【韓国・竜山の歴史】中→日→米軍の基地、東京にかわる首都

 

韓国の首都ソウルの南部に竜山区という場所がある。

いまは知らんけど10年ぐらい前に行ったとき、ここは韓国でも有名な電気屋街で、たしかガイドブックには「ソウルの秋葉原」なんて説明があった。
ここでカメラを買って「たしかに安い!」と思ったのだけど、ソウル在住の韓国人に話すと「竜山はインチキくさいから、わたしなら買いませんね」と冷たく言われた。

日本人のソウル観光では、竜山区の北にある「Nソウルタワー」に行って夜景を見るのがお約束。

 

 

現在の韓国大統領府のある鍾路(チョンノ)区は竜山のすぐ後ろだから、ここを敵軍に突破されたらもうあとはない。
ソウルは間違いなく占領されて韓国は滅亡する。
まぁどっかに亡命政府ができるだろうけど。

 

 

電気街の竜山の歴史をひもとくと、ここはむかしから軍隊と深くかかわってきた。
13世紀の高麗時代にはモンゴル軍がここを兵站基地として利用したというし、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際は日本軍がこのあたりを根拠地にしたといわれる。

そんな竜山にはいま米軍基地があって、米韓の話し合いの結果、このたび米軍基地の一部が韓国に返還された。ということだけなら「で?」って感じだけど、これは138年ぶりのことらしい。

朝鮮日報の記事(2020/12/12)

竜山基地、138年ぶりに返還

つまり韓国は竜山のこのエリアを1882年(明治15年)に手放して、それからずっと外国が“支配”していたのだ。
1882年にソウルの朝鮮人兵士と日本軍が衝突した壬午事変(じんごじへん)がぼっ発すると、袁世凱率いる中国(清)軍が朝鮮半島にやって来て龍山に駐留。
それから2020年までずっと、ここには外国軍が駐留することになる。

中国の次にやって来たのは日本。
そのことは朝鮮日報の記事から抜き出そう。

その後、清日戦争、露日戦争で勝利した日本がこの地を占領した。日帝強占期直前の1908年には、後に第2代朝鮮総督となる長谷川好道が日本軍司令部を建設した。日本は竜山に朝鮮総督の官邸も建てた。1945年の光復(日本による植民地支配からの解放)後には米軍が駐屯した。

 

「日本がこの地を占領した」と書いてくれるけど、1904年に日露戦争が起きると、日本軍は龍山の土地を買い上げてそこに兵営を置いたのだ。
だから武力でもって力づくで奪ったのではなく、合法的に手に入れた。もちろんそれが良いこととは言わないけど。

日本の統治時代、龍山基地は陸軍の駐屯地となり、朝鮮軍司令部などが置かれる重要な拠点となる。
でも1945年に日本がアメリカに降伏して竜山から撤退すると、次のこの地の“主人”となったアメリカがここを基地とした。
そのあと朝鮮戦争の混乱を経て、現在では在韓米軍司令部が置かれている。

中国、日本、アメリカが次つぎやって来て竜山にとっては、「問おう。あなたがわたしのマスターか」という状態がずっとつづいたけれど、ようやくその一部が138年ぶりに本来の主の元に戻った。
韓国政府は竜山基地を「竜山公園」にする予定らしい。

 

竜山の風景

 

話はがらりと変わって、1923(大正12)年9月1日に関東でマグニチュード7.9の巨大地震が発生する。

この関東大震災によって10万人以上の死者・行方不明者がでた。

 

手前が築地で奥が銀座。
関東大震災は「世界史的な大事件」と海外で報じられた。

 

画像は「NHK 映像の世紀 JAPAN」のキャプチャー

 

これは当時、アメリカ人記者が記録した震災直後の様子。

「このような大災害に対して、東京が秩序正しく整然としていることは実に驚くばかりです。警官はひたすら市民の救護に全力をつくしています。ほとんど警察がない状態なのに、いまわしい行動もありません」

「NHK 映像の世紀 JAPAN」から

 

関東大震災で東京は壊滅的なダメージを受けた。
地震大国の日本でこのクラスの地震がまた起こる可能性は十分あるから、日本政府は首都の移転を考え始める。

その候補地にあがったのが兵庫県と八王子と、それと韓国の竜山。

国土交通省のホームページにそのことが書いてある。

この意見書案の中では、東京が震災や防空対策の上で首都として不適格とした上で、ソウル南方の竜山、兵庫県加古川、東京の八王子を具体的な移転先としてあげている。

東京遷都の経緯及びその後の首都機能移転論等

 

でも結局、大正天皇の判断で遷都は実現せず、日本の首都は東京のまま現在にいたる。
日本の首都が竜山になっていたら、いまごろどうなっていたことやら。
この話は韓国人の方が驚くかもしれない。

 

おまけに書くと明治から平成までの間で、一度だけ首都が東京以外に移ったことがある。
そのことはこの記事をどうぞ。

1894年、広島が日本の首都になる。その背景や理由とは?

もひとつおまけを書くと、朝鮮戦争のときに北朝鮮軍にソウルを占領されたあと、李承晩大統領が山口県に亡命政府をつくろうと考え日本に受け入れを要請した。
山口はパニックになったはずだ。

 

 

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2 件のコメント

  • > 朝鮮戦争のときに北朝鮮軍にソウルを占領されたあと、李承晩大統領が山口県に亡命政府をつくろうと考えて日本に要請をそれを要請した。(改行)山口はパニックになったはずだ。

    ???
    いまいち、意味不明なのですが。「日本に要請をそれを要請した」とは?
    李承晩が山口県内に亡命政府の設立を日本に要請し、日本がそれを『了承した』ってことですか?
    もしもそうなら、山口県の人がパニックになるのも理解できますけど・・・。そんなはずはないと思いますが。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。