【日本の処理水放出】韓国で言う“核戦争”と科学との圧倒的な差

 

これはある意味、隣国さんに感謝しないといけない。

日本政府が福島原発から出る、放射性物質をふくむ汚染水を処理水に変えて海に流すと発表すると、韓国では政治家やメディア、市民団体が怒り大騒ぎとなった。
これまで何度も書いていることなんだが、この日本の対応は国際基準を満たしたもので、国際原子力機関(IAEA)も問題はないと太鼓判を押している。
アメリカも日本支持を表明した。

それでも韓国では、「日本が放射能汚染水を流し、わが国の国民や環境に深刻なダメージを与え、水産業に深刻な被害を出す」と主張しはじめた。
ここまでは災いだ。

でも、それってホント?

時事通信社が公開している 放射性物質、浴びたらどうする? によると、放射線は自然界に存在しているから、地球上に住む人間は何もしなくても年間2.4ミリシーベルトほど被ばくしている。
しかもこれは世界平均で、日本人が1年間で浴びる放射線量は約2.1ミリシーベルトだ。
まったく被ばくしないほうが健康に良いことは言うまでもないが、そんなことは現実的にできるわけがなく、人類は自然被ばくからは逃げられない。
でも、最も重要なことはその量。

たとえば一度に7000~1万ミリシーベルトの放射線量を浴びるとまず間違いなく死亡する。
胃のエックス線集団検診なら1回で0.6、胸のX線検査なら0.05ミリシーベルト被ばくするし、東京~ニューヨークを飛行機で往復すると0.2ミリシーベルトの放射線を浴びる。

知らない間に日々これぐらいは被ばくしているという事実を、今回韓国が騒ぎ出して自分で調べて初めて知った。これは韓国さんのおかげと言っていい。
恐ろしいのは放射性物質そのものではなく、人体が浴びる放射線の量だ。
東京~ニューヨーク間と同じぐらいの距離を1か月で何度も飛んでいる外交官やビジネスパーソンなんて、世界には山ほどいる。

それに対して、福島原発の処理水を1年ですべて放出したとしても、その被ばく線量は0・052~0・62マイクロシーベルトでしかない。
日本政府はそれを数十年かけて流す予定だから、実際にはこれよりもさらに安全になる。
これだといったい何年、何十年たてば人は、東京~NYのフライトに相当する放射線量を浴びるのか。
福島の反対側にいる韓国の人たちは、日本人よりもっと安心していいはずだ。

安全処理をおこなわないで、放射能汚染水をそのまま海に放出するのなら、韓国人より先に日本人が日本政府をぶったたくはず。
日本は2年後に処理水を流す予定で、韓国ではいま月城原発がそれを海に流している。しかもこの処理水のほうが、福島原発の処理水よりも放射線量が高いのだ。

 

そんな科学より、政治家やメディアが国民の感情を刺激し、繰り返し恐怖をあおるから、こんな過激な団体がでてきた。

中央日報日本語版の記事(2021.04.20)

韓国忠南地域漁民「核攻撃のような破滅的行動」…日本糾弾大会開催

忠南(チュンナム)地域の水産業の団体が「日本糾弾決意大会」を開いてこう強調。

「原発汚染水海洋放出決定を韓国国民、全世界人類に対する核攻撃と同じ破滅的行為と規定する」
「日本の呆れるような決定は到底受け入れることはできない」
「危機に直面した漁民は水産業保護と生計維持のために最後まで闘争する」

日本のせいで韓国の水産業は「壊滅の可能性」があるため、日本政府には「水産業従事者の生存と人類の生命を脅かすような汚染水放出決定」をすぐ撤回するよう要求したという。

忠南のヤン・スンジョ知事は、

「海はどこか一つの国の所有ではないが、日本は世界と人類共通の常識を破った」

と怒り、日本に「戦っていく」と宣言する。

これはキム・ジチョル教育長のことば。

「原発汚染水放出を決めた日本政府の利己的かつ厚顔無恥な態度には強力な対応が必要だ」

そして忠南道議会は「われわれすべての生命と安全を脅かす無慈悲な行動」と日本を批判する。

 

だが待ってほしい。
日本の処理水放出については韓国の原子力安全委員会が調査をおこない、国民や環境に「問題はない」と結論を出している。

聯合ニュースの記事(2021.04.15)

専門家懇談会の内容を引用したもので、「汚染水を浄化する日本の多核種除去設備(ALPS)の性能に問題はない」とも結論付けた。

汚染水の海洋放出 「科学的に問題ない」=韓国政府報告書

なんか日本を信用してくれちゃってる?

 

韓国政府の報告書とまったく逆のことを、知事をはじめとする政治家や市民団体が主張しているというデタラメっぷり。

「韓国国民や人類に対する核攻撃と同じ破滅的行為」、「日本は世界と人類共通の常識を破った」という恐怖の実態は、まず間違いなく胸部X線検査よりも小さい。
韓国の水産業を「壊滅」させるとしたら、科学を無視した大げさな言動で消費者の不安をあおり、自分たちで風評被害をつくり出すことが原因だろう。
「われわれすべての生命と安全を脅かす無慈悲な行動」にホンキで反対するのなら、まずは月城原発の処理水放出を止めさせるべき。

 

日本のネットでは「韓国の騒ぎのおかげで、ベクレルとシーベルトの違いがわかった」という人もいたから、これを機会に正しい理解を深めた人も多いのでは?
日本でも「放射能汚染水」と恐怖をあおる人や勢力がいる。
でも、韓国のような社会的なパニックや怒りは見られない。
デマより科学、感情より事実を重視をする人が多いから、誰かがフエをふいても踊り出す人はいないのだ。
残念ながらゼロではないが。

 

 

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2 件のコメント

  • 科学的根拠に基づく考え方の方が説得力があるのはもちろんその通りなのですが。
    でも、科学だって間違っている場合とか、誰かが悪用するためにわざと誤情報を流したりとか、そういう場合もありますからね。油断せず常に関心を保って、必要に応じて自ら調べて勉強する姿勢を捨てるべきではないと思います。科学者の言うことを採用するかしないか、最終的に判断するのは自分自身です。
    たとえば私も昔は、「日本の原子力発電所が事故を起こして爆発・崩壊するなんて、絶対にあり得ない」と考えていました。でも今では、その思い上がりと軽率さを恥じています。

    また昔と違い、現代は勉強とコミュニケーションのツールに事欠きません。
    ネットの世界があるからです。スマホなんて、誰もが掌の上に「大百科事典」を常時持ち歩いてしているようなものです。ただそれも、どの情報が正確であるかは自分自身が判断しなくちゃならない。
    「人間は考える葦である」べきなのは、昔も今も変わりません。

  • > 韓国政府の報告書とまったく逆のことを、知事をはじめとする政治家や市民団体が主張しているというデタラメっぷり。

    それどころか、最近では、かつて政府や研究機関が発表した「福島原発からの処理水放出は無害」という論文・報告書の類が、次から次へと消されつつあるそうですよ。
    https://sincereleeblog.com/2021/05/18/kesekakusemoyase/
    こういうのって、「焚書坑儒」の一種なんでしょうね。彼の国は一体いつの時代なのか。

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