韓国の元大統領が逮捕される理由は、帝王的な力とたかり気質 

 

日本語に由来する韓国語といえば、오뎅(オデン:おでんの意)、가오(カオ:体面)、만땅(マンタン:満タン)といろいろある。
政治について言えば「大統領」もそうだ。

幕末、ペリーからアメリカ大統領の親書をもらった幕府の役人たちは、「President(プレジデント)」という英語を「大統領」と日本語訳した。
最初は「棟梁」という案も出たが、これでは「大工の棟梁」と庶民的になってしまうから、一国の代表で、将軍と対等の地位にある人物を表す言葉としてふさわしくない。
そこで「棟梁」を「統領」に変え、さらに「大」を付けて言葉全体をグレードアップして「大統領」が生まれたとされる。
それが朝鮮半島へ渡り、韓国政治のトップを表す言葉となった。

 

グーグルやヤフーに「韓国大統領」と入力すると、「末路」や「逮捕」といった不吉な関連ワードが出てくるように、日本で韓国の大統領というと、その座を退いた後に悲惨な経験をすることで知られている。
たとえばこんな感じだ。

初代大統領の李承晩(イ・スンマン)は四月革命で国から追い出され、ハワイへ亡命した。
朴正熙(パク・チョンヒ)は側近に暗殺された。
全斗煥(チョン・ドゥファン)は一族の不正蓄財がバレて刑務所に入れられた。
盧泰愚(ノ・テウ)も不正蓄財で刑務所へGO。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)は側近や親族が不正なカネを得ていたため逮捕され、自身も不正資金疑惑で事情聴取を受けた後、「大統領になろうとしたのは間違いだったようだ」と書き残して飛び降り自殺した。
李明博(イ・ミョンバク)氏と朴槿恵(パク・クネ)氏は汚職によって刑務所へぶち込まれた。
*この中で朴氏だけは在任中に違法行為が認められ、大統領の地位を失った。

このほかにも、大統領の身内や側近なども収賄や脱税の容疑で逮捕されている。
韓国大統領の最後は悲惨なことで有名で、日本では『韓国大統領はなぜ悲惨な末路をたどるのか?』という本もある。
この「暗黒ルール」は今もあるらしく、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領にも収賄の容疑が浮上し、検察から事情聴取を受ける可能性が出てきたという。

読売新聞の記事(2024/09/01)

韓国・文在寅前大統領、検察が令状に「収賄の容疑者」と記載…娘の夫の航空会社役員採用巡る疑惑

 

なんで韓国では、大統領が悲惨な末路をたどるのか?
その理由について、3人の韓国人から話を聞いたことがあるので、これからその内容を紹介しよう。

まず彼らが指摘したのは、大統領の「パワー」が強大すぎること。
韓国の大統領は人事と金で大きな権限を持っていて、自分が選んだ人間を政府の官僚や大法院長(最高裁長官)に任命することができるし、政府を代表して予算案を国会に提出することも認められている。
韓国の大統領には権力が集中していることから、日本のメディアは「帝王的」と表現することが多い。
韓国はまだ北朝鮮と「戦争状態」にあるから、緊急事態が起きたらすぐに対応できるように、大統領には大きな権限が与えられているという。

3人が言うには、韓国の大統領はヒトとカネを動かすことができ、悪事を働いても、強大な権力でもみ消すことができると考えているから、不正行為に手を染めてしまう。さらに、大統領に利益(ワイロ)を与え、自分ももうけようとたくらんでいる人間が近づいてくるから、大統領は“闇落ち”しやすい。

 

彼らは大統領の強大な権限のほかにも、韓国人の「悪いクセ」が腐敗の原因にあると言う。
それは、19世紀に朝鮮を旅行したイギリス人女性イザベラ・バードも気づいたことで、彼女は朝鮮人の最大レベルの悪癖として「たかり体質」を挙げ、『朝鮮紀行』にこう書いている。

「何千人もの五体満足な人間が自分たちより暮らし向きのいい親戚や友人にのうのうとたかっている、つまり人の親切につけこんでいるその体質にある。そうすることをなんら恥とはとらえず、それを非難する世論もない。」

当時の朝鮮社会では、ある程度収入のある男は自分の親戚だけでなく、妻の親族や自分の友人なども面倒を見なければいけない状態だったという。
友人たちの話によると、現在の韓国でも血縁関係や人間関係のキズナ強いから、日本人の感覚なら失礼になることでも平気で頼んでくる。
(しかも、おそらく頼み事をする方は「相手がやって当然」と思っているから、恥とは思っていない。断られると「情がない!」と怒り出す。)

バードの指摘した「体質」を現代の韓国に当てはめると、大統領やその周囲にいる人たちに、利益を求めて多くの人がたかってくることになる。
大統領には帝王のような強い権限があり、周囲にいる人間もその「おこぼれ」をもらって小皇帝になるから、そんなような状態がは起こりやすい。
朝鮮日報のコラム『萬物相』で、韓国の大統領経験者やその身内に逮捕者が多い理由としてその問題を指摘している。(2016/11/05)

政治の専門家は「帝王的大統領制」の問題を指摘している。大統領の帝王的な力は、親類・側近が「虎の威を借る」ことを可能にしているという。

「私はこんなことをするため大統領になったわけでは…」

 

ほかにも、韓国社会で成功した人には強い自尊心があるため、その力を誇示したいために、相手の要求をかなえてあげることもあると思われる。
さて、いま崖っぷちにいる文在寅前大統領の「これから」は一体どうなるのか。
「大統領になろうとしたのは間違いだったようだ」と後悔しなければいいのだけれど。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。