日本は1910年から1945年まで朝鮮半島を統治していた。この時代について、日韓で一致しているのは期間くらいなもので、中身に対する認識はまったく違う。
韓国のハンギョレ新聞に寄稿された文章を見てみよう。（2023-04-07）
植民地の近代化（？）、その暴力の歴史
以下の「」の部分は寄稿文にある表現で、この時代の日本に対する韓国側の見方が表れている。
当時、日本は「軍国主義侵略者」であり、「帝国主義の命のために他者の命を踏みにじる蛮勇」をもって、朝鮮に「侵略と略奪」を行った。
日本企業は朝鮮人の土地を奪い、「貧農を土地から追い出した。生産手段を失った農民は小作人や流浪・物乞い、労働者」に転落した。
また、日本は朝鮮の女性たちを「性奴隷」、男性たちを「強制動員」して過酷な条件で働かせた。
こうした残酷な歴史があるため、現在の韓国と日本は「過去の暴力と搾取、収奪に対する真摯な謝罪なくして許しや和解はない」と寄稿文は訴えている。
現代の韓国では、学校の授業でこうした歴史を教えているため、この認識は多くの国民が共有している。
海水浴を楽しむ大勢の釜山市民
しかし、当時の資料を見ると、異なる側面も見えてくる
先日、韓国の大邱（テグ）市が日帝強占期（日本統治時代）の人口や行政、産業に関する情報が載っている「大邱案内（1934年版）」を公開した。
朝鮮日報の記事（2025.02.10）
“대구 더위가 조선 최고”… 1934년 당시 대구 일상 담은 자료 공개
機械翻訳：「大邱の暑さは朝鮮最高」…1934年当時の大邱の日常を収めた資料公開
この資料には以下の内容が書かれている。
・大邱の人口は1906年に約１万2000人だったが、1933年には10万人を超えた。
・大邱のリンゴは代表的な特産物となり、日本だけでなく東南アジアやインドにも輸出されていた。
・1930年代、大邱はとても暑く、夏の暑さは朝鮮で一番だった。そのため「緑化協会」が設立され、全域に常緑樹や観賞用の木が植えられた。
市民の間では、「ある新聞支社長は囲碁が好き」「ある店の息子は学校の野球チームのキャッチャーだ」といった話が交わされており、大邱にはゴルフ場やプールなどがつくられた。
・公会堂（現：大邱コンサートハウス）、朝鮮植山銀行大邱支店（現：大邱近代歴史館）、大邱医学専門学校（現：慶北大学医科大学）、南中百貨店などが建てられた。
この資料の注目ポイントは、朝鮮人も選挙に参加していたこと。
当時、有権者は4064人いて、その内訳は朝鮮人が1446人、日本人は2618人だった。
選挙権は税金をある程度納めている人だけに与えられていたため、当時の有権者数は全体的に少ない。
今でいう市議会には、定員33人のうち朝鮮人の議員が８人いた。
この状況からすると、朝鮮人より日本人が優位だったように見える。しかし、朝鮮王朝末期と同じ時代の日本では、識字率が違っていたから、同列で語ることはできない。それに、21世紀の常識や価値観から、100年前の社会を判断するのは公平性や正確性に欠ける。
同時代の外国と比べるのが適切だ。
フランスやイギリスの植民地となっていたアジアやアフリカの国で、現地の人にも投票権と被選挙権が認められ、実際に立候補し、複数の人が当選したという話は聞いたことがない。
日本が朝鮮に対して侵略と略奪を行い、民衆は奴隷状態にされたという見方と「大邱案内（1934年版）」の内容はかなり違う。「選挙権のある過酷な植民地支配」というのは、外国人には不思議に感じると思う。
最近、韓国の議員が以下の法律の制定を求めたのは、韓国の歴史認識にとって都合の悪いことを言わせないためだろう。
オーマイニュース（25.02.12）
‘일제 식민지배 찬양하면 처벌’ 법안 발의
機械翻訳：「日帝植民地支配を賛美すると処罰」法案を発議
この法案を発議した議員はこう強調する。
日本は大韓帝国の国権を強制的に侵奪し、男性を強制徴用して働かせ、女性には性的虐待を加えたりして、韓国民族を抑圧・収奪し、反人倫的な戦争犯罪を犯した。
その歴史的事実を否定したり美化したり、または虚偽の主張をすることは、遺族の名誉を毀損（きそん）し、戦争犯罪被害者の人権と尊厳を侵害する行為になる。これは憲法と国家のアイデンティティを否定する深刻な問題だ。
韓国の伝統と民族の精気を守り、正しい歴史認識を植え付けるきっかけにするためにこの法案が必要である。
これはつまり、自分たちにとって都合の悪い主張をすれば法的に処罰するぞという脅しで、表現の自由に対する挑戦だ。
日本政府は当時の朝鮮人男性が強制連行され、女性は性奴隷にされたという説を明確に否定している。この法案が成立すれば、こうした主張をした人は警察に逮捕されてしまう。
「（自分たちの考える）正しい歴史認識を否定するな」というのは自由民主主義を否定する行為で、独裁国家でよくこういうことが起こる。
しかし、この法案にはすでに26人の国会議員が同意している。
いま韓国内には、客観的な根拠をもとに日本政府と同じ主張をする人たちがいる。こうした議員はそれに反論できないから、法律を使って黙らせたいのだろう。日本のネットでいう「事実陳列罪」だ。
上の記事を読んでも、「歴史的事実のわい曲」や「日本の統治を称賛する行為」の中身がさっぱり分からない。このあたりの基準はきっと「不快に感じる人がいたら」といった主観的であいまいなものだから、その時代にゴルフ場やプールなどがつくられ、朝鮮人にも選挙権と被選挙権が認められたという事実を指摘すると、法的に処罰されることになるかもしれない。
いま韓国は、先進国の中の先進国である「G７」の仲間入りをして、「G８」に拡大したいと考えている。今回の動きはその邪魔にしかならない。
民族主義と民主主義の両立は韓国の大きな課題だ。
おまけ
日本のネットでは、「日本があの時代に韓国を近代化させた。選挙制度を導入し、民主化させた」といった書き込みを見かける。
以前、アメリカ人と話をしていて、「戦後、アメリカが占領統治したことで日本は近代化し、民主化した。軍国主義に支配され、抑圧されていた日本人は解放された」と言われてムカついたが、確かにこの説には否定できない事実がある。だからといって、「アメリカに統治されて良かった」と感謝する日本人は見かけない。
日本は朝鮮を直接統治し、アメリカは日本を間接的に統治していたから、両者の性質は違う。でも、事実が相手を傷つけることもあるということは覚えておいていい。
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