言葉でわかる日中韓の関係!中国/韓国人が使う日本語、日本人が使う中国語。

 

前回、韓国KBS放送の「日本語は放送禁止ですっ!」ってことを書いた。

その記事を読んでいない人のために簡単に説明させてほしい。

韓国のアイドルが歌う曲のなかに日本語の歌詞があった、というこ理由でKBSはその歌の放送禁止を決めた。

韓国の地上波では、日本語の歌やドラマを放送することが禁止されている。
この歌手の曲はそれにひっかかってしまった。

具体的には、歌詞に「ピカポンチョク」という言葉があって、この「ピカ」が日本語だから韓国では放送できないらしい。

 

でも、そんな韓国の事情を知らない日本人は多い。
SNSにはこんなコメントが書きこまれていた。

「なぜ日本語を使うと放送禁止なんだ?w」
「だれか説明してくれ 日本語が放送禁止って凄いな 」
「日本でハングル禁止にしたらヘイトだ差別だって大騒ぎするだろw」
「一方日本のNHKは韓国の時代劇を大量に流したw」

くわしいことはこの記事をどうぞ↓

韓国テレビ局の「日本語は禁止!」←韓国人と日本人の感想は?

 

街のラーメン屋では日本語OKなのにね。
「アオリの神隠し」という店名は、日本人からしたら何の店かわからない。

 

上のニュースに対して、こんなコメントもあった。

「大統領は使用禁止な」

この意味がわかりますか?

この「大統領」という言葉は日本語なんです。
今の韓国では、テレビや新聞で「大統領」という言葉をよく使っている。

地上波で日本語の歌やドラマを流すのはダメ。
でも、ニュースで「大統領」という日本語はバンバン使える。

日本人からしたら、ちょっと不思議な感じがしないでもないけど、これが韓国の日常だ。

 

でも、実は「大統領」だけではない。
韓国語のなかに、日本語由来の言葉は他にもたくさんある。

今回は、言葉からわかる日中韓の関係について書いていきたい。
今の中国人や韓国人が使っている言葉のなかには、日本語由来の言葉がたくさんある。
日本人が使っている言葉のなかにも、中国語由来の言葉は多い。

 

日本は幕末に、‘鎖国’をやめて外国との交流を始めた。

そのときに、たくさんの言葉が日本に入って来る。
幕末と明治時代、日本人はそんな外来語を次つぎと日本語にしていった。

今の日本人が使っている言葉のなかに、このときに生まれた日本語がたくさんある。
「漢字と日本人 (高島俊男)」という本を見ると、ざっとこんな感じ。

政府、政治、裁判、建築、交通、公務員、選挙、会社、銀行、不動産、機械、経理、道路、鉄道、自動車、自転車、運動、体育、体操、陸上、野球

幕末・明治に翻訳した日本語は韓国にも伝わった。

その具体的な例として、ウィキペディアにはこんな言葉が紹介されている。

家族、注意、請願、交通、博士、倫理、想像、文明、芸術、古典、講義、医学、衛生、封建、作用、典型、抽象、哲学など

言語・単語

このとき日本人が翻訳した言葉が韓国や中国へ伝わって、今でも中韓で使われている。

こうした日本語は、今では韓国や中国の社会にすっかり溶け込んでいる。
韓国人や中国人でも、何が日本語由来の言葉かわからないほど。

 

韓国語の「大統領」もその1つ。

これは英語の「President(プレジデント)」を日本人が訳した言葉。

幕末、ペリーが乗った黒船が日本にやってきて開国をせまる。
このときペリーから手紙を受け取った幕府の役人は困ってしまう。

手紙の中にある「President」という言葉を、どんな日本語にしていいのかがわからなかったから。

江戸時代の日本には「President」に相当する日本語がなかったからムリもない。

それでいろいろと話し合って、アメリカの大統領は町人出身だから、町人のトップとして「棟梁(大工のかしら)」になり、それからPresidentを「大統領」と訳したという。

くわしいことは日経新聞のコラムをご覧ください。(2012/11/6)

もっとも米国のトップに対して「大工のかしら」とそのまま呼ぶのはどうかということで、「棟梁」を「統領」に置き換え、さらに日本の将軍と釣り合うように「大」の文字を冠しました。こうして「大統領」という呼び方が生まれたようです。

「大統領」の語源は大工の棟梁 米国トップの訳語の秘密

 

「政府」や「政治」という言葉は日本語だけど、「内閣」や「首相」という言葉は中国語だ。

「内閣」という言葉は中国の明の時代に、宰相(さいしょう)がいた役所のことをさした。
明といえば足利義満の日明貿易で有名ですね。
これの内閣は次の清の時代まで続く。

日本では明治18年(1885)に、太政官制を廃止してこの内閣を設置した。
英語の「Cabinet」を日本語に訳したのがこの「内閣」になる。

明清時代の内閣についてはこちらのサイトをどうぞ↓

内閣(中国)

 

日本語を勉強している中国人がこのことを知って驚いていた。

「『内閣』って、明の時代の古い中国語ですよ!日本では、今でもそんな言葉を使っているんですね。本当にビックリしました」

 

漢字で「コカコーラ」と書いてある。

 

「首相」という言葉も中国語。
この言葉はかなり古い。
宋の時代からあるらしい。

宋といえば、日本の平安・鎌倉時代にあたる。
この時に中国から日本にお茶が伝わった。

これはウィクショナリーの文をそのままのせてしまう。

首席・首位にあるつかさ・主任者(相。大臣など)の意。中国で宋代には見られる言葉。
宋史「韓琦爲首相、法令典故問曾公亮、文學之事、問歐陽修、三人同心輔政」但しここでは同列の宰輔の職(宰相)の中の首席者の意。

首相

 

ちなみに日本で首相のことを「内閣総理大臣」ともいう。
この理由について、ウィキペディアにこうある。

内閣制度確立以後、それまで「卿」と呼ばれていた各省のトップは、「大臣」となる。「大臣」の唐名である「丞相」「相国」から、大臣の略称には「相」の字が用いられるようになる。内閣総理大臣は「首相」、その他の国務大臣は「外相」「蔵相」などと呼ばれる。なお、内大臣の略称は「内府」であり、「内相」は内務大臣の略称である。

内閣の大臣

 

おもしろいのは内閣官房の「官房」という言葉だ。

清の時代、官房とは「便器(トイレ)」の意味だった。

サーチナの記事から。

紫禁城にはまさしく「トイレ」というような場所はなく、各宮殿には匂いを消すための特殊な香灰が入った便器が配備されていたと説明した。そして、その便器の名前が「官房」であったことを伝えている。

日本の閣僚ポスト名、中国語では「トイレ大臣」

中国語の解釈によれば、菅官房長官は国会のトイレを管理する人になるらしい。

 

 

内閣・首相・官房など、今の日本人が使っている言葉には中国語由来の言葉がたくさんある。

今の韓国や中国にも、日本語由来の言葉がたくさんある。
日本語由来の言葉を使わなかったら、韓国や中国で新聞記事なんて書けないだろう。

 

日本語の影響が一番強く見られる言葉は、「中華人民共和国」だ。

「中華人民共和国」の70%は日本語だったりする。
そのくわしい内容はこの記事をどうぞ↓

「中華人民共和国」の7割は日本語。日本から伝わった言葉とは?

韓国風の表現でいえば、日中韓は「永遠の隣国」だ。
言葉だけをみても、昔からいろいろな交流があったことがわかりますね。

 

おまけ

明清時代の街並みが残る中国の「鳳凰」というところ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。