【私、失敗しないので】日本にいた恥の請負人「屁負比丘尼」

 

もし女性が愛する人の目の前で、確実に気づかれるレベルのオナラをしてしまったら?

ある外国人男性(たぶんイギリス人)の場合、彼女の「初オナラ」を聞いてうれしくなり、「おめでとう!」と書かれたケーキをプレゼントしたことで話題を集めた。
これは英メディアの『The Sun』の記事(16 Nov 2020)

CONFLATULATIONS Girlfriend farts in front of her bloke for the first time… and he’s so chuffed he gets a cake baked in her honour

 

海外ではこの男性の寛容さやアイデアに好感をもつ人が多かったらしいのだけど、このニュースに日本のネットの声は?

・俺なら別れるわ
さよオナラってな
・海外だなと思った。日本の感覚ではないよな。
・嫁の前でオナラできる?俺は恥ずかしくて無理だな
・俺もされた事あるけど可愛い音だったwww
・この辱めをどうしてくれるの
・活性炭フィルター付きのサイレンサーさえ装着していれば・・・

オナラの悩みは全人類が共通してもっているものだから、この話は人種や宗教を超えて普遍的に理解されるはず。

 

 

昔の日本では、地位の高い女性にとって人前でオナラをするというのは、一瞬で名誉を失うほどの大失態だった。
これを耐えられないほどの恥と感じて自殺した人もいたというから、放屁は文字通りの死活問題でもあったのだ。
もちろんこれは高貴な女性に限った話で、庶民はあいさつ代わりに「ブッ」としていたかもしれない。

今も昔も人がオナラを完全に制御下におくことは不可能だから、この音と臭いは、出るときは所かまわず出てしまう、もれてしまう。
でも上流階級の女性には「私、失敗しないので」というメンツがあったから、そういうときには屁負比丘尼(へおいびくに)さんの出番となる。

この不思議な職業について辞書にはこんな説明が載っている。

「良家の妻女や娘などにつき添って、放屁などの過失の責めを代わりに負った比丘尼。」
(精選版 日本国語大辞典の解説)

比丘尼とは出家した尼さんのことで、そういう女性はもう結婚することはないし、恥をかいてもかまわないと思われていたらしい。
どんな状況か正確には知らんが、良家の女性が人前で屁をしてしまったら、すぐに「いまオナラをしたのは私でございます」と言って恥を請け負って、主の名誉を守ったのだろう。
もちろんこれはプロフェショナルの仕事で、比丘尼はこれで賃金をもらっていた。

屁負比丘尼がいつ日本に登場したかハッキリとは分からないけど、1563年に書かれた書物「玉塵抄」に、「ここらになきあまへをい比丘尼と云やうなことぞ」という記述があるから、室町時代にはいたのだろう。
ちなみに玉塵(ぎょくじん)とは「美しい塵(ちり)」で雪のこと。間違ってもオナラのことじゃない。

屁負比丘尼を雇ってまで名誉を守りたかった女性が、恋人から「CONFLATULATIONS!」とケーキをプレゼントされたら一体どんな反応を示したか。

 

 

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1 個のコメント

  • >庶民はあいさつ代わりに「ブッ」としていたかもしれない。
    それほど自由に放屁をコントロールできるなら、今だったらTVに出られそうですね。

    >「CONFLATULATIONS!」
    って、「喧嘩のネタをおめでとう!」とでもいう意味ですか?(大文字なので余計に目立ちます。)

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。