優しくておだやかな人が突然、ヒョウのように恐ろしい人間になる。「君子豹変」とはそんな急激な変化を指すと、誤解している人もいるかもしれない。
※季節が変わると豹の毛は抜け落ちて新しくなり、斑紋(まだら模様)が鮮やかで美しくなる。
賢くて徳のある立派な人物は、時代の変化や自分の間違いを認めたら、すぐに考え方や態度を改める。「君子豹変」は本来、そんな良い意味のことばだったのだけど、今では悪い意味で使われることが多い。
そんな本来の意味で「君子豹変」したと注目を集めているのが、大統領になる前後で言動がガラリと変わった韓国の李在明(イ・ジェミョン)さん。
日韓の最大の外交問題だった慰安婦問題は、2015年に両政府が「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したことで外交問題としては終わり、国内問題にシフトしていった。しかし、李氏は城南市の市長をしていたころ、これは間違った合意だから必ず撤回し、“真の解決”をしなければならないと強く主張していた。
そうは言われても、日本は合意にもとづいて、首相が元慰安婦の人たちに心からのお詫びをして、10億円を渡している。すべて受け取った後で合意をひっくり返し、「やり直し」を求めることは、日本の立場では絶対に認められない。李氏は2023年にも、国際機関が安全性を認めた日本の処理水放出を「日本による第2の太平洋戦争」や「汚染水テロ」と非難した。
こんな過激な言動から、李氏は高強度の反日ファイターとして知られていて、彼が韓国のトップになったら、日韓関係は「戦後最悪」と言われた文大統領のような暗黒時代に戻ってしまうのでは? という懸念があったが、今のところそんな気配はない。
先日も、韓国で“極右”と警戒されている高市首相と会って話をすると、「非常に良い印象だった。懸念はすべて消えた」「優れた立派な政治家だ」「頻繁に会いたい」と絶賛し、日韓関係はさらに発展できると明るい展望を示した。
また、李氏はサラリとこう言った。
「一政治家の時と、国家のかじ取りを担う立場では考えや行動が異なるべきだ」
高市首相の柔軟な姿勢を評価しているが、実はこれは、自分のことを指しているかもしれない。
李氏は今年6月に大統領になると、8月には、日本を「とても重要な存在」と明言し、慰安婦合意について「覆すことは望ましくない」と述べた。過去の政権の方針を「屈辱的」と全否定したのに、大統領になったら受け継ぐとアピールしたため、韓国内の慰安婦団体が一斉に反発し、李大統領を非難した。
一方、日本ではこの劇的ビフォー・アフターは驚きをもって受け入れられた。
こんな「君子豹変」の背景には、李政権に対するアメリカの態度があると思われる。
今年8月、アメリカで米韓首脳会談がおこなわれたとき、トランプ大統領が日韓の歴史問題を持ち出し、第1次トランプ政権のころ、韓国側がこの問題に固執したことで、日韓を協力させることに苦労したと不満を述べた。
日本を「偉大な同盟国だ」と持ち上げる一方、李大統領には「あなたたちがまだ慰安婦について考えているからだ。韓国は慰安婦問題に固執していた」と冷たく言って、韓国側をあわてさせる。
アメリカは以前から、日韓関係がうまくいかない大きな理由は、韓国側が歴史問題にこだわっているからだと考えていたが、それを公の場で口にすることはなかったという。
読売新聞の記事(2025/08/27)
米国はかねて歴史問題で対立する日韓の和解を促してきたが、米大統領が公開の場で韓国大統領に向けて踏み込んだ発言を浴びせるのは極めて異例だ。
韓国にトランプ氏苦言「慰安婦問題に固執」…李氏は「日韓首脳会談で障害取り除かれた」
トランプ氏に問い詰められる形となった李氏は、(当時の)石破首相と会談をして「多くの障害が取り除かれた」と説明し、トランプ氏の懸念を打ち消そうとしたが成功したかは不明。弁明を聞いたトランプ氏は李氏にこう言った。
「あなたは日本と素晴らしい関係を築けるだろう」
李氏にとってはこれはトランプ政権の期待と同時に、“脅し”でもある。以前から、水面下でそんなシグナルが韓国側に送られていて、トランプ氏のはっきりした性格もあって今回の会談で表面化したのだろう。
各国メディアがいるところで、「日韓関係がうまくいかないのは、韓国側が歴史問題に固執しているからだ」と指摘されるのは、韓国にとっては公開処刑のようなもの。
もう李大統領は慰安婦合意について「間違った合意で必ず撤回しなければならない」と言い出すことはできない。
とはいえ、それは“今のところは”だ。季節が変わると豹の毛が新しくなるように、状況の変化に応じて、李大統領がまた手のひら返しをする可能性は十分ある。日本としては、アメリカと仲良くすることが「豹変防止」に有効だ。

コメント
コメント一覧 (2件)
>>状況の変化に応じて、李大統領がまた手のひら返しをする可能性は十分ある。=== 正解です。
「私が朴槿恵大統領を尊敬すると言ったら、人々は本当に私が朴大統領を尊敬していると思いました(実際には尊敬していないという意味)。」
これが李さんの素顔です。 今は自分の必要によって日本と親交を維持しているように見えるだけです。
李大統領は「現実的」でその時の利益を優先するので、言うことはきっと変わりますね。でも、韓国との関係は大切なので、日本も油断しないで賢く付き合わないといけません。