日本・アメリカ・ポーランドの、社会の様子や人の価値観の違い

海外には国民性をネタにしたジョークがある。たとえば、世界各国の客が乗っていた豪華客船が事故で沈みはじめたから、船長はためらう乗客を海に飛び込ませないといけなくなった。そこで船長はそれぞれの客の“キャラ”に合わせてこう言った。

アメリカ人には「飛び込めばあなたは英雄になれますよ」
イギリス人には「こういうとき飛び込むのが紳士というものです」
ドイツ人には「規則ですので飛び込んでください」
日本人には「みんな海に飛び込んでいますよ」
韓国人には「日本人はもう飛び込みました」

こういう国民性をやゆした「エスニックジョーク」は偏見に結びつきやすく、危険な側面もある。昔、アメリカ人からポーランド人について、第2次世界大戦中にポーランドの騎兵隊が槍(やり)を持ってドイツの戦車に突撃して、返り討ちにあったという話を聞いた。
これは“ブラックジョーク”で、そんな事実はない。
そのアメリカ人が言うには、欧米ではポーランド人について「頭が悪い」というネガティブなイメージがあったため、そんな都市伝説が生まれたらしい。

さて、知人にポーランド出身のアメリカ人女性がいる。彼女は日本の学校で英語を教えた経験があり、今は母国に戻ってジョージア州に住んでいる。最近、ポーランドに一時帰国して、今は首都ワルシャワの実家にいる彼女とオンラインで話をした。
ポーランドもアメリカも日本も好きで、中立的な立場にいる彼女が感じた3カ国の違いとは?

目次

挨拶の違いと由来

ーーこんにちは。って挨拶をしてふと思ったんだけど、ポーランド語で「こんにちは」は何て言うの?

「ジェンドブリィ(Dzień dobry)」。直訳したら「良い日」だから、英語なら「グッデイ」ね。日本語の「こんにちは」にはどんな意味があるの?

ーーあれは昔、外で誰かに会ったときにかけた「今日は良い日ですね」という言葉の下の部分が、つまらない芸人なみにばっさりカットされたもの。もとは文章で、「は」は助詞だから、「こんにちわ」はおかしい。

そうなんだ! 日本語を勉強していて、なんで「こんにちわ」がダメなのか疑問に思ったことがある。

ーー英語の「hello」の由来を知ってる?

えっと、今ネットで調べたら、はっきり分かっていないけど、相手の注意を引くための言葉や驚きの表現、挨拶として使われていた言葉が「hello」になったという説があるんだって(Hello)。

ーーつまり、「おーい」「やあ」「ええ!」みたいな言葉が現在の「ハロー」になったと。

 

ポーランドの地下鉄

季節の違い

ーー10月の下旬になって日本は秋らしくなったけど、ポーランドはどんな感じ?

こっちもすっかり秋になったよ。今日の最低気温は5℃で、最高で12℃まで上がったみたい。

ーーマジで! 5〜12℃ってもう冬じゃん。今は静岡では20℃を超えて、昼なら半袖で過ごせる。

日本はあったかいよね〜。アトランタ(ジョージア州の中心都市)もそのぐらいだけど。

ーー日本もヨーロッパにも四季はある。でも、日本では夏が長くて、ヨーロッパでは冬の長い国が多いよね。

都市のシンボルに表れる価値観の違い

 

 

ーー最近、浜松にやって来たインド人から、駅前で歓迎してくれる「家康くん」を見て「なんだコイツは?」って不思議に思ったと聞いた。
ワルシャワにも「家康くん」みたいなマスコットキャラはある?

何であると思った? 日本の都市によくあるかわいい感じの「ゆるキャラ」は、たぶんポーランド人は共感しない。アメリカ人も同じ理由で、都市のシンボルにあんな子供っぽいものはふさわしくないって考えると思う。

ーー浜松に住んでいたドイツ人からも、そんな話を聞いた。彼が帰国したあと、たまたま母親が「家康くん」がデザインされた市の書類を見て、「これが公式書類なの? 幼稚園の文書かと思った」と言ったらしい。

確かに、何も知らないヨーロッパ人が見たらそう思うかも。
ワルシャワにはね、街と人々を守る人魚がいるっていう伝説がある。だから、デンマークにあるおしとやか人魚像と違って、ワルシャワにある人魚像は剣と盾を持って敵と戦う勇ましい姿をしているの(Pomnik Syreny)。

ーーポーランドもそうだけど、ヨーロッパの都市の紋章には「盾」がデザインされているのが多い。やっぱり、歴史的に「防衛」が重視されていたんだろうね。

日本の都市もそうじゃないの?

