前回、日本に10年以上住んでいるタイ人女性、メイから聞いた話を記事にした。

今回は彼女の娘を中心に、タイ人の母親としてわが子に伝えたい文化や、学校教育の違いについて書いていく。

ソンクラーンの水かけ祭り
今ではエンタメ化していて、水鉄砲を使った「水かけ遊び」または「水戦争」になっている。
ソンクラーンと「娘への想い」
ーーメイの娘さんは日本で生まれ育って、今は保育園へ通っているんだろ?
じゃあ、中身はすっかり「日本人化」しているんじゃないのか?
メ:どうですかね。とくにそう意識したことはありません。
あの子は納豆は好きで、箸を使って刺身コンニャクを食べて、食事の前後には自然に「いただきます」と「ごちそうさま」を言うくらいです。
ーーそれは日本人の定義を満たしている。もうパーフェクトジャパニーズだ。
でも、タイ人の母親としては、娘にもタイ人らしさやタイの文化を受け継いでほしいと思う?
メ:もちろんです。
彼女の中にはタイ人の血が流れていますから。
ーーじゃあ、さっきの「ブン・カオ・プラダップ・ディン」を家でもするのか?
メ:それはしません。でも、今年タイへ戻ったとき、ちょうど「ソンクラーン」と重なったので、彼女も「水かけ祭り」に参加したんですよ。
ーータイの伝統的な正月のソンクラーンか。
あれを日本で例えるなら、お盆や正月と同じレベルの代表的なタイ文化だよな。

メ:水かけ祭りは国民的な大イベントで、ソンクラーンはタイ文化の象徴なんです。
せっかくの機会だったので、あの子にもこの祭りを体験させてみました。
顔に白い粉(ディンソーポーン)を塗って水鉄砲を持たせて、「外で出会った人に撃ちまくれ!」って言ったんです。

水をかけ合う(撃ち合う)のは、子どもにとってはおもしろいんだろうな。
メ:ええ、娘もすっかり気に入って、「またやりたい!」と言ってくれました。文化を継承させるには、「楽しい遊び」のように感じられるものがいいですね。
ーー親の熱意だけじゃ、子どもはついてこないって。
メ:そうなんですよ。
それと、水かけ祭りでの様子を見て、彼女にはバイオハザードの才能があると気づいたんです。
ーー別の才能を育てたほうがいいな。

ひざまずいて仏像(もしくは神像)に祈るタイ人。
タイの社会には、年長者や僧侶、国王などに敬意をしめす文化が根づいている。
意外と日本と似ているタイの教育事情
ーーメイの娘さんはもうすぐ小学生になるんだろ。
タイ人の親としては日本の教育事情も気になるよな。
日本の学校はルールに厳しいから、自由でめんどくさがりのタイ人には合っていないかもしれないぞ。
メ:ものすごい独断と偏見ですね。タイ国民を代表して、わたしがあなたを訴えたいくらいです。
まぁタイ人は自由が好きで、細かいルールが嫌いなのは事実ですけどね。
ーー合ってんじゃねえか。
その「マイペンライ(大丈夫、何とかなる)」気質は、タイ人と日本人の大きな違いだよ。

メ:それは否定しませんけど、タイでも校則は厳格なんですよ。
たとえば髪型ですが、ちょっと前までは男子は短髪、女子はおかっぱで、髪が首にかからない長さと超厳しく決められていました。
ーーつまり、女子生徒は「ワカメちゃん」か「マルちゃん」で、男子生徒は「タラちゃん」みたいなものか。
メ:それなら、タイの価値観に合っているのでセーフです。
わたしが学校へ通っていたころは、学校の入口で先生がハサミを持って立っていて、髪の長い生徒を見つけると、なんとその場で捕まえて「ジョキン」と切っていたんです。
ーー日本でも、校則に違反した生徒の髪を校内で切る先生がいたけど、「校門の前で」ってのは聞いたことがない。
校門に、刃物を持った大人が立ってるのを想像するとゾッとするな。
メ:ええ、朝からホラーな光景でしたよ。
ーー日本の高校では、教師が閉める校門に高校生の頭が挟まれて死亡する事件が起きたけどな。
メ:…それは次元が違いすぎて、何もツッコめないじゃないですか。

メ:いま考えると、あれは本当にやり過ぎでした。
2025年に裁判所が「それは個人の自由を侵害して、社会の変化に合っていないぞ」と判断して、やっとこの規則は撤廃されたんですよ。
ーーそれって去年の話じゃん!
ポニーテールも禁止とか、タイの校則は日本よりブラックかもな。
メ:タイの文化では、年長者や教師がとても尊敬されています。
だから学校でも教師の指示に従う傾向がとても強くて、授業でも教えられた内容をただそのまま暗記することが多かったんです。
ーー日本の学校教育も、そんな「トップダウン形式」なところがある。
メ:ですが、そんな「詰め込み教育」には批判の声が上がっていて、最近では子どもの考えや意思決定を尊重する教育へと変わりつつあるんです。
ーー驚いた。日本の話を聞いているみたいだ。
タイの教育で、上下関係とか集団の規律とかがそんなに重視されているとは思わなかった。
メ:ですから、日本の学校についてはあまり心配していないのですよ。

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