【真逆の見方】原子投下・コロンブス・南京虐殺に対する米国人の意見

先月の終わりごろ、ニューヨークに住んでいて、日本文化に興味がある60代の黒人男性と話をした。彼は変わっていて、自分を「アフリカ系アメリカ人(African American)」ではなく、「アメリカ系アフリカ人(American African)」と考えている。つまり、アメリカ国民よりもアフリカ人でいることを優先しているのだ。
そんな“クセ”のあるアメリカ人と「原子投下・コロンブス・南京虐殺」という重い歴史の話をしたので、これからその内容を紹介しよう。

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アメリカ人にとって8月6、9、15日とは?

ーーこんにちは、久しぶり。

やあ、こんにちは、元気だったかい? こっちは本当に暑い日が続いていたけど、8月の終わりになって気温が下がって、秋が始まりつつある。日本はどうなんだい?

ーーまだまだ夏の真っ最中で、気温は35度以上になることもある。

8月の終わりで35度? それは信じられないな。オレなら、秋まで生きていられるか分からない。

ーーこっちも信じたくないよ。毎年、猛暑が長引いて、日本では異常気象が平常運転になった感じだ。いまマクドナルドで「月見バーガー」の宣伝をしているけど、秋の気配なんて1ミリも感じない。最近は、季節と伝統行事のタイミングがズレているんだ。
ところで8月というと、日本では15日に終戦記念日があって、戦没者を追悼して平和を願う大切な日になっている。アメリカでは逆に、この日に太平洋戦争が終わった(勝利した)ことを祝っているのかな?

いいや、そんな話はまったく聞いたことがない。その日は本当に普通の日で、君からその話を聞くまで、わたしはその日に戦争が終わったなんて知らなかった。

ーーそっか。日本で「終戦の日」は一年の中でもっとも重要な日のひとつで、きっと全国民がその日の意味を知っている。でも、アメリカではただの平日か。
8月6日と9日は? アメリカでは、広島と長崎に原子爆弾が落とされた日は知られている?

正確な数字は分からないけど、オレの感覚だと、アメリカ人の平均的な知識は「戦争中、アメリカは日本に原子爆弾を落とした」ということだけで、ほとんどの人は具体的な日にちなんて知らない。それを知っているのは、歴史を研究しているような特別な人ぐらいだろうな。

ーー話を聞くかぎり、先の戦争について、日米ではすごい温度差がありそうだ。まぁ、韓国レベルで強い関心を持たれても困るけど。でも意識はどう? 日本のテレビ番組で、原爆投下に対するアメリカ人の認識は昔と変化していると聞いたけど。

それは変わった。オレのおじいちゃんは原爆投下について、「アメリカは最強の国だ」と誇らしそうに語っていた。オレもそのときはそう思った。「アメリカは偉大な国だな」ってね。
でも、大人になって変わった。原子爆弾が落とされてどうなったかを知ると、とても悲しい出来事だと思うようになったんだ。今のアメリカではそういう認識の人が多くて、嬉しそうに話すのは例外的だろうな。

ーー日本人としては、それは嬉しい変化だ。8月6日と9日の日にちを知っていることより、核兵器に対して、否定的な見方が広がっていることのほうが大切かもしれない。
広島の原爆はウラン、長崎の原爆はプルトニウが使われた。アメリカは2種類の原子爆弾を落として、威力を比較したかったという説がある。

それも初耳だ。

ーーだと思った。原爆投下について、日本人ほど敏感な国民はいないと思う。

コロンブスは偉人か悪魔か?

立場が違えば見方も変わるのは仕方ない。君は「コロンブス・デー」を知っているか?

ーー1492年10月12日、コロンブスがアメリカ大陸へ到達したことを祝う日。でも、アメリカの世論はそれを支持する人と、否定的な人に分かれてモメている。

半分正解だ。後半はいいけど、前半の知識は間違っている。1492年10月12日はコロンブスがサン・サルバドル島に上陸した日で、アメリカ大陸の本土に上陸したのは別の人だ。でも、そんなことはどうでもいい。問題は、コロンブス・デーを祝うバカどもがいるってことだ。
ヤツがアメリカ大陸を紹介したことで、ヨーロッパ人がどんどん来るようになった。つまり、多くの先住民が虐殺されたり、レイプをされるようになったんだ。アフリカから奴隷として黒人が連れてこられ、牛や豚と同じように市場で売られるようになった。
コロンブス・デーは悪魔がやってきた日なんだぜ? それを祝うなんてクレイジーだよ。

※コロンブスはイタリア出身だから、イタリア系アメリカ人が多く住むニューヨーク市で、コロンブス・デーにはパレードが開催されて盛大に祝われる。先住民や黒人はきっとそれに冷たい視線を送っている。ある意味、とてもアメリカらしい。

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足を踏んだ人・踏まれた人

ーー結局、足を踏んだ人間と踏まれた人間、加害者と被害者ではまったく違う認識をしているってことか。

そのとおりだ。侵略したり攻撃をしたりした人間はその記憶を簡単に忘れるし、された側は何度も掘り起こして絶対に忘れない。日本人は8月6日や9日をよく覚えている。でも、南京虐殺があった日はどうだ?

ーーその逆質問はまったく予想していなかった…。アメリカ人に8月6日と9日について聞くというのは、そういうことだったのか。南京事件があった年月日を知っている日本人はまずいない。それこそ、歴史を研究している人ぐらいだな。

だろ? 立場が変われば見方も反対になるってことは、原子爆弾もコロンブスも南京虐殺も同じだ。

 

※「南京事件」についてはさまざまな説がある。
日本政府は当時、日本軍による民間人の殺害があったことは否定できないが、正確な被害者の人数を特定することは困難である、という立場だ。
くわしいことは外務省HPの「歴史問題Q&A」を見てほしい。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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