【アメリカの悪夢】アフガンで、”サイゴン陥落”を再現するか?

 

アフガン、陥落したってよ。
国際テロ組織にも指定されている反政府勢力「タリバーン」によって、アフガニスタンの主要都市がつぎつぎと制圧されていき、ついに首都カブールの四方が囲まれた。
と思ったら大統領は海外に逃げて、アフガニスタンはあっという間にタリバーンの手中におちた。

このニュースはあまりに衝撃的で「『タリバーン、大統領府を掌握』が『大阪府を掌握』に見えた」とネットに書き込む日本人もいたほど。

この事態に「頭がどうにかなりそうだった…。衝撃だとかショックだとか、そんなチャチなもんじゃねえ」というほどの大ダメージを受けたのが超大国アメリカ。
2001年の同時多発テロ事件から米軍はタリバーンとの戦闘をつづけていて、20年近くになる「アメリカ史上、最も長い戦争」を終わらせるために、アメリカはアフガニスタンからの撤退をきめ、その準備を進めているところだった。
(撤退が一部で始まっていたかもしれない。)

「タリバーンの支配」を否定していたバイデン政権の構想は結局ただのファンタジーで、アメリカがずっと支援していた政権はあっという間に崩壊しトップは外国へ逃げ出した。

こうなると今度は、カブールにいるアメリカ大使館の職員らを安全に脱出させないといけなくなる。タリバーンに捕まったら、首と胴体が離れてしまうことになりかねないから。
大使館に掲げられた米国旗はすでになく、機密書類は処分されて、いま職員はカブールの国際空港にいてそこで大使館業務をしているという。
これらの人の安全を確保するため、アメリカは6000人規模の米兵の配置をきめた。

大混乱におちいったアメリカを見て、世界中の人の頭に浮かんだのはあの悪夢だ。

朝日新聞の記事(8/16)

米軍アフガニスタン撤退、蘇るサイゴン陥落 再び敗走の危機

ベトナム戦争での敗北が決定的になった46年前、南ベトナムの首都サイゴン(現ホーチミン市)に北ベトナム軍が近づいてきたとき、米大使館の職員や南ベトナムの政府関係者、市民などが半狂乱になって逃げだした。

サイゴンの沖合いに待機する数隻のアメリカ海軍の空母や大型艦艇に向けて南ベトナム軍や米軍のヘリコプターや軍用機、小船などで必死の脱出を続けた。

ベトナム戦争・サイゴン撤退作戦

 

北ベトナム軍に捕まえるというのは、そのまま死刑宣告をされるようなもの。
必死にならないわけがない。
ちなみにこの直前、米国大使館では機密文書が処分されて焼却炉からは24時間、煙が上がりつづけたという。

 

脱出に成功して、米空母ミッドウェイに到着した南ベトナムの人たち

 

アメリカの敗北を象徴する「サイゴン陥落」をカブールでも再現してしまうのか。
先ほどの朝日新聞の記事で1975年のサイゴンにいて、必死の撤退劇を目撃した米海兵隊員はこう言う。

「ただただ、混乱していた。世界の終わりのようだった」
「いまのアフガン情勢は、ちょうどサイゴンが陥落する直前のようだ」
「カブールは陥落する。その時、サイゴンでの失敗を繰り返して欲しくないと願っている」

 

いまのアフガニスタンの状況はこのときの悪夢とそっくり。
だから米CNNは、米軍のヘリがカブールの米大使館から職員を運ぶ映像と、サイゴン陥落時に米軍ヘリが大使館から避難させる写真を比較するように放送した。
たしかにアメリカはアフガンから撤退するが、それは失敗でもましてや敗北ではないと主張する米政府は、ベトナム戦争末期といまを重ねる動きを全力で排除する。

時事通信の記事(2021年08月16日)

カブール陥落「サイゴンと違う」 アフガン政府軍の能力過信―米国務長官

違うかどうかは、あと2,3ヶ月後に振り返ったらすぐ分かる。
個人的にはこれはベトナム戦争の失敗、あの「世界の終わり」の繰り返しと思ってる。
実際カブールの国際空港では脱出を求める人たちが飛行機を取り囲んだため、米軍が威嚇発砲する事態も起きた。
トランプ前大統領は今回の事態でバイデン大統領を非難し辞任を要求する。対してバイデン大統領は、こうなった原因を作ったのはトランプ氏だと逆非難。
こんな緊急時での責任のなすりつけ合いは、これはこれで末期的だ。

 

いまカブールの空港の様子を撮影した動画を見つけたんで、はっときますね。

 

 

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。