バングラデシュ人女性の話 大好きな日本の秋の景色・母国の収穫祭

10年以上前、そこへ行くと言うと、周りから「聞いたことがあるけど、どこ?」とよく言われた国がバングラデシュ。それでも最近は日本での知名度が上がってきたから、世界地図を見せられて「バングラデシュを指してください」と言われると、アフリカ大陸を指す人は減ったはず。
「ベンガル人の国」を意味するバングラデシュは、インドとミャンマーの間にある。日本に対する印象はとても良く、仕事や留学のために来日するバングラデシュ人は増加傾向にある。

知人の20代のバングラデシュ人女性、アイシャ(仮名)もその一人。
アイシャにはアラビア語で「生き生きとした」という意味があり、強い生命力を感じさせる名前だ。イスラム教の預言者ムハンマドの妻(アーイシャ・ビント・アブー・バクル)と同じ名前なので、イスラム教徒の女性にはポピュラーな名前だ。
アイシャは日本に住んでいて、3年前にダッカに戻り、現在は大学で研究をしながら学生たちに教えている。そんな彼女とネットで「秋」について話をしたので、これからその内容を紹介しよう。

 

ーー日本は11月の中旬になって、まだ半袖で歩いている人もいるけど、秋に包まれているのは明らか。そっちは今、どんな感じ?

バングラデシュには6つの季節があるって知ってますよね? 今の時期は「レイトオータム(晩秋)」です。木の葉が緑から黄色に変わって、『ああ、今年ももうすぐ終わるな』って感じます。

ーーそれだけを聞くと、日本人と季節感が同じだ。アイシャが日本にいたころ、好きな季節は秋で、毎年紅葉を楽しんでいると言ってたような。

そうなんです! 日本の四季でいちばん好きなのが秋なんです。モミジの葉が信じられないくらい赤くなりますから。秋の京都を旅行したときは、まるで夢の世界にいるようで、ため息が何度も出ました。バングラデシュでは、あんな景色は見られませんから。本当に良い思い出になりました。

ーー京都の人たちがそれを聞いたら喜ぶか、「インバウンドいらね」って思うか、どっちだろう。バングラデシュは熱帯モンスーン気候だから、モミジが育つ環境としては厳しい。南半球にあるモミジは一種類しかないから、バングラデシュ人やインド人にとって、日本の紅葉は異世界だと思う。また日本へおいでやす。

はい、また日本へ行きたいのでお金をください。

ーー仕事や留学で来日するバングラデシュ人は多いけど、海外旅行で日本へ来るにはハードルが高すぎるか。だが断る。

※AIによると、バングラデシュの平均月収は約4万600円(3万2000タカ)とのこと。

 

バングラデシュで市民の足になっているリキシャ。日本に来て、語源が日本語の「人力車」だと知って驚くバングラデシュ人もいる。

 

ーー日本では秋に神嘗祭がある。これは、新米をアマテラスに捧げて、豊かな収穫を感謝するというもので、個人的には日本で一番重要な祭りだと思ってる。バングラデシュにも収穫祭はある?

※「嘗(な)める」とは「味わう」ということだから、神嘗祭は「アマテラス様が新米を召し上がる」といった意味。

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ありますよ! 毎年、秋に『ナバンナ(Nabanna)』というバングラデシュの伝統的な収穫祭をします。農家の人たちは新米を使って、デザートや食べ物を作ってお祝いをします。

ーーバングラデシュ人は米と魚をたくさん食べる。日本と食文化が似ているから、秋には収穫を祝う祭りもある気がした。で、どんな神様に感謝をするの?

バングラデシュの収穫祭では、神に感謝することはあまりないと思います。新米を使った食べ物やデザートを近所の人たちと食べたり、歌ったり踊ったりして祝います。
もし神に感謝するとしたら、バングラデシュ人のほとんどがイスラム教徒なので、当然アッラーです。

ーー日本の神嘗祭は完全な宗教儀式だけど、バングラデシュのナバンナは宗教色が薄いんだ。アメリカの収穫祭「サンクスギビング(感謝祭)」みたいな感じかな。

そうですね。「イード(イスラム教の祭り)」は宗教的で、ナバンナは文化的なイベントです。農家にとってはお金が儲かりますし、そうではない人にとっても豊作は良い知らせなので、イードよりもこの収穫祭のほうが盛り上がる感じがします。

ーー米民族としてその気持ちは分かる。昔は、米が取れるかどうかが死活問題だったし、豊作になって米が手に入りやすくなれば、みんなが喜んでいた。今は値段がとんでもなく上がって、気軽に米を買えなくなったから、国民が殺気立っている。

でも、バングラデシュにはない素敵な景色を見られるじゃないですか。日本の紅葉は本当に美しかった…。

ーーこれから日本の秋がどう変わっても、モミジの美しさは裏切らない。って言いたいけど、これから温暖化が進んで、日本の気候が熱帯モンスーン化したら、それも無くなるかも。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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