友人のアメリカ人は静岡で英語を教えていて、2年ほど前に広島へ引っ越して今は高校で英語を教えている。久しぶりに話をすると、彼は日本の都市部と地方に住んでみて、いくつか違いを感じたというので、これからそのことについて紹介しよう。
ーー静岡と広島のどっちが過ごしやすいと思った?
「それぞれの良さがあるから、どっちもいい」っていう善人アピールはいらないから、ストレートに言ってくれ。
良さの種類が違うから、俺にはどっちもいいよ。
ーーオイ。
自分の立場が変わったんだ。静岡では都市部に住んでいて、今は田んぼが多い広島の郊外にいるから、地域性じゃなくて単純に都会と田舎の比較になる。20代なら、いろんな店や出会いがあって刺激的だから都会のほうがよかった。でも、今は30代で結婚しているから、むしろ遊ぶところの少ない田舎のほうがいいね。
ーーそれは日本人の感想と変わらないな。人類共通の普遍的な印象か。都市部から田舎(郊外)へ移動して、何かマイナス面はある?
静岡にいたころと比べると、外にいて周りの人からチラチラと見られることが多くなった。まだ外国人に慣れていない人が多いんだろうな。
ーーああ、それは「日本の田舎あるある」だな。知り合いのアメリカ人女性は10年ぐらい前、カフェでおしゃべりをしていたら、日本人の客にカメラを向けられて写真を撮られたから、「珍獣あつかいされた!」と怒っていた。
ここではそんな露骨なことはないけど、視線を向けられて良い気はしない。今から思うと、都会の『無関心』は心地良かった。でも、こちらを見られることより、目が合うとすぐにそらされることのほうが気分は悪くなる。

でも、一番困ることは、冬になるとここでは雪がたくさん降ることだ。毎朝、車で学校へ行っていて、普通なら20分ぐらいで着くのに、雪が積もると1時間以上もかかることがある。
オレが生まれ育ったテキサスの南部や静岡では、雪が降ることはほとんどなかったから、雪が積もるといろいろ大変なんだよ。
ーーわかる。雪道の運転には経験が必要だしな。静岡の住民はそれに慣れていないから、雪が数センチ積もった日に、田んぼに突っ込んだ車を見たことがある。
だから、こっちに生活をはじめてから、「日本は雪が多い国なんだな」ってあらめて実感した。ちょっと移動しただけで、環境がガラリと変わる。
ーーアメリカ人、とくにテキサス人の言う「ちょっと」は、日本人の感覚からすると「かなり」になる気がする。アメリカではキロメートルの代わりに「マイル(kmの約1・6倍)」、キログラムの代わりに「ガロン(kgの約3・8倍)」を使うし、日本と比べると何でもスケールがデカいよね。
※テキサスはアメリカでアラスカに次ぐ2番目に大きな州で、日本の約1・8倍の面積がある。
いや、静岡にいたときもそう感じたことがあるんだ。隣の長野へ行くとスキーができて、温泉には猿が入っているし、少し移動しただけで自然環境が一変するなって。
ーー日本人でも知らない人が多いけど、日本は世界有数の雪国だからね。世界で一番雪が積もった記録は滋賀県の伊吹山で、1927年に高さが11メートル82センチに達した。よくそこまで測ったなって感心するよ。
国土の半分ほどが豪雪地帯だし、世界の年間降雪量で日本がトップ3を独占したこともある。
なるほど。日本に住んでいて、春夏秋冬がはっきり分かれていることは感じていた。それに加えて、地域によって環境も大きく変わるんだな。ここに住んでから、それを実感した。
ーー日本人でも太平洋側の温暖な地域にいると、雪国の事情が分からないことがある。それについて、前におもしろいことがあった。中学生向けの公民の教科書で、新潟県の村が「雪国はつらいよ条例」を制定したと書いてあったけど、じつは「雪国はつらつ条例」の間違いだった。
教科書の記述をチェックしたのは太平洋側にいた人たちで、「雪国=つらい」という先入観を持っていたから、ミスに気がつかなかったんだろうな。
【雪国と暖国】江戸時代と21世紀で変わらない日本人の発想・見方
なるほど。日本は小さな国だけど、季節や気候はバラエティー豊かだ。
※世界中の天気予報を提供するアメリカ企業「アキュウェザー(AccuWeather)」によると、年間降雪量の世界3位は富山、2位は札幌、1位は青森市になっている。ちなみに、7位は秋田県だから、トップ10のうち約半数は日本ということになる。
くわしいことを下をクリック。
Top 10 snowiest major cities around the world

コメント