「私は泣いたことがない♪」と中森明菜さんが歌うのはいいとして、国民がコメ価格の急騰に苦しむ中、江藤農林水産相が「私はコメを買ったことがない」なんて言ったから、大問題になった。と思ったら、さっき辞任して、次の農林大臣には小泉進次郎氏がなるというニュースを見た。この流れで、来年の大河ドラマも「大塩平八郎」に変えたらいいと思う。
ここ最近の日本の国民的な大問題と言えば、この米騒動だろう。でも、「この程度」で大騒ぎになる国をうらやましいと思う外国人もいる。
ことし2月ごろ、日本の大学で学んでいるバングラデシュ人がSNSに、こんなメッセージを書き込んでいた。
「Why I have no intention of coming back to Bangladesh permanently.」
バングラデシュ人は、少なくとも日本人に比べれば愛国心が強いはずなのに、彼は母国に戻るつもりは一切ないという。彼にそう思わせた原因は、添付されていた動画を見て分かった。
このバングラデシュ人の説明によると、それは、過激なイスラム教徒の集団がヒンドゥー教徒の家を襲撃している動画で、棒を持った男たちが背中を丸めておびえる住民を殴ったり、家具を破壊したりしているところだ。
子どもたちは部屋の隅にいて、両親や祖父母が殴られている様子を見て大泣きしている。日本なら、ドラマでも放送できないような衝撃的な映像で、ちょっと言葉が出てこない。
バングラデシュでは2024年、シェイク・ハシナ元首相が国外に追放されたころから、国中でヒンドゥー教徒の家や会社、寺院などへ攻撃が始まり、破壊や略奪、殺人、放火といった蛮行が相次いだ。
社会的にはマイノリティに属する仏教徒やキリスト教徒もそのターゲットとなり、8月には約2週間だけで、全国で2000件以上の襲撃事件が発生したという報告もある。
あるヒンドゥー教徒の家族は不穏な雰囲気を感じ取り、警察や軍に通報したが、彼らはまったく動かなかったという。その後、イスラム教徒の集団が家に入ってきて、父親を殺害し、母親の頭を殴った。
この時のバングラデシュにおけるヒンドゥー教徒への襲撃事件については、以下のサイトにくわしい説明がある。
2024 Bangladesh anti-Hindu violence
下の動画では、襲撃されたヒンドゥー寺院が映っている。
Anti Hindu Violence Grows In Bangladesh, Mobs Target Hindus In Dhaka, Set Temples Ablaze
冒頭のバングラデシュ人はヒンドゥー教徒で、以前からバングラデシュでは、過激なイスラム教徒が略奪や破壊行為を行うことがあることは知っていた。
しかし、今回、彼にとって絶望的だったのは、この集団が子どもたちを連れていたこと。異教徒の家に侵入し、棒で殴りつけることを「正しい行動」として子どもたちに教えていたのだ。
こうした子どもたちが育ったら、未来でも同じことが繰り返されるに違いない。それで母国に心の底から絶望して、「I have no intention of coming back to Bangladesh」という決意を固めた。
彼は日本に2年以上住んでいて、差別を思わせる不快な体験をしたことはあっても、宗教を理由とする緊張感を感じたことは一度もない。バングラデシュと違って、彼はここでは自由に安心して信仰を守ることができる。
ほとんどの日本人なら、大きな音を出さないとか、ゴミを散らかさないといった生活のマナーさえ守っていれば、誰がどんな像に祈りをささげていても気にしない。
日本の多数派は無宗教だから、異教徒を憎悪し、家を襲撃して棒で殴りつける事件なんて聞いたことがないし、これからも起こる気配がしない。
ヒンドゥー教徒でバングラデシュ人も、そんな平和な空気を感じるから、日本で就職し、ずっと暮らすことを夢見ている。
軍や警察が守ってくれず、両親が殴られるのを見ているしかない地獄に比べれば、コメ価格の急騰“ぐらい”で、大騒ぎになる国はパラダイスだ。
*ここに出てくる悪逆なイスラム教徒は一部の過激派で、バングラデシュでは大多数のイスラム教徒がヒンドゥー教徒と平和共存している。知人にもイスラム教徒の友人は多い。
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