【抗日勝利80周年】中国では反日愛国、日本では懸念・不安が高まる

先日、いまの緊張した日中関係の空気を感じさせるドタキャンがあった。

今年はAKB48にとってめでたい20周年ということで、公式は「日本を飛び出して、上海にも会いに行きます!」と元気そうに言って、9月下旬に『TIF ASIA TOUR 2025 in Shanghai』を開催するはずだったが、2週間前に突然、「諸般の事情」により来年に延期されると発表。
その具体的な理由は、チケットが思っていたより売れなかったからではなく、別の想定外の事態が発生したからではないか? ネットの反応を見ても、「まあ中国はな…」「よく企画したな」「反日ムード全開だからな」とその気配を感じている人が多い。

中国で日本関連のイベントを開催するのに、9月後半というタイミングは最悪に近い。1931年9月18日に柳条湖事件が起き、それが日中の武力衝突(満州事変)に発展し、中国側で300人以上の死者が出た。その重い歴史から、現在の中国では9月18日が「国辱の日」とされているため、その日が近づくと反日感情が高まりやすい。

中国共産党にとって2025年は「抗日戦争勝利80周年」という記念すべき年で、9月3日に北京の天安門広場で大規模な軍事パレードが行われたばかりだ。
7月下旬には、旧日本軍によって多くの中国人が殺害されたとされる「南京事件」をテーマにした映画『南京照相館』が公開され、残虐なシーンが愛国心を刺激した。
9月18日の「国恥日」には、旧日本軍が人体実験を行ったと言われる「731部隊」を題材にした映画『731』も中国全土で公開された。これがさらなる“燃料投下”となることは間違いない。

最近の中国社会では明らかに「愛国抗日ムード」が高まり、それを受けて日本では「懸念」が強まっている。
たとえば、日本経済新聞は社説でこう訴えた(2025年9月18日)。

中国はいたずらに「反日」をあおり、愛国心の高揚を図ろうとしているのではないか。(中略)中国で暮らす日本人の安全を脅かしかねず、深く憂慮する。

中国の反日宣伝を憂慮する

 

昨年9月18日には、広東省で10歳の日本人男児が刺殺される事件が起き、現地の日本人社会の間では緊張が高まった。安全第一で、今年は18日・19日を休校とした日本人学校もある。
毎日新聞も社説で「中国の視線」を取り上げた(2025/9/19)。

懸念されるのは、中国社会の一部に日本を敵視するような風潮が強まっていることだ。
交流サイト(SNS)では、日本への憎悪をあおる書き込みが後を絶たない。

中国での男児殺害1年 憎しみを広げぬ対応こそ

 

日本政府は在中日本人の安全を絶対に守らなければならない。上海にある日本領事館では、短期間に何度も注意を呼びかけていて、その“必死さ”が伝わってくる。

 

 

今の中国では、

・日本人だとわかると、タクシーから降ろされた。
・街なかで日本語を話していると、中国人に絡まれた。
・レストランで食事をしていると、中国人に囲まれ、「731部隊についてどう思うか?」と聞かれた。

といった事案が発生している。在中国日本大使館は「外出時に日本語の使用を控える」といった注意喚起をしているし、反日感情が原因とみられるトラブルが多発しているのだろう。
こうした現状を見れば、AKBの20周年公演がドタキャンされるのも仕方ない。日本から遠征する予定だったファンは現地の事情をあまり知らず、危機感は薄いと思われる。飛行機やホテルを予約した人たちは、突然の悲報に呆然自失になっただろうけど。

 

一方で、中国政府はアメリカと対立していることもあって、日本に友好的な姿勢を見せている。国内にいる日本人に被害が発生することは、自分たちの利益にとってマイナスだから、「反日宣伝」と「安全確保」のアクセルとブレーキを同時に踏むはずだ。
もともと9月後半は反日の機運が高まりやすい時期で、おそらく今年は過去最高に盛り上がっている。日本文化を好きな中国人は多いから、「抗日勝利80周年」キャンペーンが終わって熱が冷めれば、日本関連のイベントは問題なく開催されるだろう。
来年の6月になっても、「諸般の事情」が発生したら、日中関係は本当に危機的状況だ。

 

 

日本 「目次」

中国 「目次」

【日本人の失敗】中国人を怒らせる近代史という地雷原

【日本と中国】歴史の法則や皇帝(天皇)の権威の違い

【謝謝中国】二度のアヘン戦争の敗北で日本が目覚める

【日本の恩返し】漢字を伝えた中国人が和製漢字を使ういま

“国恥”の21カ条の要求 日本は好きでも軍国主義は嫌いな中国人

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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