外国人観光客の功罪 活性化する地域と消える日本の「宝石(穴場)」

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伝統的に受け継がれる日本のマナー

昔から、日本人の行動を見て、礼儀正しさやマナーの良さに感心する外国人は多い。

「巡査がいないのにもかかわらず、見物人は完全に静かで秩序的である。上機嫌で丁寧である。」

明治時代、今の東京大学で教えていたアメリカ人のモースは、ある時、たくさんの人が集まるイベントに出かけた。そこで日本人の規律正しさを目の当たりにして驚き、上記のように驚き、「(アメリカと)比較せずにはいられなかった」と嘆いた。

その精神は、時代を超えて現代にも息づいている。

知人のイギリス人が静岡で行われたサッカーの試合を観戦したとき、彼は試合内容より、その後が印象に残ったと感心し、こんな話をした。

「試合が終わった後、周りを見回してもゴミが落ちていなかったんだ。みんな列に並んで静かに退場していくのを見て、日本人は本当にすごいなって改めて感心した。イギリスなら怒鳴り声が聞こえてきたり、負けて不機嫌になったサポーターがケンカを始めるかもしれないからね。」

つまり、日本人は民度が高いのだ、ということではない。が、外国人の評価を聞くかぎり、マナーが良く、ルールを守るという美徳があることは間違いない。
しかし今、その内と外のギャップの大きさから、悲鳴を上げている場所が日本各地にある。

外国人が教えてくれた「日本の魅力」

あまり知られていないけれど、じつは訪れる価値のある場所を、英語で「Hidden Gem(ヒドゥン・ジェム)」という。
これは直訳すると「隠れた宝石」という意味。この表現は、日本語の「穴場」よりもおしゃれで格調が高い気がする。

プリンセス天功さんが日本のどこかに埋めたというお宝は、まさに直接的なヒドゥン・ジェムだ。天功さんは宝石や土地権利書など、20億円以上の価値のあるものを国内の6カ所に隠したという。

閑話休題(それはさておき)。
日本に10年以上住むアメリカ人の友人は、有名観光地よりも日本の地方に隠された「宝石」に魅力を感じて、車で探しに出かける旅を趣味にしている。
以前、彼から戦国時代の砦跡を教えてもらって、「こんなところにそんなものがあったのか!」と驚いたことがある。

日本人が気づかなかった「日本の宝石」

日本に住む外国人には、隠された財宝(穴場)を見つける「トレジャーハンター」がいて、彼らのアンテナは少なくてもボクよりも敏感だ。

ある時、バングラデシュ人が「最高に日本らしい場所を見つけた!」と富士吉田市にある新倉山浅間公園を紹介してくれた。
そこでは「桜・富士山・五重塔」がひとつのフレームに収まる、これ以上ないほど日本的な景色を見ることができる。

富士市にある道路上の橋で、富士山の全景を眺めることができる「富士山夢の大橋」もミャンマー人のSNS投稿で初めて知った。静岡県民のボクよりも、彼のほうが先にこの価値に気づいたのだ。

また、ある香港人は京都に対してユニークな視点を持っていた。彼女は市内のお寺や神社をすっ飛ばして、京都北部の南丹市でキャンプを楽しんだという。
香港人のインフルエンサーがそこを見つけ、キャンプツアーを主催して、知人もそれに参加した。
大混雑している清水寺や伏見稲荷大社に行って疲れるより、静かで豊かな自然でリラックスするほうが、香港人には合っているらしい。
「京都でキャンプ」という楽しみ方は目からウロコだった。

日本人以外で、世界でもっとも日本旅行を楽しみにしているのは韓国の人たちだと思う。
先日、韓国の全国紙『中央日報』が、宮崎県美郷町の南郷地区で行われる「日本の山奥で1300年続く祭り」を記事で紹介していた。
そんな山村は、日本国民の9割が知らないのではないのでは。

このように、外国人のおかげで日本各地に隠された宝を知り、日本の価値や素晴らしさを再確認した経験が何度もある。

光が強ければ影も濃い――インバウンドの「功」と「罪」

日本の「Hidden Gem」が広くシェアされるようになると、歓迎すべき側面と同時に、観光公害という闇の面もあらわになる。

観光公害という名の「宝石の破壊」

外国人が日本の価値を発見したことで、多くの観光客が殺到し、悲惨な現実を招いた場所もある。
例えば、富士山と桜の絶景で知られた山梨県・富士吉田だ。外国人観光客が急増したことで、深刻なマナー違反や交通混乱が発生し、地元の人たちが楽しみにしていた「さくら祭り」が中止に追い込まれた。
民家の庭に侵入して排泄行為をするというのは、ただの迷惑ではなく違法行為だ。こんなことをされたら、受け入れ不可能になるのも当然。

【観光公害】富士吉田の「さくら祭り」中止に、外国人の反応は?

 

「富士山夢の大橋」の場合は、環境を整備して外国人観光客に対応できる体制を整えられたから、今では名所となって地元に利益をもたらしているという。
しかし「さくら祭り」はキャパオーバーになって混乱し、「日本の宝石」は消えてしまった。もちろん、これから再開されるかもしれないが。

まとめ|日本の宝石(穴場)が消滅しないように

外国人観光客の存在には、功罪の両面がある。
日本人でも知らなかったような日本の良さや美しさを伝え、地方に活力を与えてくれることもあれば、その熱狂が地域を疲弊させてしまうリスクもある。

日本政府は有名観光地の「一点集中」を避けるため、観光客を地方へ分散させることを狙ったが、皮肉な結果になった場所もある。
単なる排除や無制限な受け入れではなく、入域制限や予約制による「人のコントロール」などの対策が必要だ。

モースが愛した「完全に静かで秩序的である」という礼儀正しさやマナーの良さを、世界中の誰もが身につけてくれるといいのだけど、そんな発想は甘すぎる。
観光公害から、日本の「Hidden Gem」や地元住民の平和な生活を守るためには、とりあえずは厳しい規制が有効だ。

現実の話、という美徳を常識として持っている国民は、世界的に見ればあまり多くない。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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