「この近くにオイシイ犬肉を出す店があるんですよ。一緒に行きませんか?」
20年以上前に韓国旅行をしていたとき、泊まっていた宿で日本人旅行者からそんなお誘いを受けた。
日本ではできない文化体験に一瞬心が揺れたものの、「今回はいいです。韓国は近いし、いつでも行けますから」と断った。
韓国には犬肉を食べる習慣があって、それに挑戦する日本人もよくいて「思い切って食べてみるとオイシイし、元気が出るんですよ!」と高く評価する人に会ったこともある。
韓国では夏の暑さを乗り切るエネルギーをゲットために、この肉を食べることが多いから、毎年夏になると「いつまでこの伝統を続けていくべきか?」の議論が起こる。
中央日報の記事(2020.07.06)
初伏を控え、大邱(テグ)で「犬肉」論争が再燃した。動物保護団体の会員が大邱(テグ)チルソン市場にある犬肉食堂の廃業を要求したのがきっかけだ。
夏になると再燃する「犬肉」論争…動物団体「店を閉鎖すべき」=韓国
*初伏(しょふく)は中国の五行説に基づいてきめられた日で、日本でいえばウナギを食べる「土用の丑の日」にあたる。
だいたいの傾向では年配の人は犬肉食を支持していて、世界の冷たい目を意識する若い人たちは「ほんとカンベンしてください」とこれを嫌う。
知人の20代の韓国人女性は犬肉食への欧米諸国の激しい拒絶反応や批判を知っているから、「あれは韓国の恥」とまで言う。
まえに韓国観光公社が外国人に向けて、韓国旅行をアピールするこんな動画(Imagine your Korea)を公開した。
寄せられた外国人の反応はさまざま。
I want to visit korea.
(韓国へ行ってたい。)
My daughter is so crazy about everything in Korea.
(娘が韓国のすべてに夢中なんだ。)
と韓国人としては鼻高々な声もあれば、その自慢の鼻をへし折るような反応もアリ。
Where’s the dog burgers?
(犬のハンバーガーはどこだよ?)
WHAT THEY DONT TELL YOU IS THEY ABUSE ANIMALS TOO…..
(彼らが伝えていないのは、彼らが動物を虐待していること。)
若い韓国人はこういう外国人、特に欧米人の見方を知っているから、「国の恥」と犬肉食を支持する年配者と対立する。
*上のビデオで犬肉料理が出てきたら、すべてが破壊される。
韓国旅行でお世話になった日本語ガイド(50代のおっさん)は“推し”の一人で、
「犬肉を食べるのはわが国の文化なんだよ、本格的な夏が始まるまえに、あれを食べるのが昔からの伝統なんだ。外国人がどうこう言うことじゃない!」
なんて力説してた。
まあこれには部分的には賛成で、イルカやクジラを食べる日本の食文化について欧米人が声高に非難するのは余計なお世話じゃ。
犬肉の提供を仕事にしている人はたくさんいて、「国恥!」という批判に対しては4年前、大韓肉犬協会代表理事が抗議集会を開き、
「動物団体の主張は善良な食用犬関係者を愚弄するものだ。この集会は私たちの権利と生業のための闘争だ。犬食肉はわが国固有の文化と伝統だ。動物保護法は悪法」
と熱弁したとハンギョレ新聞の記事にある。(2017.09.23)
犬農業主たち「引き下がるところがないから犬を連れて光化門にきた」
これを保存すべき伝統とするか、恥だからヤメレとするかの議論はいまも熱い。
でも全体的には犬肉食は減少傾向にあって、これを廃止したい文(ムン)大統領がこのまえ「今や犬肉の食用禁止を慎重に検討する時期ではないだろうか」と初めて見解を発表した。
文大統領や韓国政府はこれまで、関連業界の反発を恐れて「中立」の立場を守っていたのに、踏み込んだ発言をして注目が集まった。
朝鮮日報の記事(2021/09/28)
犬肉は夏の滋養食で、毎年夏の伏日(夏場の最も暑い時期)には青瓦台国民請願サイトに賛否両論が飛び交うが、青瓦台と政府は留保の立場を維持してきた。
文大統領「犬肉の食用禁止を検討する時期ではないだろうか」
*青瓦台は韓国大統領府のこと。
でもすぐに炎上したから、「直ちに廃止はない」と火消しを行う。
中央日報の記事(2021.09.29)
文大統領の発言に対し動物保護団体は歓迎の意思を表し、関連業種の従事者は反発した。政界でも賛否両論が続いた。
文大統領が「犬食用禁止の検討を」…大統領府「すぐ施行ということでない」
青瓦台の首席秘書官は「直ちに実行される理由はない」、「時間を置いて落ち着いて準備をし、国民感情と利害当事者の立場まですべて考慮して法律になる事項」とすぐに消火作業に入った。
この様子じゃ、少なくともあと数年はかかりますネ。
文大統領は犬肉の食用禁止をとりあえず言ってみて、世間の反応を見て判断しようとしたけど、国民の反発が予想以上に強くて慌てたのだろう。
記事を見るとK-POPを中心とするK文化のおかげで、国際社会における「大韓民国の国格が急上昇した状況」なのに、この伝統が韓国の国家イメージを引き下げているから政府の悩みは深い。
「若者 vs 年配者」に加えて最近では、「K-POP vs 犬肉食」という新しい対立構造が生まれているらしい。
どっちが勝つのかサッパリわからん。
でもとりあえず、「この近くにオイシイ犬肉を出す店があるんですよ。一緒に行きませんか?」という状況がもうしばらく続くことは確定した。
こちらの記事もどうぞ。
日本人の食文化:江戸は犬肉を、明治はカエル入りカレーを食べていた
韓国人の敵は韓国人!外国人観光客へのぼったくりに大統領も動く
この問題について韓国人の私としては考え方がとても難しいです。
私は犬が好きで、飼ったこともあります。 私が100回夏の甲子園大会を観戦するために大阪を旅行したのも、飼っていた犬があの世に出た悲しみを家族全員が乗り越えるための方便でした。 犬を食べる韓国人の食習慣がとても嫌いで恥ずかしく思います。1988年ソウルオリンピックの時、フランスの女優ブリジット·バルドーは韓国の犬肉を食べる習慣を全世界に知らせ、非難しました。 動物愛好家の彼女としては堪えられなかったでしょう。
その時、韓国からは激しい反発がありました。 世界には猿を食べる民族もあり、馬を食べた民族もあり、おとなしい牛を食べるのはよくないが、犬を食べることだけを非難するのか」と反論した。
伝統的な食習慣はその民族固有の文化なのに、それを一方的に非難してはならないという論調でした。
韓国人のその反論に一理があると思います。
しかし,人と一番近い犬を, 友達のようでいつも歓迎する犬を食べることは未開な行為だと思います. 韓国が世界10大大国に仲間入りした国家なら、もはやこのような習慣は捨てなければならないと思います。
これは韓国の問題ですから、韓国人が決めることですね。
外国人が口をはさむことじゃないです。