「笑い」は人種や宗教、時代を超えて、人が生きるうえで欠かせないエッセンスだ。だから、どこの国でも、才能のあるエンターテイナーやコメディアンは喜ばれている。
しかし、笑いのポイントは文化によって違うから、同じものを見て大爆笑する人もいれば、ドン引きしてしまう人もいる。
以前、日本で働いていた(たしか)オランダ人女性がSNSに、会社の歓迎会で今でも忘れられない光景を見たという投稿をしていた。
ゲームで負けた新入社員の男性が「罰」として、先輩が用意したタバスコを一気飲みし、新人が苦しむ様子を見て先輩たちが大笑いした。
彼女にとっては衝撃的な光景だったが、その場にいた日本人たちにとっては笑撃的だった。もはや人権感覚を疑うレベルで、彼女は本気で会社を辞めようかと悩んだという。
最近、中国出身の芸人がテレビ番組で日本のお笑いについて、理解できない“分野”があると話していた。洗濯バサミで乳首を挟んだり、熱々のおでんを食べたりする「体を張った笑い」は、中国人の彼には何が面白いのかさっぱり分からないという。
そんな見方に、日本のネット民はこう思った。
・差別と暴力が笑いの本質。
そう思ってた時代が軍国主義を引きずる日本のバラエティー界にはありました
・中国の場合、体を張ったギャグは日常でみれるからな
・外国人芸人の最終目標はご意見番化するイメージ
・中国人の方がそっちに寛容だと思ってたけど違うんだ
・台湾じゃ番組人気なのにw
中国と台湾は感性が違うんだなw
日本人の笑いのツボは独特で、外国人から見ると理解困難かもしれない。
日本のお笑いが大好きだという韓国人と話していたとき、「頭をバチーンとたたくツッコミだけは理解できない」と言われ、意外に思ったことがある。
日本と韓国には色々な違いがあるけれど、お隣どうしで、他国に比べれば文化的には共通する部分が多い。それでも、韓国人の感覚では、少なくとも彼には、頭を引っぱたくのはやり過ぎで、相手を侮辱する行為に見えて、まったく笑えない。引くというより、怒りを感じるという。
知人のタイ人の意見も同じで、こんなツッコミには全く笑えない。それには文化的な理由があり、外務省が公開している海外安全情報にも次のように書かれている。
「頭部は精霊が宿る場所として神聖視されており、頭部に触れることはタブーとされています。子供の頭をなでることもトラブルの原因となります」
個人差やその人との関係にもよるけれど、タイでは基本的に他人の頭に触れないほうがいい。頭は神聖な部分だから、そこをバチーンとするのは論外で、タイ人にこれをやったらきっと恐ろしい事態が起こる。
このテーマに興味をもったので、アメリカ人やトルコ人、アフリカ(タンザニア)人などにも聞いてみたが、全員一致で、頭をたたく行為にオモシロ要素は何もなく、見ると不快に感じると言う。
「コラっ」と頭をたたくあのツッコみには、日本人でも嫌いな人が昔からいる。最近では、そう感じる人が増えたせいか、テレビで笑いを取るために頭をたたく場面を見ることは減っていて、もうすぐ絶滅しそうな気配さえある。
それでも、多くの日本人があれを受け入れて、笑っていたことは事実。外国人がそれを見てドン引きすることには、何か文化的な理由があるのだろうけど、それをうまく説明することができない。
「電撃ネットワーク」は海外でも人気で、デンマークでは女王マルグレーテ2世の前で芸を披露したこともあるほどだから、体を張った笑いが外国人に受けないとは思えない。
しかし、頭をぶったたいて笑わせるというのは、個人的に聞いた範囲では、日本人にしか通じない笑いのツボだ。

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