【科学＜デマ】日本の処理水放出→韓国で塩の買い占め始める

悪魔と契約し、魔術を手に入れた魔女が人や家畜を殺す。

そんなふうに考えていた時代がヨーロッパにもありました。
無実の人間を魔女とでっち上げて、挙句の上に生きたまま焼くという蛮行をおこなっていた。という話を前回書いたのですよ。

さすがに21世紀のいま、こんな迷信で数万人が殺されるという惨劇が起こることはない。が科学を無視して想像上の恐怖に支配され、まったく合理的ではなく、時には「アホか…」としか思えない行動に走る現象は世界中である。

日本政府が福島原発の汚染水から放射性物質を取り除いて処理水にし、２年後から海に流すと発表すると、太平洋側と反対にある韓国で大騒ぎとなった。
処理水にするとしても放射性物質を完全になくすことはできないし、放射線はたしかに危険。
放射線を浴びる（＝被ばくする）と白血球が減少し、骨髄障害で死亡することもあるのだから。

それは事実だが、現実を見てみよう知ってみよう。
まず地球上に住む人間は、みんないつも放射線を浴びているのだ。

環境省が公開したデータによると、大気や大地などから１年間に受ける日本人の平均被ばく線量は2.1ミリシーベルトで、世界平均の2.4シーベルトよりも少ない。（推定値）
これに医療被ばくを加えると日本人は年間5.98ミ、世界平均なら３ミリシーベルトで日本人は倍になる。
医療被ばくが世界では0.6、日本では3.87ミリシーベルトと大きな差があるのは、日本人は病院でレントゲン撮影などを行う機会が多いから。

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構（ながっ）によると、１回のCT検査で５～30ミリシーベルト、胸部X線撮影なら0.06ミリシーベルト被ばくする。

CT検査など医療被ばくに関するQ&A

放射線（放射性物質）は人体に悪影響を及ぼすが、一番大事なことはその量。
地球で生きていれば自然に被ばくしているし、たとえ30ミリシーベルトでも、検査を受けて体の異常を早期に発見できるメリットの方がずっと大きい。
だから少量の被ばくなら、常識的には問題ないと言える。むしろ検査を受けないとか、レントゲン撮影を拒否するほうが危ない。
日本人が医療において世界平均の６倍以上の放射線を浴びているのは、結果的にはそのほうが”安全”と考えられているからだ。

では、福島原発の処理水にはどのぐらいの放射線量があるのか？

結露から言えば、国際基準以下のとんでもない微量で、この海洋放出による人体への影響はゼロではないとしても「問題ない」と言っていいレベル。
国会議員の青山繁晴氏が言うには、韓国の月城原発が海洋放出している処理水の100分の1ほどしかない。

その処理水を２年後から流す予定なのに、韓国では（一部だと思うが）、塩の買い占めが起こるパニック状態が発生した。

レコードチャイナの記事（2021年5月11日）

ある店の店主は「最近は主婦たちが先を争うように塩を買っていて、何度も在庫がなくなった。メーカーへの注文が殺到しているので入荷するのも大変」と話した。

「日本の処理水で汚染される！」、韓国で塩の買い占め＝わずか1カ月で価格2倍に急騰―中国メディア

日本の海洋放出について韓国メディアは大げさや誇張を超えて、もはや誤報と言っていいムゴイ報道をおこなった。

中央日報日本語版の記事（2021.04.10）

日本、結局は海に汚染水放流へ…恐怖広がる韓国

ハンギョレ新聞の記事（2021-04-13）

「日本の福島原発放射能汚染水放流は“核テロ”…撤回せよ」

これが核テロと言うのなら、月城原発がしていることは何なのか。

韓国では具体的なデータより不安が先走って、国民が塩の買い占めを行った結果、卸売価格はわずか１カ月で2倍にまで上昇。
キムチ作りでは大量の塩を使うため、このままの状態が続けばキムチメーカーは「キムチの値上げも不可避」と言う。

韓国ウォッチャーの日本人でも、この事態は予想できなかったようでネット掲示板には驚きが広がっている。

・日本産の塩、輸出してあげれば
・えぇ?まじで言ってるの?
・攻撃してるつもりで自縄自縛
・自分とこの原発垂れ流しの数値知ってるの？
・さすがにネタ報道じゃないの？

福島原発の処理水放出でもっとも影響を受けるのは日本人なのに、日本でこんなパニックはない。
月城原発は福島原発の100倍以上も危険な”汚染水”を流しているのに、それに対する恐怖はまったく広がらない。
この「選択的恐怖」は科学を無視した反日の問題だからだ。
メディアや政治家が科学的データを無視して国民感情を刺激し、不安をあおるようなことを言うからこうなった。
ちなみに韓国原子力委員会は日本の対応を問題視していない。
でも社会では、恐怖を作り上げてそれを流布する人がいるから国民がパニックになる。処理水ではなくデマのほうが有害で危険。

魔女狩りと内容とレベルは違うけれど、現代の人間でも、恐怖にかられると合理的な行動ができなくなってしまうのだ。
ウワサによる物の買い占めは昨年の日本でも起きたし、今後は「福島の魚介類は危険」という風評被害も考えられる。
隣国の塩の買い占め騒動を参考（横目）に、科学がデマに負けないよう十分気をつけたい。