人間関係の違い 幕末の武士が驚いたアメリカ人のフレンドリー

3月17日は1860年に、福澤諭吉や勝海舟らを乗せた咸臨丸がサンフランシスコに入港した日。
幕末に突然ペリーが現れて開国を要求すると、日本は渋々それに応じ、1854年に日米和親条約を結び、1858年には日米修好通商条約を締結した。その批准(条約の最終的な確認手続き)。批准はワシントンですることになっていたため、幕府はアメリカへ使節団を派遣することを決めた。
それが万延元年遣米使節だ。

その際、使節団は米海軍のポーハタン号に乗ってアメリカへ行くこととなり、それとは別に、ポーハタン号に事故が起きることなどを考慮し、念のため咸臨丸も出港させることにした。その咸臨丸が太平洋を横断し、1860年3月にサンフランシスコへ到着。
アメリカへ渡った武士は何を感じたのか?

 

15歳の白人少女とツーショットを撮る福沢諭吉

 

幕末の武士にとって印象的だったのは、アメリカ人のフレンドリーさだった。
当時の日本は厳格な封建社会で、主君と家来の関係が強く固定され、立場の違う人に対する言動にはさまざまなルールがあった。当時のアメリカ人がよくやっていた握手のような挨拶なんてありえない。身分の高い最側近の家来でさえ、主君の体に触れるのはとんでもない無礼だったはずだ。厳格な上下関係は日本社会に浸透していて、参勤交代の大名行列が通るとき、町民は道の脇で平伏しなければならなかった。
(日本ではそんな文化が長く続いたせいか、欧米人と付き合いのある人でもハグは苦手という人がいる。)

以前、司馬遼太郎の本で、江戸時代の社会には対等な人間関係は存在せず、「友だち」という概念もなかったということを読んで、意外に思った記憶がある。
そんな日本とは違い、アメリカ社会では上下関係がゆるく、人々は初対面の遣米使節たちにも気さくに話しかけた。
ただ、これには、アメリカ国民のもともとの性格という以外の面もあったと思う。当時は、いま以上に銃をぶっ放すハードルが低かったから、相手に笑顔でフレンドリーに話しかけることで、自分は無害で安全だということをアピールする目的もあったはずだ。

万延元年遣米使節の一人は、アメリカの人たちが自分たちを温かく迎えてくれることに感動し、日本人が持っていた偏見に気づかされ、差別的な思いを改めた。

「一行のほとんど全員はこれまで西洋人を憎んでいた、しかし、今西洋人の態度を理解するに至り、そのような考えが変わった。あたかも西洋人が犬や馬のようであるとして彼らを卑しむことは失礼なことであり、大きな間違いである。」

武士が持っていた西洋人に対するヘイト(憎悪)を、アメリカ人のフレンドリーが破壊した瞬間だ。

ソース:在NY日本国総領事館HPの「遣米使節団 アメリカの本質を理解した日本人」
*リンク切れ

 

咸臨丸を描いた記念切手(1960年発行)

 

遣米使節の一員として渡米し、アメリカの人々や社会について記録した玉蟲 左太夫(たまむし さだゆう)も、『航米日録』で同じことを思った。

ポーハタン号の船上でアメリカ人の船員たちは、船長(最も地位の高い人物)の前でも脱帽するだけで、礼拝(頭を下げること)はしない。水夫が船長を重んじるように見えないし、船長も威張らず、同じ仲間のように接している。
日本人は正反対で礼儀作法がとても厳しく、少しでも地位の高い人物は鬼神のように威厳を見せつけようとし、下の立場の人間を蔑視する。

左太夫はアメリカ人の人間関係を見て、どちらかと言うと、日本の封建的な人間関係を批判的に考えたようだ。
武士の価値観にとって、間違いなく対極にあったのがアメリカ人のフレンドリーだった。

 

 

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • > それが万延元年遣米使節だ。
    その際、使節団は米海軍のポーハタン号に乗ってアメリカへ行くこととなり、それとは別に、ポーハタン号に事故が起きることなどを考え、念のため咸臨丸も出港させることにした。その咸臨丸が太平洋を横断し、1860年3月にサンフランシスコへ到着する。
    その際、使節団は米海軍のポーハタン号に乗ってアメリカへ行くこととなり、それとは別に、ポーハタン号に事故が起きることなどを考慮し、念のため咸臨丸も出港させることにした。その咸臨丸が太平洋を横断し、1860年3月にサンフランシスコへ到着。

    うーん、どうしてこう同じ文章の「繰り返し」ミスが起きるんですかね。他の記事にも色々ありますけど、今回は特にひどい。執筆方法に何かこの種のミスしやすい原因があるとか?

    > 左太夫はアメリカ人の人間関係を見て、どちらかと言うと、日本の封建的な人間関係を批判的に考えたようだ。
    > 武士の価値観にとって、間違いなく対極にあったのがアメリカ人のフレンドリーだった。

    確かに、当時の白人同士の間ではそうだったのでしょうが・・・。
    振り返って現代、アメリカ人でさえ、「白人と黒人」「白人と東洋人」の関係ではほとんどハグの挨拶をしないことに気付きましたか? これ、なかなか難しい問題で、「白人がハグをしようとすると相手が嫌がる」ということもあるからなのです、少なくとも彼らが言うにはそうなんです。
    たとえば日本人同士では、「ハグによる挨拶」なんてほぼあり得ないですよね。それはつまり、日本人は「親しき仲にも礼儀あり」という伝統的慣習を保持しているってことです。その効果の一つとして、「相手が誰でも同じようにある程度は遠ざけているから、特に不仲な関係があっても目立たない」ことがあります。
    まーでもこの辺が、外国人からしてみると、「日本人は友人関係も親族関係も他国に比べて冷たい」と批判されやすいところなんでしょうけど。

  • ご指摘ありがとうございました。
    AIで文章を校正して、それを直しているのですが、元の文章が残っていたようです。
    今後、こんなことがないよう気をつけます。

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