知り合いのアメリカ人(20代の男性)は、1年前に日本の大学を卒業したあと、そのまま日本に住むことを選び、今は静岡にある会社で、文句をブーブー言いながらもちゃんと働いている。
ことしの3月、そんな彼と話していて、「日本のどこに行ってみたい?」と聞くと、「お金もある程度たまったし、沖縄を旅行してみたい」という答えが返ってきた。それはいい選択だ。
沖縄の海は透明度がとても高く、キレイさなら、控えめに言って世界的トップクラス。浅い場所はエメラルドグリーンに見え、深くなるとコバルトブルーに変わっていく。社会人になったから、そんな海を眺めてプチぜい沢な体験をしてみたい、という理由ではなかった。
「琉球民族の人に会ってみたい」と彼は意外なことを言う。
アメリカにも先住民がいて、彼は前からネイティブ・アメリカンの文化や、彼らが置かれている立場に関心があった。日本語ができるから、日本の先住民がどんな文化を持ち、どんなことを考えながら生活しているか、ぜひ知りたいらしい。
同じようなことを、別のアメリカ人からも聞いたことがある。2人とも、「琉球民族は日本の先住民」とサラリと言うが、その見方には立場によって違いがある。
国連などでは「先住民族」の定義がされているが、その解釈は一つではない。個人的に沖縄の人に聞いても、「先住民だ」と言う人もいれば、「いや、日本人だ」と言う人もいた。
だから今のところは、「琉球人(沖縄の人々)を先住民族として認めるかどうかは、現在も議論が続いている問題です」というAIの答えがいちばん正確だ。
日本政府は、先住民として認めているのはアイヌ民族だけで、琉球民族は含めていない。これに対し、国連の人種差別撤廃委員会は、琉球民族には独自の歴史や文化、伝統があるとして「先住民族」と認めている。
政府と国連(の人種差別撤廃委員会)では、立場が真っ二つに分かれ、対立しているのだ。
この認識をめぐる問題には、米軍基地という政治的な要素も関係しているという指摘がある。国連で採択された「先住民族権利宣言」には、先住民族の土地を軍事目的で使うには、その民族の合意が必要とされている。
だから、沖縄から米軍基地をなくしたいと考えている人たちは、「琉球民族=先住民」と考えるだろう。

最後の琉球国王で、明治時代には東京に住み、議員をしていた尚泰(しょうたい)。
琉球民族を先住民と考える根拠のひとつが「琉球王国」の存在だ。
琉球王国は15世紀にでき、17世紀に「琉球侵攻」で薩摩藩に服属することになったが、19世紀半ばまで、約450年にわたって国家として存在していた。最終的には1879年に琉球藩が廃止され、沖縄県が置かれたことで、琉球王国の歴史は終了。
日本政府はかつての琉球国王を冷遇することなく、他の大名と同じ「華族」という身分にした。その後も王族の血は続き、今も第23代当主・尚衛(まもる)氏がご健在だ。
先日、八重山日報が衛さんの言葉を伝えた。(2025/05/25)
「琉球滅亡ではなく正しい決断」 沖縄県設置、尚家当主 復帰53周年記念祭典
那覇市でおこなわれた式典で、尚衛氏は1879年の沖縄県設置について、国王・尚泰(しょうたい)は琉球の民の幸せを願い、「日本という国家への統合」という正しい選択をしたと評価した。また、1972年の本土復帰に関しては、「琉球の魂と日本の心が一つとなり、新たな未来を築く礎になった歴史的瞬間」と述べ、「沖縄の人々は先住民族ではなく日本人だ」とはっきり言った。
もちろん、これは個人的な考え方だが、琉球国王の子孫という立場には、普通の人とは違う重みがある。
知人のアメリカ人が話を聞いた相手が、日本政府寄りの人か、それとも国連寄りの人かによって、彼の印象は大きく変わるはずで、この辺はまさに「ガチャ」。
ちなみに、これまでいろんな外国人と話してきた感じでは、海外では琉球民族を「日本の先住民」だと思っている人が多いように感じる。

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