グーグルで「離婚」と検索すると、「芸能人が円満に離婚した」とか、「3度の結婚をした65歳の女優」といった記事が出てくる。
個人的には、揉めて修羅場のようになることもあるが、日本では、離婚の手続き自体はとても簡単だ。
しかし、世界を見てみると、それができない国もある。
フアン・ペロン(1895〜1974年)はアルゼンチンの大統領をしていた人物で、独裁的な政治をしていたため、国内に多くの敵がいた。
1955年6月16日、ペロンがマヨ広場で何千人もの人たちに向かって演説をしていたとき、軍の戦闘機が空からやってきて爆弾を落とし、300人以上を殺害した。
この攻撃は、日本軍がハワイの米軍基地におこなった真珠湾攻撃を参考にしたという(Bombardeo de la plaza de Mayo)。
マヨ広場の惨劇の犠牲者
ペロンがここまで嫌われた大きな理由に、「離婚法」を制定させたことがある。キリスト教のカトリックでは離婚は禁止されていたが、ペロンはそれを真っ向から否定したため、多くの信者が激怒し、彼を「暴君」と呼び、敵対するようになった。それが、軍による自国民への爆撃という異常な事件につながった。
カトリックでは、結婚は神に誓った神聖な契約とみなされ、生涯、離婚は認められていない。しかし、教会に結婚の無効を申請し、それが認められると、事実上離婚と同じ状態になり、再婚することが可能になる。ただし、これはあくまで「無効」であり、「離婚」とは違う扱いだ。
「カトリックと離婚」でもっとも有名な歴史上の人物といえば、イングランド国王ヘンリー8世(1491〜1547年)だろう。
カトリック教徒だったヘンリー8世は離婚したかったが、ローマ教皇はどうしても認めなかった。そのことに怒ったヘンリー8世は、カトリックから離れて「英国国教会(イングランド国教会)」という新しい教会をつくってしまう。
その後、ヘンリー8世は6回も結婚し、元妻を処刑することもあった。そのため、現代のイギリス人の中には、彼のことを「all this shit(こんなクソみたいなこと)」をした国王とボロクソに言う人もいる。
では、いまの世界ではどうか。
2025年5月の時点で、離婚ができない国は2つしかない。バチカン市国とフィリピンだ。カトリックの総本山であるバチカン市国には離婚の制度がないし、フィリピンでは離婚が法律で禁止されている。
ただし、フィリピン国民の8割はカトリック教徒だが、それ以外のイスラム教徒や外国人は、合法的に離婚することができる。
また、カトリック教徒でも、教会に結婚の無効を認められれば、「裏ワザ」的に事実上の離婚をすることができ、再婚もできるらしい。
そんなフィリピンでも、最近は離婚を合法にしようとする動きが進んでいる。それに対して、カトリック教会や熱心な信者たちは激しく反対している。どれくらい怒っているかはわからないが、たとえ離婚が合法になっても、軍の戦闘機が国民を攻撃するという前代未聞の事態にはならないことはわかる。
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コメント
コメント一覧 (2件)
> 2025年5月の時点で、離婚ができない国は2つしかない。バチカン市国とフィリピンだ。カトリックの総本山であるバチカン市国には離婚の制度がないし、フィリピンでは離婚が法律で禁止されている。
どうなんですかね? 米国も、おそらく憲法によって離婚の自由は認められているのだろうけど、実際に離婚ができるかどうかは個人が所属するコミュニティの宗教によるような気がしますが。
たとえば、何があろうと妊娠中絶を絶対に認めないようなプロテスタントの「福音派」なんて、そんなにスムースに離婚が認められますかね?
イタリア人も、(浮気はしょっちゅうするけど)離婚して子供を手放すとなると、非常に抵抗は大きいそうですよ。ファミリーの跡を継がせなきゃならないそうなので。
離婚については、NHKの『フィリピン 離婚合法化の行方』を参照しました。
「バチカン市国以外の国では、世界で唯一離婚が法律で禁止されている」とあります。
https://www.nhk.jp/p/kokusaihoudou/ts/8M689W8RVX/episode/te/R3WM48QQ5X/