19世紀末、現在の福島県出身の本間九介という日本人が朝鮮半島の各地を旅して、「二六新報」という日刊新聞に紀行文を連載した。
本間はある時、地方にあった庶民的な料理屋を訪れた。彼は何もない部屋に通され、朝鮮の肉体労働者と一緒に座らされて食事をした。その様子をこう書いている。
「ただ、酒を飲み、肉を食らうだけである。酒肴も、明太魚(鱈)、豚肉、漬物くらいしかなく、軽く酔うことで、飢えを癒すことができるにすぎない。」
(朝鮮雑記――日本人が見た1894年の李氏朝鮮)
この料理屋は「酒幕(チュマク)」と呼ばれ、今の日本で言う居酒屋のような飲食店だ。酒幕では酒を飲んだ後、そのまま寝泊まりすることができ、しかも飲食以外の料金はかからなかったという。ただ、朝鮮の人たちはタバコを吸うのが大好きで、室内は煙で満ちていたため、日本人の本間は大変な思いをした。
本間の記録を見ると、食材は日本と同じだが、朝鮮では味付けが違ったらしい。両国は地理的・気候的には似ているため、食文化の土台となる素材はわりと共通している。しかし、人の舌は異なるため、「うまい!」と感じる基準が違う。
これは基本的に現代の日韓の食文化と同じだ。
さて、今回の登場人物は静岡の大学に半年ほど留学していた20代の韓国男性。彼は日本の生活が気に入って、もう半年延長しようとしたれど、韓国の大学に却下され、今年の9月に帰国して今は元の大学に通っている。
彼の名前をリッケンではなく「ジミン」として、彼が日本で感じたことを紹介しよう。

アフリカの伝統的な食べ物「ウガリ」(白くて丸いやつ)
アフリカ人はキャッサバを使ってウガリをよく作るが、日本や韓国でそんな食材は取れないから、きっとほとんど人はウガリの味を想像できない。素材が違うと、食文化は根本的に変わる。
ーージミンは日本にいたとき、韓国料理を食べた?
日本人の友だちに誘われて、2回ぐらい韓国料理のレストランに行きました。
ーーそれだけか。意外と少ない。
半年しかいられなかったので韓国のものは避けて、できるだけ日本の料理を食べていました。
ーー(それは親日(売国)発言になるでは?)
前に日本に住んでいたスウェーデン人から、中国を旅行して、スウェーデンの中国料理がベストだと確信したという話を聞いた。日本や本場のものより、スウェーデン人の舌に合わせた中国料理ががいちばんおいしいと。ジミンは日本の韓国料理をどう思った?
2回しか食べてないんですけど、日本人の味覚に合わせていて、辛さが足りなかったので、イマイチでしたね。悪くはないんですけど、舌がヒリヒリする感じがなくて、やっぱり「ザ・日本式韓国料理」って感じでした。
ーー日本の料理は全体的に味が薄いからね。
いえ、ラーメンはとてもしょっぱくて、牛丼は味が強いですし、日本にも濃い味の食べ物はたくさんあります。でも、韓国料理みたいに辛い味の料理には出会いませんでした。
ーーそれは韓国人の「食レポあるある」だ。日本のラーメンを塩辛いと感じて、水を入れて薄めて食べた韓国人もいた。
唐辛子は日本から朝鮮半島へ伝わったと言われている。でも、韓国に比べて、日本では唐辛子を使った料理があまり発展しなかった。
現代の韓国料理では、唐辛子とニンニクは本当によく使われています。この2つが無くなったら、韓国人は大打撃を受けます。
ーーその代表例がキムチ。昔、日本で韓国のキムチを売ろうとしたら、ニンニクのにおいが嫌われて敬遠された。今の日本ではキムチは定着しているけれど、そのほとんどは日本化されたもの。日本の会社が日本のハクサイで作ったキムチで、韓国のものに比べて甘めの味付けになっている。
そうなんです! 学食のキムチを食べて、「これじゃあんまりご飯が進まないな」とガッカリしました。
ーーそういうおかずを日本では「ご飯の友」と言うけれど、韓国では「ご飯泥棒(パットドゥッ)」と言うと聞いて、日韓の言語センスの違いを感じたね。韓国では人も食も自己アピールが強いと思う。
日韓では味覚も違うから、韓国の本場のキムチを売ろうとしても、なかなかうまくいかない。
※日韓のキムチの違いについて興味のある人は、下の中央日報のコラム(2023.11.28)を検索して読んでください。
【グローバルアイ】真の味、真のキムチ

韓国人にもらったインスタントラーメン。「平均より少し辛め」という話だったけど、個人的には限界マックス。
ーーそういえば「辛い」って感覚は、味覚じゃなくて「痛覚」だと聞いたことがある。辛いものを食べて舌がヒリヒリするのは、味ではなくて“痛み”なんだって。
なるほどです。韓国人が辛いものを好きな理由には、きっとストレス発散がありますね。辛いものを食べて汗をかくと、気分がスッキリして、精神的な効果が得られるんです。
※辛味を味覚の一つとする考え方もあるが、生理学的な定義では「五つの基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)」に含まれないため、辛味は味覚と見なされていない(辛味)。脳では辛味は痛み(刺激)として認識されている。
ーー知人の韓国人が日本に住んでいて、1年ぶりに帰国したら、韓国の料理が辛すぎて食べられなかったと言って、ショックを受けていた。舌が慣れるまで、周りから「アンタは韓国人失格」と言われ続けたらしい。
わかります。わたしも少しそうなりましたからww

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