現在の日中関係を簡単に表すなら、「控えめに言ってドイヒー」だ。
昨年末に発表された日中の世論調査によると、相手国に「良くない印象」を持つ人の割合は、それぞれ約9割もいたのだから。
それでも、日中は経済的には重要なパートナーであることは変わらない。
中国へ進出する日本企業は本当に多く、明治はことし7月に中国で「明治おいしい牛乳」を販売すると発表した。
驚いたのはその値段で、900ミリリットル入りで約600円と、日本のおよそ2倍とかなり攻めている。その分クオリティーにこだわり、中国の工場で、日本と同じ品質の牛乳を生産して販売する予定。
最近の中国では健康志向が高まっていて、そのためならお金を出せる人も多いから、こんな強気の値段設定でも勝負できるらしい。
では今回は、中国の最西部・新疆ウイグル自治区から日本へやって来て、現在は大学で学んでいる中国人(20代・男性)の話を紹介しよう。
ーー日本に住み始めてから、もう約10か月になる。生活には慣れたと思うけど、最初はどんなところに違和感を感じた?
食事の量が少ないことですね。
レストランのメニューでもお弁当でも「え? これだけ?」と思うほど、日本の食べ物は小さくて、最初のころは本当に失望しました。日本は物価が高くて、私は学生でお金がありません。食事って本来なら楽しいはずなのに、日本では悲しくなりました。
ーーそっか。知り合いのナイジェリア人も同じ思いをした。彼女が初めて日本のレストランで食事をしたとき、店員さんが「お待たせしました〜」と言ってテーブルに置いたパスタを見て、「これは…、前菜なの?」と目を丸くして夫のナイジェリア人に聞いていた。
中国では、食べ物がたくさん出るの?
私の出身地では、食べ物をたくさん出して歓迎する文化があるので、特にその傾向が強かったです。もてなされた方もその気持ちが分かっているので、感謝する意味で、お腹いっぱい食べることが多いんです。
ホストに「よく来た。もっと食べろ」と勧められて、苦しくなるまで食べることも珍しくありません。
でも、そのせいで糖尿病や高血圧が問題になっています。
ーー「弁当」と言うと、ある中国人がこんな経験をした。
彼は中国の旅行会社で日本語ガイドとして働いていて、あるとき日本の会社で研修を受けることになった。午前中の研修が終わった後、昼食を食べるために会議室へ移動する。そこで配られたお弁当を手に取ると、ご飯が冷たかったから、彼も同僚もビックリした。
中国では、ご飯は“必ず”と言っていいほど温かい状態で出てくるから、彼は刑務所の囚人になったような惨めな気分になったらしい。
その気持ちは分かります。自分が客や訪問者の立場で、相手先から冷たい弁当を出されたら、中国だったら「バカにしているのか!」って腹が立ちます。でも、日本では冷たい白米を食べる文化があるので、それは仕方ないです。
ーー日中は同じ米文化の国なのに、そんな好みの違いがあるのが不思議。
中国医学で「体温を下げると健康に悪い」という考え方があるので、その影響だと思います。日本は分かりませんが。
ーー日本人は中国から、先進的な文化や制度を学んで取り入れたけど、医学は意外とそうじゃなかったかもしれない。江戸時代、日本人は西洋医学と比較して、西洋の方が優れていると分かって、それを熱心に学んでいた。
弁当を出すなら、せめて電子レンジでチンしてほしいです。
ところで、日本人は省略して言うのが好きですよね。電子レンジを使って食べ物を温めることを、「レンチン」って面白い言い方をします。
ーー気に入ったのならよかった。あるアメリカ人は「ベア」(ベースアップの略)という言葉を聞いて、「絶対クマだと思うわっ」と怒ってたからね。
分かりづらいけど、この弁当は底上げされている。中国人なら激怒案件だ。
ーー「量が少ない&冷たいご飯」という合わせ技は、中国人的には最悪の組み合わせかな。
いえ、私はもう慣れて何とも思わなくなりました。それに胃が小さくなったから、もう空腹を感じることも減りました。
ーー住めば都で、胃も日本サイズになったと。
*実際には、胃の大きさが変わることはない。満腹や空腹を感じるのは、脳に送られる電気信号(満腹中枢)のせい。一般的に「胃が小さく(大きく)なった」と言うのは、その電気信号が変化したことを指す。
それどころか、食事の量が少ないのは、最近ではとても良いことだと思うようになったんですよ。
ーーどゆこと?
毎日、自転車に乗っている影響もありますが、体重が減って、健康的になったんです。家族にそれを指摘されて、自分でも体が軽くなった感じがします。
ーー体を動かす機会が増えて食べる量が減って、体重が増加したらミステリーだから、当然そうなるか。
お腹いっぱい食べると、幸せな気持ちになりますけど、体は違います。少ない食事を見て、私はガッカリしましたけど、負担が少ないので体は喜んでいたようです。
「腹八分」って日本語がありますよね。ちょっと物足りないぐらいが、健康にはちょうどいいんです。中国では、健康にお金をかけるのは当たり前ですけど、日本ではそれが自然に手に入ります。
いつもはそんな「腹八分」で食べて、たまに友だちと死ぬほど食べるというのがちょうどいいですね。日本に来て、初めて理想的な食生活に気づきました。
ーー刑務所に入って糖尿病が良くなったり、血圧が下がったりして健康的になる人もいるし、ダイエットには最適な環境かもしれない。入ったことないから知らんけど。
君にとっては日本の食生活は刑務所だったと。
それは言い過ぎ。そこまでではない。
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