筋力が落ちたことを感じ、激しいトレーニングでカバーしようとしたら、故障を起こし、かえって引退を早めてしまったという。そんなエピソードから、「老いていくことをそのまま受け入れる姿勢」を強調している。
寄稿文の中に、野球観戦とはお金のかかる文化活動であると指摘し、こんな一文が挿入されている。
「日本の若者たちが小部屋を探し求めるようになったのとは違い、韓国の多くの若者は球場に足を運んでいる。」
日本の若者が韓国の若者に比べ、経済的に困窮しているという話は聞いたことがない。「小部屋を探し求めるようになった」というのも、具体的に何を指しているのかわからない。
この一文は唐突で、そもそも入れる必要性がわからない。
韓国メディアとしては、たくさんの読者に記事を読んでもらいたいから、優越感をくすぐるために、こんな「日本サゲ」をサラリと挿入することが多い。
これがスパイスのような効果になり、国民はちょっと気持ちが良くなる。その意味で、これは必要だ。
これは読者サービスで、日本をサゲることではなく、それによって韓国をアゲることが目的になっている。
中央日報のこの記事もそうだ。(2025.05.09)
韓国の「味」日本では「押し活」…東京の20・30世代を並ばせた
「押し活」はきっと「推し活」の間違い。
東京や大阪などで、韓国で人気のカフェ『ハーリスコーヒー』や、ハンバーガー店『マムズタッチ』がオープンすると、若い世代の日本人が押し寄せて、店の前には長い列ができるという。
その現象を「並ばせた」と書くところに、韓国メディアの“らしさ”(または“嫌らしさ”)がある。
立場が逆転して、韓国で人気の日本の飲食店を日本のメディアが紹介したら、おそらく「長い列ができた」という客観的な表現になって、「ソウルの20・30代を並ばせた」という表現をすることは考えられない。
一般の日本人には、そんな「上から目線」な書き方が目に付くらしく、『ヤフコメ』を見ると、ほとんどは批判的なコメントだ。
・逆に気になるのだが韓国外食企業の最初の1か月くらいだけ人気があってそのあと閑古鳥になるギャップが気になる
・これステマですよね?
・韓国の食べ物、雑貨、化粧品などはアイデアで素早く商品化して店に並べて売るが、目新しさが無くなり飽きられるとあっという間に撤退となります。
・物珍しさで最初は入るかもしれないが、結局ミーハー層が飛びつくだけです。
・こうした動きは一過性に終わるよ。そもそも韓国大手紙が大々的に報道する内容かね?
こんな感じに、日本で例えるなら、朝日新聞や読売新聞のようなクオリティペーパーのレベルで、韓国メディアはよく日本を下に見るような表現を使う。
以前、日本の会社で働いていた韓国人(20代の男性)と話をしていた時、彼はそのことで少し困っていると言っていた。
彼のまわりには、韓国語を学んでいる日本人が何人かいて、韓国の文化や社会などの話をよくしていた。
ある時、そんな日本人から、韓国メディアの報道を見たり聴いたりしていると、日本をサゲて、日本人には不快になるような表現があって気になるという話を聞かされた。
他の日本人からも、そんな苦言を呈されて、「あれは韓国では普通のことですか?」と質問されて、彼は返答に困った。
韓国にいたころは何も感じなかったけれど、日本にいて、日本のメディアの報道を見たり、日本人と交流したりしていると、改めて考えると、確かにあの書き方は失礼だと感じるようになったという。
それを指摘されると、日本にいる彼としては立場的に苦しい思いをするけれど、個人ではどうすることもできない。
韓国語を理解する日本人と一緒にスポーツの国際大会を見ていて、「周辺国と深刻な問題がある国」なんてテロップが出てきたら、一瞬で場が凍りつく。
韓国メディアは、海外にいる自国民を困らせるような報道をするべきではない。
日本に進出し、勝負をかけている韓国の店にとっても、「並ばせた」という韓国メディアの書き方は援護射撃になっていない。あの『ヤフコメ』を見ればわかる。きっと「銃で背中を撃つな!」と迷惑に感じている。
以下、おまけ
記事を書いていたら、思いがけないことを知った。日本のコーヒーチェーン店のホリーズが、韓国のハーリスを訴えたのだ。確かに「HOLLYS(ハーリス)」と「Holly’s(ホリーズ)」はまぎらわしい。
くわしいことは、なんばマルイ内「ハーリス」への法的措置についてのご報告 で確認してほしい。
日韓は本当に近くて遠い。

コメント
コメント一覧 (2件)
> 改めて考えると、確かにあの書き方は失礼だと感じるようになったという。
> それを指摘されると、日本にいる彼としては立場的に苦しい思いをするけれど、個人ではどうすることもできない。
どうすることもできない? 本当にそうですかね?
逆の立場で日本人だったら、おそらく、「日本人個人としてその行為に関して改めて謝罪します」という人も何人かはいるだろうと思いますけどね。日本人の全員がそうだなんて言いませんが。
1人の力でメディアの報道を変えることは難しいでしょうね。