5月6日は1951年に、国民的行事のラジオ体操が「復活」した日だ。
これは米軍のマッカーサーによって、「子どもたちに悪影響を与える」として1947年に中止された。それが4年ぶりに、「ラジオ体操第一」としてフェニックスのようによみがえり、現在まで続いている。
友人のアメリカ人女性は、10年ほど前まで、日本の小中学校で英語を教えていた。ある日、彼女と会うと、「最近は運動会の練習をしているから、それを見るのが楽しみで仕方ない」とニコニコしながら話し出した。
彼女は来日する前、たまたまYouTube動画で、学校でたくさんの生徒がラジオ体操をしている様子を見て、みんなが同じ動きをしていることに「すごくキレイ!」と強く印象に残ったから、それを初めて生で見たときは、震えるほど感動した。
運動会では、100人以上の児童生徒が同じタイミングで、同じ動作をしているから、彼女はそこに日本人の規律正しさの「原点」を見た気がしたという。
アメリカの学校の体育では(指導の内容や方法は地域や時代によって違うだろうけど)、彼女が小・中学生だったころは体操服なんてものはなく、みんな適当に動きやすい格好をして、各自で適当に準備運動をしていて基本的にバラバラだった。だから、日本の学校の統一感は彼女にはとても印象的だった。
でも、それは現代のアメリカ人の視点で、戦後直後はまったく違う。
1945年の8月に日本がアメリカに降伏宣言をして、戦争は終わった。その後、1952年までの7年間、日本は連合国軍の占領下にあった。
東京に設置された「連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)」は、実質的にはアメリカ合衆国で、そのトップ(最高司令官)に米軍のマッカーサーが任命される。
GHQやマッカーサーは日本を「二度と戦争をしない国」に変えるため、軍国主義を徹底的に排除し、平和を尊ぶ精神を養うことを重視し、教育内容を変え、さまざまな文化を禁止した。具体的には、剣道や柔道などの武道が禁止され、学校教育から排除された。
また、歌舞伎の演目では、主君への忠誠心や敵への復讐心をテーマにする「忠臣蔵」なども上映禁止となった。GHQは将棋さえ、「軍国主義の復活につながる」という理由で禁止しようとしたのだ。
その一環として、戦前から行われていたラジオ体操も「バン」された。
*ラジオ体操は1928年(昭和3年)に、昭和天皇の即位を記念して初めて行われた。そのルーツは、アメリカの生命保険会社が健康増進を目的にはじめた「ラジオ体操番組(Tower Health Exercise)」にある。
マッカーサーはラジオ体操について、1人の号令にしたがって数百万人が同じ動きをすることに「軍国主義を助長している」と感じ、こんな恐ろしいものを戦後も続けるべきではないと判断する。そうして、昭和21年にラジオ体操は日本から姿を消した。
それでも、この体操の愛好者は全国にいて、江戸時代の隠れキリシタンのように、GHQに見つからないようにコッソリしていた人たちがいたらしい。
もはやラジオ体操は、日本国民の生活から切り離すことができなくなっていたため、内容を変更して、1951年に復活した。
戦後直後のアメリカ人からすると、ラジオ体操は「軍国主義の芽生え」のように見え、恐怖を感じた。現代のアメリカ人は、友人のように「規律正しさ」を感じる人が多いと思うけれど、「全体主義みたい」とか「軍隊っぽい」と言うアメリカ人もいた。
どっちにしても、GHQの占領政策のおかげで日本人は「牙」を抜かれ、平和を愛するおとなしい国民となったから、日本から戦争を始めるとは思えない。

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