今回のゲストはニュージーランダーなので、まずはニュージーランドにちなんだ話題から。
先日、ニュージーランド出身の男性が「世界一長い名前」としてギネス記録に認められた。彼の省略形の名前はローレンス・ワトキンズで、フルネームは2253語もある。2253文字ではないというところがポイントだ。「ワトキンズ」といった名前がそれだけあるということだから、声に出して読むと約20分かかるという。
彼はこの名前を認めなかった政府を訴えて勝訴し、法的に認めさせたという。日本では、ポジティブに言えば「和を以て貴しとなす」、ややネガティブに言えば「出る釘は打たれる」で協調性が重視されるから、こういう人は「めんどくさいヤツ」と嫌われる予感。
さて、これから登場するのは、日本で英語を教えていた30代のニュージーランド人の男性だ。今は母国に戻って別の仕事をしている彼に、日本人の印象について聞いてみた。
ーー日本に住んでいて、魅力に感じたのはどんなところ?
世界的に見ればニュージーランドは安全な国だ。でも、治安は場所によって大きく違っていて、男でも夜に一人で歩くのは危険な地区もある。俺は日本で3つの都市に住んでいたことがあるけど、市内のどこも安全で危ない地区がなかった。本当に安全な国だったね。
ーーサンクス。じゃ、日本のイヤなところは?
それは、「ゼノフォビア(排外主義)」の雰囲気があるところ。日本に15年以上いたけど、外国人を警戒したり、避けようとしたりする空気はあまり変わらなかった。みんながSNSをするようになってから、むしろ高まったんじゃないか? あれは残念だったね。
ーー日本人は外国人に対して差別的だと思う?
そこまでは思わない。ただ、排外主義は差別につながるという不安はあった。日本人は外国人に慣れていなくて、距離を取ろうとするから、それが排外的に見えるんだろうな。分からない存在に不安を感じるのは人間の本能だから、仕方ない面もある。
ーーニュージーランドにはもともと先住民のマオリ族がいて、19世紀ごろから白人(ヨーロッパ人)がドシドシやって来て、さらに近年ではアジア系の移民が増えている。
イグザトリー(それな)。ニュージーランドは多民族国家で、日本は俺から見たら単一民族国家で社会構成がまったく違う。
ーー日本では人口の97%を日本人が占めていて、知人のインド人も「どこへ行っても人や言葉が変わらない!」って驚いていた。ニュージーランド人は異なる文化や人間に対してとても寛容だけど、日本人は閉鎖的だと言われてる。
必ずしもそうじゃない。ニュージーランドだって地方に行くと、住民のほとんどが白人ということもある。そんな「ホモジニアス(同質的、均一的)」な社会には、日本みたいな排外的な空気がある。
ーー排外主義は、環境が人の内面に作用して生み出されると。
生まれ育った環境が大きいね。生まれたときから、すでに排外主義になってる人間なんていないだろ。
日本の排外主義については外国人にも原因や責任がある。
ーーというのは?
コロナ禍は別として、ここ10年で日本に来る外国人観光客が本当に増えた。京都・大阪・東京の観光地へ行くと、地面が見えないほど外国人がいて、「あれじゃ日本人に嫌われる」って思うような行動を何度も見かけたよ。
ーー大声で話すとか、ゴミのポイ捨てとか?
そういうのもあったし、奈良では鹿に紙を食べさせようとするバカな外国人がいたから、それはさすがに注意した。俺でもムカつくぐらいだから、日本人にはたまんないだろうな。
ーーほ〜、奈良でそんなことが。それは今ホットな情報だ。
日本人は外国人に慣れていないから、他人に英語で注意することなんてできないだろう?
ーー9割の人は無理だろうね。その場では黙って証拠をおさえて、後でSNSに投稿するから、不満や怒りが拡散されて排外主義につながる。外国人のマナー違反と日本人のシャイな性格が負のコラボをした結果でもある。

(州によって違うかもしれないが)インドで鹿肉を売るのは違法らしく、知人のインド人が山梨県の店でこの貼り紙を見てビックリした。彼の感覚では、鹿肉を売ることは大麻を売ることより罪が重い。
ーー日本人の性格についてどう思った?
規則をしっかり守るから信頼できるけど、いつもそんな態度をとっていて、融通が利かないと思ったことも多かったね。俺が働いていた会社で、日本人の社長が「従業員は指示待ちが多い」とよく文句を言っていた。たしかに俺から見ても、彼らは機械的だった。
ーー外国人は自分の頭を使って考えて行動している。
すごく良く言えばね。その社長は「外国人は勝手なことをする」とも言ってた。日本人にも外国人にも怒っていたら、彼は誰となら付き合えるんだろうな。
ーーそんな都合のいい人間なんていないだろうけど、そう感じる経営者は多いかも。短所は状況によってはストロングポイントに変わるから、全方面の長所や短所はない。
そう。日本人は礼儀正しいから、店では上質で気持ちのいいサービスを受けられるけど、距離を置いて付き合おうとするから、心から触れ合える友人にはなりにくい。俺がニュージーランドに戻った理由のひとつにそれがある。

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