今年、ハンガリーの作家クラスナホルカイさん(以下、クラさん)がノーベル文学賞を受賞した。じつはクラさんは2000年代に来日して、京都でお寺や神社、日本庭園など日本の伝統文化について学んだことがある。だから、今年のノーベル文学賞は京都が選ばれたと言うのは言い過ぎでも、「日本文化がクラさんの作品に影響をあたえた」ぐらいは言ってもいいのではないだろうか。
先日、オーバーツーリズム(観光公害)に悩まされている鎌倉について記事を書いた。市役所が対策費をクラファンで集めようとしたら、市民から冷たい視線を浴びてしまったという内容だ
今回はこの続編で、オーバーツーリズムに悩む京都と、それを知った外国人の反応を紹介しよう。
以前、外国人と京都旅行をすることになって、ドイツ人にどこへ行きたいか聞くと、「タケノモリ」と言われた。それが、「バンブーフォレスト(嵐山の竹林)」を日本語に直訳したものだと気づくまで、15秒ほどかかったと思う。
京都観光にやって来る外国人に大人気の「竹林の小径(こみち)」で、300本以上の竹にナイフか鍵のようなもので落書きが刻まれる被害が多発し、京都市が頭をかかえている。竹の表面に付けられた傷は消えず、それが原因で竹が枯れて倒れる危険性もあるため、市は傷のひどい竹の伐採を検討しているという。
SNSで竹林を訪れた人が投稿した写真を見ると、落書きの上に緑色のテープを貼ってあったが、あれでは竹林の良き風情が台無しだ。
今の京都は日本人にとって高嶺の花。ピークシーズンにはカプセルホテルでも1泊4万円もするような状態だから、「日本人の京都離れ」が進んでいる。それに、落書きは今年の春から夏ごろにかけて増えたということから、このヴァンダリズム(文化の破壊行為)はほぼ外国人によるものとみていい。
地元の関係者は「思い出は竹に刻むのではなく、心に刻んでほしい」とうまい事を言ったが、外国人には通じない。
日本に愛や興味のある外国人が集まるSNSグループで、ある人がその記事をシェアすると反響を呼び、たくさんの人がコメントを書き込んだ。英語の原文を日本語訳して紹介していこう。
・京都の竹は1日に約4フィート(約1・2メートル)も伸びる。落書きが竹林に大きな被害を与えることはまずない。竹を切るなんてバカなことをするな。
※竹は成長が早く、1年10メートルくらい伸びることもある。しかし、ある程度まで達すれば成長は止まるから、1年半で東京スカイツリーを超える竹なんて地球上には存在しない。
・1日に4フィートも育つ竹が世界のどこにある? 成長の早い竹でも約90センチ、それも毎日ではない。嘘を拡散するようなバカなことをするな。
・植物の成長には限界があるのは明らかだ。そんなことは言うまでもないのに、基本的な常識もないお前みたいな連中には通じないらしいな。
・竹に落書きをする大半の観光客は脳に問題があるんじゃないか? いや真剣に。
・40年以上前、この竹林を初めて見た時、すでに何本かに落書きがされていた——日本語でね! 誰がやったにせよ良くない行為だが、これはオーバーツーリズム以前に起きたことだ。
・記事をよく読め。これはそんな昔のことではない。
・日本人観光客だって海外で迷惑行為をすることはある。
・植物園ではよく見かける光景だ。禁止を呼びかける看板があるにもかかわらず、こういう悲しいほど幼稚な行為をする人間がいる。
・文化衝突の残念な例だ。多くの外国人は日本人の「尊敬」の概念を理解していない。
・「文化的なこと」は何もない。破壊行為は破壊行為。ただ行儀が悪いだけだ。
・それは賢明な発言ではない(=外国人も「尊敬」の概念を理解している)。イギリス人が、シャーウッドの森の古い木に名前を刻む人たちを歓迎すると思うか? あるいはフランス人が、ヴェルサイユの庭園の樹木に名前を刻む者を称賛するとでも?
・ハチミツとお金は欲しいけど、面倒なことは避けたい…。
※インバウンドで利益を得たいけど、トラブルは避けたいという心理を皮肉っている。
・1年ほど前、ここを訪れました。とても美しくて、竹に自分のイニシャルを刻むなんて考えもしませんでした。
・嵐山への入場を有料化し、入場者数を制限すべきです。そうすれば監視員を配置できるでしょう。現状は完全に無秩序です。コロナ前の京都を訪れて良かった。
・数百年前の木造建築の割れ目に、コインを挟む連中はもっとひどい。待てよ…あれをしたのは日本人じゃないか! じゃあ、再生する竹に文句を言えないよな?
・そのような主張には証拠が必要です。そして、それは確実に私たちに示されなければなりません。
・それは中国の習慣じゃないか?
・こんな破壊行為は日本人にとって異質だ。彼らは「一体どうして?」と理解できないだろう。
・私は日本で40年間暮らしてきた。確かにこの国は、ヨーロッパのどこよりも良い国だ。しかし、「日本人はまったく破壊行為をしない」などと思うなら、それは単なる無知だ。
・日本はこれをしたヤツを永遠に出禁にするべき。
・なぜどこでも何かを侮辱してもいいと思えるのか! 恥を知れ!
・訪れた場所への敬意がないのは、気分が悪い。
・それは世界中のすべての植物園で起こります。愚かさはどこにでも存在します。
ここ数年、京都人や京都を愛する日本人が集まるSNSを見ていると、悲鳴や嘆きの声がよく聞こえるようになった。外国人観光客がお寺や歴史保存地区などで、マナー違反や迷惑行為、不法行為をして、撮影禁止になるなど行動が制限されることが増えてきたから。
注意を呼びかける看板を設置しても効果はなく、警備員を配備するお金もないと、実質的には日本人に責任はなくても、すべての観光客を「一律バン」するしかなくなる。
ルールやマナーを守るまともな日本人や外国人にとって、一部の愚行で日本が変えられ、日本が日本でなくなることが何よりの観光公害になる。竹に緑のテープが貼られているのは本当に興ざめだ。
クラさんは今の京都には行かないほうがいい。

コメント
コメント一覧 (2件)
他国に旅行に行ってその国の観光資源を傷つけるのは無礼なことです。
おそらく竹に落書きをした人の中に韓国人もいるでしょう。
今韓国もこれと似たようなことを経験しています。最大の観光地である済州島には中国人が独り舞台になっているということです。各種犯罪が発生し、大声で騒ぐ人が多く、韓国人の済州島旅行は大きく減りました。他国に配慮するエチケットが必要です。
>韓国人の済州島旅行は大きく減りました。
日本でも、日本人が外国人観光客の多いところを避ける傾向があります。外国人が増えてよろこぶ人たちと、困る人たちに二分化されています。この事情は韓国も同じと思います。