ハワイを代表する一品に「ロコモコ」がある。これは、ご飯の上にハンバーガーのパティをのせて、グレイビーソースをかけて作る料理。
ハワイ旅行に行ってこの名物料理を食べる日本人は多いし、今では日本でも食べることができる。でも、ロコモコを考案したのは日系人だと言われていることを知っている人は少ない。少なくとも、ロコモコの知名度に比べれば。
これはいわゆる「丼もの」に近く、日本人的な発想だ。
日本の影響をうけて誕生したハワイの食べ物はほかにもある。
前回、ポーランド出身のアメリカ人から聞いた、「夏」についての話を書いた。
彼女と話をしていて、前にロシア人から「日本に来て初めて『かき氷』を食べた」という話を思い出した。
ロシアの気候は日本よりポーランドに似ていて、１年を通じて基本的に寒い。夏でもわりと涼しく、そのロシア人の感覚だと「氷を食べる」というのは奇妙らしい。
アメリカ人もその見方に同意する。
彼女がポーランドにいたとき、アイスクリームなら何度も食べたことがあっても、記憶の中にかき氷はない。だから、ポーランドにも、「氷を食べる」という発想はないかもしれないとのこと。
ただ、彼女はしばらくポーランドに帰っていないから、最近の事情はわからないらしい。
アメリカにはそんな文化がある。
有名なのは「スノーコーン」という、粗い氷をガチガチに固めたもので、歯でかじるというか、削りながら食べていく。「あずきバー」ほどハードではないから、歯が欠ける心配はないと思う。
そのほかにも、日本のかき氷みたいに、ふわふわしたタイプのものがあるという。それはアメリカで「Shave ice（シェイブアイス）」と呼ばれていて、意外なことにルーツは日本にあった。
かき氷について英語の辞書を引くと、ひげ剃りの「shave」を使った「シェイブド・アイス（Shaved ice）」と書いてあるはずだ。「削った氷」というのが一般的なかき氷を指す。
上のアメリカ人と話をしていると、それとは別に、「シェイブアイス（Shave ice）」もあることを知った。
彼女は日本に約３年間住んでいて、驚いたことは数しれず。
大阪の家庭にはだいたい「たこ焼き器」があるという話は、そんなに意外に感じなかったけれど、日本では全国的にかき氷機がある家は珍しくないと知って、かき氷を愛する日本人の気持ちは想像を超えていたという。
日本人と氷の付き合いはとても古い。
平安時代、京の都では６月１日に「氷室の節句（節会）」という宮中行事がおこなわれ、天皇や貴族が氷室から取り出した氷を口に入れ、暑気払いをしていた。
こんな伝統があるから、日本では夏になると、昔から氷を口にする習慣があった。そんな文化から生まれたのがシェイブアイスだ。
ハワイアン航空のHP「シェイブアイスがハワイ名物になった理由」に、その由来が書いてある。
「ハワイに移住した日本人は、暑さを乗り切るために、日本から取り寄せた氷削機で氷のかたまりを削って、砂糖やフルーツジュースをかけて食べました。」
シェイブアイスのはじまりは、１９５１年に日系人のマモル・マツモト（松本守）がオアフ島に開いた食料雑貨店だ。マツモトは日本からかき氷機を取り寄せ、シロップで虹色の色付けをしたかき氷を提供し、それがシェイブアイスになった。
日本風のかき氷に、モチやアズキをトッピングするのがマツモト式シェイブアイス。
画像は「マツモトシェイブアイス」のホームページから。
シェイブアイスの人気は海を越えて本土へ上陸。AIに英語で聞くと、シェイブアイスはアメリカ本土で人気があり、特に、ハワイや日本の文化の影響を受けた地域で支持されているという。
「particularly in areas with Hawaiian or Japanese cultural influences, or where there are large populations of people who enjoy the dessert.」
シェイブアイスは、日本のかき氷の中でも氷をとくに細かく削って作るタイプのもので、ふんわりとした食感を味わうことができる。スノーコーンの粗い氷とは種類が違って、かぶることがないから、アメリカ人に新感覚のスイーツとして受け入れられたのだろう。
コメント