日韓の歴史摩擦 李奉昌の処刑地にみる韓国の「悪いクセ」

1860年、大老の井伊直弼は警備の者たちと江戸城へ向かう途中、浪人たちに襲われ、刀で斬り殺された。歴史の授業で必ず学ぶ「桜田門外の変」だ。
それから約70年後、また桜田門の近くで、別のテロ事件が発生。

1932年、朝鮮人の李奉昌(イ・ボンチャン)は昭和天皇の暗殺をねらい、天皇が乗っていた馬車に向かって手榴弾を投げた。しかし、爆発したのは馬車から30メートル以上も離れた場所で、天皇の体に傷ひとつつくことはなかった。
この事件は「桜田門事件」と呼ばれる。犯人の李奉昌は、「大逆罪」という最も重い罪で処刑された。

桜田門外の変と違い、この事件は未遂に終わった。しかし、どちらも本質的にはテロ事件である点に変わりはない。ただし、大きな違いが一つある。
それは、当時の朝鮮半島が日本の統治下にあり、李が独立を求めて天皇の爆殺をねらったという点だ。そのため、韓国ではこの行為が愛国的で立派なものとされ、李は「義士」として称賛されている。

歴史教育や国家のアイデンティティは国ごとに異なる。同じ人物でも、国境を越えるとテロリストから英雄に変わることは、世界各地で見られる現象だ。日韓関係では特に多く、李の事件もその典型例といえる。

 

即座に取り押さえられる李奉昌

 

李奉昌(イ・ボンチャン)について、10年前、韓国最大の全国紙である朝鮮日報に、韓国“らしさ”がギュッと詰まった記事が掲載された(2016年5月26日)。

李奉昌が処刑された市谷刑務所跡地、慰霊塔の脇にゴミ集積場

李が処刑された市谷刑務所の跡地は、東京・新宿区にあり、今は児童公園になっている。その公園の一角には、ここで亡くなったすべての人を対象とした「刑死者慰霊塔」が建てられていて、そのすぐ近くにゴミの集積場がある。

韓国の視点から見ると、そこは「国のために犠牲になった場所」になるため、最大限に尊重されなければならない。そこで、いっちょ噛みの愛国活動家のソ・ギョンドクさんは、ゴミ集積場を移転させるため、次のような行動をしたという。

「新宿区役所に請願を行い、早急に処理するため、区役所の担当部署である新宿清掃事務所や公園事務所、文化観光課などと引き続き連絡を取っている」

韓国では、李奉昌は英雄として丁重に埋葬されている。尹奉吉など、ほかの独立運動家とともに、5万坪以上の広さを持つ公園の中に眠っている。
韓国でそれをするのはかまわないが、忙しい新宿区役所に、区民でもない人間がゴミ捨て場について電凸(電話突撃)してはいけない。

 

写真を見ると、記念碑とゴミ集積場はフェンスで区切られ、別の敷地になっている。
そもそも、この慰霊塔は日本人を含めたすべての刑死者を対象としたものなので、いやがらせ目的でゴミ集積場が設置されたということはありえない。
しかし、韓国人にとっては独立運動を象徴する「聖地」に近い場所であるため、反日感情も重なり、「意図的な配置」だと感じ、侮辱的に受け取る人がいるのかもしれない。

ソさんは、ゴミ集積場はすぐに別の場所へ移さなければならないと主張している。しかし、近隣住民にとっては生活に欠かせない施設であり、移転されたら大きな迷惑になる。簡単に代わりの場所が見つかるとも思えない。

 

韓国では、歴史問題になると国境や主権を意識しないで、「国内問題」のように考える悪いクセがある。韓国の歴史認識では、「抗日独立運動こそが現在の韓国の正当性の土台である」という考えが強く、その正義は国境や時代を超えて通用する「絶対的な道徳」として扱われがちだ。
そのため、ゴミ捨て場の移転だけでなく、日本で使われている教科書の記述変更まで要求してくる。日本にとっては内政干渉になるが、韓国側は「これは普遍的な正義の問題だ」という一方的な理屈で正当化しようとする。

 

韓国では、国民感情や歴史的な自尊心が最優先されやすく、日本の主権を侵すことになっても問題だと感じにくい面がある。「歴史の清算」がとても重視され、それはまだ終わっていないという意識も強い。だから「日本は自分たちの声を聞くべきだ」という感覚が今も根強く残っているのだろう。

こうした雰囲気の中で、日本を「国内」のように感じる人も出てくる。大手メディアもそれを後押しするから、日韓関係の歴史摩擦はなくならない。
李奉昌が処刑された場所についても、日本が韓国と同じように「独立運動の聖地」として国家や自治体が保護すれば、韓国側は満足するのかもしれない。しかし、それは主権国家に求めることではなく、まったく現実的でもない。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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