アメリカ政治の今 NY在住の黒人男性が初のムスリム市長に歓喜

年が明けてすぐに、ニューヨークに住むアメリカの黒人男性(50代)と話をした。なので、今回はその内容を紹介しようと思う。
彼についての情報を開示すると、かなり「クセ」の強い人物だ。
ルーツは西アフリカにあり、自分のアイデンティティーでは「アメリカ人」よりも「アフリカ人」であることを重視している。アフリカ人であることに誇りをもっていて、白人社会の価値観や考え方には否定的だ。
政治的な立場はリベラルで、民主党を支持し、保守的な共和党を嫌っている。

もともと西アフリカにルーツがあるので、ここでは彼の名前を「オニャンコポン」とする。
オニャンコポンとは、ガーナやコートジボワールに住むアカン人の信仰で、最高神とされる偉大な神の名前だ(Nyankapon-Nyame-Odomankoma)。
『進撃の巨人』には、このキャッチーな名前をもつ黒人キャラクターが登場する。
サシャが「ところで、オニャンポコンは何で肌が黒いのですか?」と聞くと、彼はこう答えた。

「俺たちをつくった奴はこう考えた。いろんな奴がいた方が面白いってな」

さまざまな人種・宗教の人間がいた方が社会は豊かになるーー。そんな多様性を尊重する考え方はリベラルに特徴的で、彼の価値観とも合っている。
これから紹介する話には、「共和党(トランプ政権)が大っ嫌い」という彼の主観や偏見が多くふくまれているので、その点をご承知おきを。

 

AIに描いてもらったオニャンコポンの絵。実際に西アフリカで信仰されているオニャンコポンが、どのように描かれているのかは分からない。

 

ケンジ「オニャンコポン、明けましておめでとう!  元気だった?」

オニャ「ああ、元気だったさ。とくに最近はいいことがあったからな。」

ケンジ「それもふくめて話を聞きたかった。さぁ、今回もアメリカの事情をおしえてくれ、頼んだよオニャンコポン。」

オニャ:「まかせてください、ケンジさん!」

ケンジ「その“いいこと”っていうのは、マムダニ氏が選挙に勝ってニューヨーク市長になったことだよね? アフリカ(ウガンダ)生まれのインド系イスラム教徒の移民と、彼は情報量の多い人だ。NYで初めてムスリムが市長になったということで、日本でも大きなニュースになった。」

オニャ「俺も投票した。彼が当選したときは本当にうれしかったね。なぜ彼が勝ったか分かるか?」

ケンジ:「それを聞きたかった。」

オニャ:「俺もそれを聞かれたかった。答えはとても簡単だ、彼は「ノーマル」だからだ。」

ケンジ「常識的な人だった、という意味?」

オニャ「そうだ。ニューヨーク市民が求めているのは『まとも』な政治家なんだ。
今のアメリカでは、政治家が金持ちと結びついて、市民を支配しようとしている。そういう連中が多い中で、彼は常識的な価値観をもち、それをはっきり口にした。だから市民は信頼したんだ。」

ケンジ:「『まとも』の具体例は?」

オニャ「マムダニは人種や宗教に関係なく、ニューヨークに住むすべての人の立場を尊重する。一部の資本家と結びつかず、公平な政治を目指している。トランプのような大金持ちを取り上げて、『税逃れを許してきた腐敗した文化を終わらせる』と明言した。
それに、イスラエルのガザ侵攻を『虐殺』だとはっきり非難した。」

ケンジ「そんな主張をしていたら、富裕層やトランプ大統領、共和党の政治家や支持者には嫌われる。」

オニャ「だからこそ、彼がクリーンであることが分かる。外国生まれでイスラム教徒のマダムニでなかったら、そうした既得権益をバッサリ切ることはできなかった。ニューヨーク市民が彼を支持した理由だ。」

 

NYのマンハッタン

 

オニャ:「このところ、アメリカの政治はどんどんおかしくなっている。きのう(1月2日)、ベネズエラに奇襲攻撃をしかけ、マドゥロ大統領を逮捕してアメリカへ連行した(2026年アメリカ合衆国によるベネズエラ攻撃)。」

ケンジ「正月早々、世界中が驚いた。」

オニャ「ああ。俺も、トランプがあそこまでぶっ飛んでいるとは思わなかった。今のアメリカはどう見ても異常な状態にある。そんな中で冷静に物事を見て、不正があれば糾弾し、大切なことを見抜ける政治家はとても貴重だ。
マムダニは勇気をもってそれを口にし、バランス感覚もあった。いちばん『まとも』だったから、俺は票を入れたんだ。多くの市民も同じだと思う。」

 

おまけ

マダムニ氏は、保育料や市営バスの無料化、最低賃金の引き上げを訴えている。また、金持ちや大企業への課税を強めるべきだと主張した。
そのため庶民からは支持され、富裕層からは憎まれている。

NY市長選の期間中、トランプ大統領とマムダニ氏は互いを「共産主義者」「ファシスト」と非難し合った。しかし、選挙後に会談をおこなうと、立場の違いを超えて協力し合うことを確認した。
このへんの「試合が終わればノーサイド」的なフェアな精神はアメリカ的か?

 

後日談

この記事を投稿した直後、ニューヨーク市議会で、初めてユダヤ人の議長が就任することが決まったというニュースを見た。イスラム教徒の市長とユダヤ人の議長という「2つの初」には、多様性が尊重されるニューヨークのらしさが表れている。

 

ニューヨーク州の旗

左に自由の女神、右に正義の女神が描かれている。どちらも白人女性で、これはアメリカの伝統的な価値観を表している。
保守的な人はこのデザインを支持するが、リベラルな人は「多様性が反映されていない」と批判すると思われる。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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