外国との交流が少なった時代は、それぞれの国や地域で独自の単位を使っていてもよかったが、19世紀になって世界が狭くなると、そうはいかなくなる。
たとえば、一方がマイル、もう一方がメートルを使ってやり取りをしていたら、とても不便でミスも起こりやすい。そのため、1875年5月20日、17か国が参加して、国際的に共通の単位を使うことを目的にパリでメートル条約が結ばれた。現在では、それを記念して5月20日は「世界計量記念日」となっている。
このときメートル条約を結んだ国には、ドイツ、スペイン、アルゼンチン、ロシアなどがあり、アメリカも参加していた。それなのに、なぜか現在のアメリカでは一般的に「ヤード・ポンド法」が使われている。
*マイルやフィートは、ヤード・ポンド法における長さ の単位で、1マイル(約1600m)=1760ヤード =5280フィートになる。1フィートは約0.3メートル。
アメリカ人は日常生活でマイルやフィートを使っているが、医療や科学など特定の分野ではメートルが使われている。そんな複雑な事情から、1999年に「失敗学」の教科書に載るようなとんでもないミスが起きた。
この年、アメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げた火星探査機『マーズ・クライメート・オービター』が火星に到達し、火星の気候や二酸化炭素の量などを観測することになっていた。しかし、その直前に故障して通信できなくなってしまう。
原因は性格ではなく、単位の不一致だった。
このプロジェクトに関わるAチームはメートルを使い、Bチームはフィートを使っていたため、伝達ミスが発生。火星探査機は、火星軌道への進入という超重要な場面で「ロスト」した。
「NASA」という世界トップレベルの集団でもこんな単純なミスをして、350億円以上かけた火星探査プロジェクトが一瞬でふっ飛んだ。(マーズ・クライメイト・オービター)
単位の変換ミスが原因で起こる失敗は昔からあるけれど、このNASAの一件はまさにレジェンド級。これを超えるミスは、起こそうと思って起こせるものじゃない。というか、もう一度メートル条約を結んで、世界で単位を統一すればいいのに。
コメント
コメント一覧 (1件)
> もう一度メートル条約を結んで、世界で単位を統一すればいいのに。
ははは、それはあり得ない。
なぜかと言うと、世界ではもうほとんど単位はメートル法で統一されているからです。いまだにメートル法を使っていないのは、アメリカ合衆国の庶民生活(科学分野はメートル法です)の他には、アメリカの力が飛び抜けて強い分野である、「航空」「アメフト」「ゴルフ」「野球」「ボクシング」くらいです(フィート、ヤード、インチ、ポンド)。
まあ、メートル法に統一するだけで、学校で学ぶ理科の計算量がおそらく半分くらいにできるのですけどね。その合理性ゆえ、アメリカ人でも科学分野ではメートル法を使わざるを得ないのです。