「大韓民国はいつ誕生したのか?」
それについて韓国内では2つの説がある。
ひとつは李承晩(イ・スンマン)が初代大統領に就任した1948年で、韓国の与党をはじめ保守派の人々はこの年に建国されたと考えていて、これは日本やアメリカなど世界中の国々の認識と一致している。
もうひとつは、1919年に上海で大韓民国臨時政府が樹立されたことで韓国が建国されたとする説で、文前大統領や野党などリベラル派の人々はこれを支持している。
保守派とリベラル派の対立は深刻だ。
韓国では、日本の統治から解放されたことを「光復」と呼び、毎年8月15日にそれを記念して政府主催の式典が行われている。しかし、2024年には政府が1948年の建国節を目指す態度を見直さないことなどを理由に、野党などがボイコットして独自に式典を開き、初めて光復節記念式典が分裂した。
しかし、これは保守派の主張が正しく、リベラル派の説は無理がある。
1919年に上海で大韓民国臨時政府が成立したとしても、世界のどの国もそれを認めなかったし、中国の支援を受けるために国民党の傘下に属していたからだ。
臨時政府が誕生したことで、独立に向けて動き出したと言うことはできるかもしれないが、「建国」までは言い過ぎ。アメリカも臨時政府の正統性を認めず、1945年にこの組織を解体した。
大韓民国臨時政府が国家でなかったことについて、朝鮮日報の記事でシム・ジヨン慶南大学名誉教授も「1945年当時、韓半島には国際的に承認された国家が存在しなかった」と説明している。
元韓国政治学会長「当時の日本軍34万人、彼らにとっては米軍が占領軍」(2021/07/11)
韓国の建国について友人の韓国人に意見を聞くと、彼の立場は保守派なので、1948年建国説を支持し、1919年説を「あれは言い過ぎで間違っている」と一蹴。1919年に韓国が建国されたという歴史は、数年前に当時の文大統領が演説で取り上げたことで大きく注目され、韓国社会で議論になったという。
文氏がそう言い出した理由は何か?
彼の見方では、日本統治が終わってから建国されたのではなく、日本の支配に抵抗する形で韓国がつくられたという話のほうが、国民の愛国心により強く訴えかけることができるからだ。保守派との差別化を図り、自分たちリベラル派に支持を集めるために、1919年に建国されたという節をアピールしたという。
中央日報の記事によると、韓国では大統領の立場が保守かリベラルかによって、建国の年が変わるというユニークな現象が起こっている。(2017.09.13)
文大統領は1919年を、朴前大統領、李元大統領は1948年を支持した。これは陣営を分けて相手を排除する基準となった。
1919年? 1948年? 大韓民国の建国めぐり論争
歴史は解釈によっても作られる。
リベラル勢力が政治的な目的から、それまでの常識的な歴史認識を否定したことで韓国社会は大きく分断され、光復節記念式典まで2つに分かれて行われるようになった。
友人はこの事態に衝撃を受け、こんな内輪もめは国を弱体化させるだけだとウンザリしていた。
韓国社会では分裂や断絶が確実に進んでいて、韓国民は本来、8月15日の光復節と、1919年に抗日独立運動が起きた3月1日はまとまるはずなのに、今年はそうならなかったと朝鮮日報が社説で嘆いている。(2025/03/03)
韓国が真っ二つに割れた。 独立のために全民族が一つになった三一独立運動の精神は失われ、相手側に対する激しい非難と悪口、ヘイト(嫌悪)と扇動の言葉が飛び交った。
「罵詈雑言」飛び交うデモ会場、真っ二つに分裂した韓国の三一節
与野党の政治家は国民融和のために働くどころか、「韓国は左派(リベラル勢力)の強制占領期にある」と言ったり、尹大統領を「妄想障害怪物」と罵倒したりしてむしろ混乱と分裂をあおったという。
先日、保守派の尹氏が大統領の地位を失い、6月に行われる大統領選では、リベラル勢力のど真ん中にいる李氏が当選する確率が高い。そうなれば、1919年建国説が再び強調されることはほぼ間違いなく、国民の和解はますます遠くなる。
政治家が自分の利益のために歴史を都合よく解釈し、利用しようとすると、亀裂が深まるというのは日韓関係も同じだ。
コメント
コメント一覧 (1件)
韓国人が自国民同士で喧嘩したいなら、そうさせておけばいいんじゃないですか。日本人には関係ない。
なお、日本の歴史教育においては、事実に基づいて「一部の韓国人が主張する『1919年上海市内での大韓民国政府の樹立』は韓国以外に認めている国はなく、日本も含め他の国は全て、『1948年に李承晩による大韓民国政府の樹立』が現在の大韓民国政府の建国であるとみなしている」と教育すればいい。