たまたまネットで、「こんなん中国だけだろ」的なニュースを見つけた。
今、中国では空前の就職難になっていて、「フェイク出勤」をする人が増えているという。
自分が失業していることが知り合いにバレるとメンツを失うし、家族に知られると心配されてしまう。
そんなことを不安に思う失業者のために、ニセの職場を提供するサービスがあるという。1日数百円〜千円ほどの料金を払うと、朝から夕方までオフィスに見える場所に滞在する権利が得られる。毎日そこに通えば、ご近所には「出勤している」と思わせ、そこで写真を撮ってSNSにアップすれば、仕事をしているように見せることができる。
実際にはゲームをしたり寝ていたり、好きなことをして時間を潰しているだけだけど。
「仕事を頑張っているフリができる」というサービスを提供する会社ができるのは、中国以外では考えられない。
さて、友達の中国人は中国の新疆ウイグル自治区で生まれ育ち、東北部(日本で“満州”と呼ばれた地域)の大学を卒業した後、今は日本の大学で学んでいる。そんな彼と中国の料理について話をした。
ーーはじめて日本の夏を体験して、何か印象的だったことはある?
朝になると、たくさんのセミがとても大きな声で鳴くので、最初はそれにビックリしました。 セミと言えば、『八日目の蝉』という小説を読みました。面白かったです。
ーーそっか。なら、次は『100日後に死ぬワニ』だな。それより、セミの鳴き声に驚いたの?
セミは寒いところにはいないから、ドイツ人やロシア人から、日本に来てはじめてセミの声を聞いたという話を聞いたことがある。でも、中国にはセミがたくさんいるんじゃないの?
中国のセミは国民と違ってシャイで声が小さいのかな。
中国は日本の約26倍の面積がある広大な国で、セミがいる地域とそうでない地域があります。暑い南部にはたくさんいますけど、新疆や東北部では、ほとんどセミの声を聞いたことがありません。爆音みたいなセミの鳴き声を聞いたのは日本がはじめてです。
それと、日本では子ども向けの夏休みイベントで、公園でセミを捕まえて食べるという活動があると知って、それにも驚きました。
ーー国連が昆虫食をすすめてから、そんなイベントが増えた気がする。いまそのHPを見たら「旬の食材」って書いてあった。セミが松茸やカツオと同じように語られる日が来るとはね。
でも、そのイベントが意外なの? セミを食べることについては、中国人の方が日本人よりも知識やテクがあると思うんだけど。
セミなんて食べませんよ!
ーーそうそう、中国人はセミなんて食べない…って、え、食べないの? いまボクたちがいるところは同じ世界線?
ここ数年、食べるために、日本の公園でセミを捕まえる中国人が現れたから、中国語で「セミの幼虫を採取しないでください」って書かれた看板が設置されるようになって、それが全国ニュースになった。画像を送るから見てみて。
もし、中国にセミを食べる文化がなかったとしたら、日本のマスコミは壮大なフェイクニュースを流したことになる。少し前、「中国人はカラスを食べる」と事実をねつ造して、大問題になったテレビ番組があったけど。
(人種差別につながるステレオタイプ 日本とアメリカのテレビ番組のケース)
(看板の画像を見て)本当だ! セミを食べる中国人がいるんですね、意外でした。南部ではそういう食文化があるんだと思います。
ーーボクとしては、それを意外に感じる中国人こそ意外だ。

中国や台湾でよく見た茶葉蛋(チャーイエダン)。
ゆで卵の殻にひびを入れて、お茶の葉やしょう油、香辛料などといっしょに煮込んで作る。
ーー中国人には、いろんなものを食材に変える才能がある。だから、「空を飛ぶものは飛行機、4本足はテーブル以外は何でも食べる」なんて言葉がうまれた。でも、あれは中国南部の言葉なんだってね。
そうです、広東料理のことです。
中国では地域によって自然条件が違うので、食材や調味料、味付けも本当に多種多様なんですよ。私は東北部に来てはじめてカエルを使った料理を食べて、それが気に入りました。新疆では、カエルなんて食べませんでしたから。
ひとことで「中国料理」といっても、山東料理、湖南料理、福建料理…とさまざまな種類があって、私が知らない食べ物もたくさんあります。
ーーそれを聞いて、思い出した話がある。
日本には天津にはない天津飯とか、中国にはない中華丼とか変な食べ物がたくさんある。外国人がわけのわからん食べ物を作って、それを「日本料理」と呼んでいたら、不快に感じる日本人が多い。日本人が自分勝手な食べ物を作って「中国料理」と呼んでいることについて、君はどう思う?
とくに何も感じません。おいしくて安かったら大歓迎です。
ーー前に、同じことを日本に住んでいた中国人に聞いたら、彼も前半までは同じことを言っていた。
「いいえ、まったく気になりません。中国料理にはいろんな種類があって、日本にある中国料理もそのひとつだと思っていますから。」
つまり、彼は日本の中国料理を山東料理や湖南料理と同じように、中国料理のひとつのジャンルだと考えていた。中国料理のスケールの大きさを感じたね。でも、日本を中国のひとつの「省」と考えているようで、「大中華主義」みたいな発想には正直イラッとした。
そうなんですね。でも、その人の気持ちも分かります。中国料理の世界は広大で、境界があいまいなので、国境と一致していないという見方も理解できます。だから、細かいことには気にならないんでしょうね。

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