ーー日本はちょっと違う。歴史的に、ヨーロッパや中国の都市は城壁に囲まれて防御力を高めていたけど、日本の都市には城壁が無かった。だから、中国語で「城」という漢字は「(城郭)都市」を表しているけど、日本語の城には「city」の意味はない。

「家康くん」で大丈夫? 浜松が敵に襲われたとき、彼は守ってくれるの?

ーーそれは無理。あいつはたぶん市民より先に逃げだす。

 

第2次世界大戦の直後、廃墟となったワルシャワに立つ人魚の像

宗教に対する態度の違い

ーーその人魚はおいといて、ポーランドで尊敬されている人には誰がいる?

う〜ん、ポーランド社会はカトリックの影響が強いから、ローマ教皇になったヨハネ・パウロ二世(在位1978年 – 2005年)じゃない? 自宅に彼の写真を飾る人がいたし、レストランで写真を見たことがある。オーナーがヨハネ・パウロ二世をすごく尊敬してたんだろうね。

ーーそういう宗教的な空気は日本の社会には無いし、アメリカも薄そうだけど、東南アジアならそれに近い雰囲気がある気がする。タイやミャンマーのレストランでご飯を食べたとき、壁の高いところに亡くなった高僧の写真があって、遺影を見ながら食事をするという斬新な体験をした。

移動の違い

ーーポーランドに住んでいて、アメリカとはどんな違いを感じた?

歩く時間がすっごく増えた! アメリカにいたときは、どこに行くにもクルマ使ってたけど、ワルシャワではバスや地下鉄とかの公共交通機関が発達してて便利だし、自転車があれば車はもう必要ないって感じだね。

ーーアメリカと違って健康的な生活している。

ホントにそう! アメリカで太ってる人多い理由がよく分かったよ。ワルシャワに来て、日本にいたときの生活に戻った感じがする。それとワルシャワはアメリカと違って、「スクーター」を使ってる人をよく見かける。

ーーへえ。ポーランドにはバイクが多いんだ。

ううん、そうじゃなくて…。

※彼女が言った「スクーター」とは、日本でいう「LUUP(ループ)」みたいな電動キックボードのことだった。「scoot(速く移動する)」が名詞になった英語の「scooter」は、日本語の「スクーター」よりカバーする範囲が広い。
基本的にエンジン付きの二輪車で、足を乗せるステップがあるものをこう呼ぶらしい(参考画像)。

環境への配慮の違い

 

 

アメリカとの違いと言うと、ペットボトルのキャップが固定されていることもそう。外すことできけど取ることはできない。

ーーなんでそうなったの?

キャップのポイ捨てをする人が多くて、それを食べる鳥とかが問題になったから、ヨーロッパ全体でこうなったらしいよ。その考え方はいいけど、唇に当たるのがちょっとイヤ。でも、環境への意識はアメリカよりヨーロッパのほうが進んでいる。

ーー日本に住んでいる台湾人は、ごみの分別がすごく面倒くさいと文句を言ってた。ペットボトルのキャップを外して、本体を洗って別々に捨てるのが大変なんだって。

日本の分別は細かいよね〜。日本はいろんなルールが厳しいよ。

ーーアメリカ社会は、モノを大量に生産して大量に廃棄する。牛乳の写真もあったけど、ポーランドにもアメリカみたいな1ガロン(約4L)の牛乳を売ってる?

ポーランドでそれは見たことない、大きくても2Lくらいじゃないかな。そういえば、日本の学校給食で、200mlぐらいの牛乳を見た。あんなに小さい牛乳を見たのは初めて。かわいかったけど、最初はちょっと物足りなかったな。

ーーあれは日本人用サイズだから、欧米人にはきっと小さすぎる。そんな牛乳に慣れた日本人の女の子がアメリカに行って、1ガロンの牛乳をコップに注いだら手がプルプル震えてこぼしてしまったって話もある。日本はアメリカやポーランドに比べると、基本的に「何でも小さくてかわいくて」っていう特徴がある。

それは同感。

 

 

日本 「目次」

【日本の夏】グアム出身のアメリカ人には衝撃的な生き物

ポーランド出身のアメリカ人の話 日本での経験や歴史について

カリフォルニアの米国人に比べ、日本人がイイと思う理由

ポーランド人が見た日本 同じ習慣・違う感覚・驚いたこと

米国人が感じた日本人とポーランド人の違いは「サービス精神」

【最悪に不快】飲酒大国・日本でアメリカ人が経験したこと

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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