【フレネミー】日本の韓国企業を応援(実は邪魔)する韓国メディア

友だちや仲間の“フリ”をして、実はその人の成功を邪魔する人を「フレネミー」と呼ぶ。「フレネミー」とは「友だち(friend)」と「敵(enemy)」を組み合わせた言葉で、彼らには、相手の幸せを壊そうとする悪意がある。しかし、そんな憎悪や敵意はなく、本当に仲間として応援したつもりが、かえって足を引っ張ることになってしまうケースもある。
韓国メディアの報道を見ていると、そんな無邪気な「白いフレネミー」がわりと多い。

最近紹介した、中央日報のこの記事もその一例。(2025.05.09)

韓国の「味」日本では「押し活」…東京の20・30世代を並ばせた

韓国の飲食店が日本でオープンすると、それを待っていた人たちがたくさんいて、店の前には長い列ができた。この現象について、「韓国の店が日本人を並ばせた」という印象を与える見出しをつけると、韓国では読者の優越感が刺激され、より多くの人に記事を読んでもらうことが期待できる。
しかし、ネットで日本人の反応を見ると、その店を知らなかった人がほとんどだったから、「並ばせた」の一言を不快に思う人が続出した。
中央日報としては、韓国同胞の店を応援しようとしたのだろうけど、店としては大切なお客様にその表現はありえない。この報道はありがたド迷惑だったはずだ。

韓国メディアの「日本サゲ」が、日本にいる韓国人を困らせる

 

記者は文章を書くプロだから、自分のSNS(裏アカ)に書き込むように、好き勝手に書くことはできない。多くの人に読まれる文章を書き、会社に利益をもたらす人が有能な記者とされる。そのため、韓国メディアでは読者の自尊心をくすぐる表現が目につく。
上の記事のように日本をサゲることで、韓国をアゲるというテクはよく使われるし、下の記事のような「誇張表現」も多い。

 

 

これは、韓国ピッコマが「漫画の国日本をどのように『征服』したのだろうか」を考察する記事で、その秘訣は切実さで、「誠意をつくすということ」だという。

しかし、この見出しを見た日本人から、すぐにツッコミが入る。実際には、タイトルにある「1050億円」という数字は売り上げではなく取引額で、2023年のピッコマの売上は545億円だった。
売り上げと取引額はまったく違う。日本人に間違いを指摘された中央日報は、すぐに見出しを修正した。

 

 

日本の「漫画の国」と呼ぶことに異論はない。しかし、『コミックシーモア』を運営するNTTソルマーレの電子書籍事業の売上高は、2023年で812億円となり、ピッコマを超えている。
2023年の日本のコミック(漫画)市場は約7000億円で、ピッコマのシェアはそのうちの7.8%だったから、日本人の感覚からすると、それで「征服した」とはとても言えない。

これは文化の違いだろうけど、韓国ではそんな誇張表現が多い。
「亜洲日報」もこんな記事を掲載していた。(2023-04-18)

日本掌握したカカオ「ピッコマ」···日本だけで累積売上20億ドル突破

「ピッコマ」の中を見てみれば、マンガを描いているのは韓国人より日本人のほうが多い。「日本人パワー」がなかったらこの数字は絶対に出せないのに、中央日報も亜洲日報もその点を完全スルーしている。

韓国メディアは、韓国人読者の優越感を刺激するためにこうした表現を使うのだろうが、日本人の立場からすると、「征服された」という状態を不快に感じる人が本当に多い。
内容や表現で問題のあるコメントは削除され、一定の中立性・公正性が保証されている『ヤフコメ』を見ても、ネガティブな感想がズラリと並んでいる。

・日本で日本の漫画売ってるだけの会社が日本を征服?
・唯一面白かったのが俺だけレベルアップだったから韓国が日本を征服したと言うのは誤解だと思う。
・日本に併合された過去をもつ韓国のメディアは、少しでもマウントを取って溜飲を下げるために、「日本を征服した」という言葉を使いたくてしょうがないんだな。
・漫画アプリが普及したって事が「漫画の国」日本を征服した事になるのか・・・。
・征服とはシェアが100%に近い時に使う言葉で1位になってもどんぐりの背比べ状態なら征服とは言わない。

 

日韓では、きっと「征服」や「掌握」の意味や使い方に違いがあって、韓国ではハードルが低く、わりと気軽に使うことができる。
日本に住んでいて、日韓の価値観や考え方を知る韓国人に、そのあたりの事情を聞いたことがある。彼の意見では、日本人に比べて韓国人は動的で、全体的に「勢い」があるものが好きだから、あまり深く考えずにそんな表現を使うことが多い。だから、韓国メディアが「韓国の○○が日本を席巻!」といった記事を掲載しているのを見ると、「あれを見たら、日本の人たちは気を悪くしますよね。それは回り回って、自分たちに向かってくるんです」ともらい事故を心配していた。

一方、日本人は本当に「征服」や「掌握」の表現にふさわしいかどうか、中身をチェックするから慎重になる。
(だから、有名メディアが見出しで、売り上げと取引額を間違えることは考えられない。)
シェアの90%以上を奪っていたら、「掌握」を使うかもしれない。「征服」はやや上から目線の言い方だから、日本の全国紙が他国に対してそんな言葉を使うとは思えない。

ことし1〜3月期、韓国での日本ビールの輸入額は1662万ドルに達し、2位の米国産(680万ドル)をぶっちぎって、輸入ビールの中では最も多かった。この傾向は以前からあり、日本のメディアは「輸入ビール、5年ぶり日本勢が1位」、「韓国でスーパードライ復活 20年比 8倍、生ジョッキ缶も」と伝えた。
韓国メディアなら「日本を掌握」と大げさに表現するところを、日本メディアは数字を使って正確に伝える気がする。

 

ピッコマはもう“日韓合作”であることを考えると、「日本を征服(席巻)した」といった韓国メディアの誇らしさを感じさせる報道は、中立的な日本人の感情を逆なでし、敵に回すことになるから、頭を抱えているに違いない。「東京の20・30世代を並ばせた」という報道も店にとってはマイナスだ。
敵なら叩き潰すことができるが、悪意のないフレネミーはそうはいかない。
「キングボンビー」みたいにやっかいな存在だ。

 

 

日本 「目次」

韓国 「目次」

カバン〜大統領 近代日本が韓国に与えた影響の大きさ

【朝鮮の美術】19世紀の日本人が驚き、考えたこと

韓国が伝えない話 平昌五輪の成功を支えた日本の職人たち

韓国人「日本人は、謙虚ですね」 日韓の比較・考え方や社会の違い

韓国人職人が星1つの快挙。すしの国際化を米国人はどう思う?

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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